青い日記帳 

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『チャートで読み解く美術史入門』

玄光社より刊行となった『チャートで読み解く美術史入門』を読んでみました。


チャートで読み解く美術史入門
ナカムラクニオ(著)

美術書は多くのカラー図版を載せることにより、読み手に著者の意図が伝わりやすくなるものです。ところが、いざ作品画像を掲載するとなると「著作権」が絡みたちどころに高い壁に突き当たってしまいます。

一般的に画家や作家が亡くなってから50年が経過すると著作権はなくなり、自由に使えるようになるとされています。

確かに、個人が趣味でやっているこのブログのような媒体であれば問題はありませんが、商用利用するとなると多額の費用が発生することが多々あります。

例えば東京国立博物館所蔵の作品画像を本に掲載しようとすると…
画像貸出利用申込書、貸出利用規約・料金表
驚くの高額設定!!



ラスコーの洞窟壁画や縄文土器から仏像に建築物そして現代アートまで、ありとあらゆるアート作品を網羅している『チャートで読み解く美術史入門』のような本が、望まれながらも今まで存在しなかったのは書き手よりも「著作権」に関わる金銭的な問題が大きかったのです。

それでは、どのようにしてこの本は陽の目をみるに至ったのでしょう。



これがその答えです。著者であるナカムラクニオ氏自身が全て、絵画や仏像、アーティストたちをイラストレーションで描いてしまったのです。

美術館や遺族が管理しているあちら側にあった「著作権」をイラスト化してしまうことで、こちら側のものとして自由自在に使えるようにしてしまったのです。


国宝の解剖図鑑
佐藤晃子(著)

昨年刊行された佐藤晃子氏の国宝本も写真を使うと金額的に大変なことになってしまうのでイラストで表現し売れに売れました。

ことさら著作権に関して厳しいシュルレアリスムの作品もご覧の通り。


チャートで読み解く美術史入門』より。

6次元に伺った際や、美術館でナカムラクニオ氏と会うとここ1,2年かならず小型のスケッチブックを手にし、さらさらと「絵画」や「画家」のイラストを描いていました。

その描いている様子が実に楽しそうだったことがとても印象に残っています。本の仕事として描いているとは誰もそれを見て思わなかったはずです。



楽しみながらイラストを描きそれがいつしか溜まって一冊の本となった。そんな自然な流れの中で生まれた一冊が『チャートで読み解く美術史入門』です。

全ページがイラストレーションで埋め尽くされています。それにナカムラクニオ氏の独自のアートを見る目が加えらているのですから、面白くないはずがありません。



例えば、第二次世界大戦後にアメリカを中心に沸き起こった抽象絵画を「温度と硬度で読み解く抽象絵画」とし、「冷たい抽象」「熱い抽象」「硬い抽象」「柔らかい抽象」と4つの項目を設け分類しています。

ロスコ、ポロック、フォートリエ、モーリス・ルイス、マーク・トビー、マレーヴィチらも、このチャートの中に当てはめられるとそれぞれの立ち位置がはっきりと見えてきます。

こうしたナカムラ流の解釈が至るところで展開されているのです。


循環する美術史

【目次】
第1章 西洋美術
ルネッサンス
 ヨーロッパ全土に及ぶ芸術運動の全貌をチャートで俯瞰
 ルネサンス/ロココ年表
 ルネサンス画家の人生の浮き沈みがわかるライフチャート
印象派
 ルネサンスと印象派の系譜
 近代絵画の成分分析〜著名な画家はどんな画家や美術の影響を受けたのか
 人気画家のライフチャート〜印象派以降の画家の人生の浮き沈みがわかる
近代美術年表
 エコール・ド・パリ、シュルレアリスム、キュビスムなどのアート運動
 抽象絵画やポップアートなど近現代絵画の流れを俯瞰する
彫刻の系統樹
 近代&現代彫刻

第2章 日本美術
縄文土器・土偶・古墳・埴輪
 縄文文化や古代美術を読み解く
浮世絵師

 江戸〜幕末までの浮世絵師の系譜と多様性を見ていく
近代日本画/近代洋画家年表
 明治以降の日本の美術の流れを知る
注目すべき洋画家・版画家
 歴史に埋もれているが、再評価されるべき画家や版画家にスポットを当てる



「ラスコーの壁画はいかにして牛のホルマリン漬けへと進化したのか?」

はじめにの部分でまず衝撃を受けるはずです。

ラスコーの洞窟壁画に描かれた牛から、キリスト教絵画やバルビゾン派に登場する牛へ、そして近代に入るとオキーフの牛。現代美術としてウォーホルのシルクスクリーンとダミアン・ハーストのホルマリン漬け牛へ。

それぞれ、バラバラに解釈したり鑑賞していたものも、こうしてナカムラ氏の手にかかると美術史という大きな川の流れの中に存在する水の一滴として認知出来、繋がりが生まれるのです。

個の時代と叫ばれながらも、退行するかのようにSNS等で繋がりを持とうとする現代人の心をがっしりとつかむ新しい美術の教科書が、この『チャートで読み解く美術史入門』です。

是非、ご一読あれ!


チャートで読み解く美術史入門
ナカムラクニオ(著)
美術ファンの裾野が広がる一方で、「もっと深く美術史を勉強したい」「アートの見方を知りたい」という声もよく聞きます。美術館ではそうしたニーズに応える各種イベントが開催されていますが、近年は美術研究者や専門家以外の美術関係者による「わかりやすい」「ウラ話的」なトークイベントに人気が集まっています。本書の著者ナカムラクニオ氏は、そうしたイベントに多数出演しています。特に来場者にウケが良いのは、画家の人脈や系譜などを、相関図(チャート)を作って解説することです。チャートを用いることで画家同士の師弟関係や交友関係、ライバル関係までが見えてきて、より広く深く理解できて、新たな興味が広がります。

ルネサンス画家のライフチャート

「画家の成分分析」やこの「ライフチャート」などは、これまでの絵の見方、画家の捉え方を一変させるナカムラ氏独自の新たな見解です。


『失われたアートの謎を解く』 (ちくま新書)
青い日記帳(監修)

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