青い日記帳 

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「桃源郷展」

大倉集古館で開催中の
大倉集古館リニューアル記念特別展「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの―」に行って来ました。


https://www.shukokan.org/

2014年4月より増改築工事の為休館していた大倉集古館が、およそ5年半の時を経て2019年9月12日にリニューアルオープンを果たしました。

大倉財閥創設者である大倉喜八郎が1917年に同地に日本で初めての私立美術館として創設。リニューアル中にこっそりと創立百周年を迎えた歴史ある美術館です。



現在の建物は関東大震災後に伊東忠太の設計により建てられました。特徴的な天井装飾が今回のリニューアルでよく見えるようになりました。

これだけでも以前の大倉集古館と随分と雰囲気が違って見えますが、建物だけでなく展示ケースや照明設備も最新鋭のものに刷新。

最も歴史の古い私立美術館であると同時に、最も最先端設備を備えた美術館として、よみがえりました。


「桃源郷展」展示風景

記念すべきリニューアルオープン最初の展覧会として選ばれたのは「桃源郷」。陶淵明の『桃花源記』に書かれた理想郷です。

「桃源郷」のイメージがどのように日本に伝わり、需要され絵画化されていったのかを質の高い作品でコンパクトに紹介している大変興味深い展示内容となっています。

展覧会の構成は以下の通りです。

第一章:呉春《武陵桃源図屏風》―蕪村へのオマージュ―
・桃源郷を夢見た師弟の絆の物語
第二章:桃の意味するもの―不老長寿・吉祥―
・中国美術にあらわされた桃のモチーフ
第三章:「武陵桃源図」の展開―中国から日本へ―
・中国画から、南画、四条派まで



呉春「武陵桃源図屏風」江戸時代・18世紀
大倉集古館蔵

休館中にアメリカのパワーズコレクションからこの呉春が描いた桃源郷屏風を購入しました。今回の展示で日本初公開となります。

画像からも分かるほど、薄っすらほのかなピンク色が大変美しい作品です。円山・四条派に属し写実を得意とした呉春が描いたとは思えないほどやわらかな、印象派的な感覚さえ漂ってきます。


呉春「武陵桃源図屏風」(部分)江戸時代・18世紀
大倉集古館蔵

呉春は若い頃、与謝蕪村を師として仰ぎ南画的な作品を描いていました。第一章では蕪村&呉春が描いた桃源郷関連の作品が並びます。蕪村風の作品を残したこの時期を「池田時代」と呼ぶそうです。

藝大美術館で開催中の円山応挙から近代京都画壇へで観られる呉春はその後、円山応挙についた後の作品、つまり写生画に転じた呉春作品です。

画風のまるで違う呉春作品を大倉集古館と藝大美術館で同時に観られる、ありそうでない意外なチャンスでもあります。



中盤に沈南蘋などの中国絵画を配置している辺りは流石としか言いようがありません。中でも林原美術館所蔵の趙伯駒(款)「武陵桃源図巻」は、描かれた当時の鮮やかな色彩が残っており一見の価値ありです。

さてさて、最後に「桃源郷」とは、陶淵明の『桃花源記』にどのように書かれているでしょう。趙伯駒(款)「武陵桃源図巻」に沿って定型化された場面を中心にあらすじを板倉聖哲先生が図録に記しています。

少し長くなりますが、このストーリーを知らないと「桃源郷展」の三分の一も楽しめませんので紹介しておきます。


東晋の大元年間(1120?〜1162)頃、武陵の山地に漁を生業とする者がいた。谷川に沿って遡って行くと、自分がどれほどの道を来たのかわからなくなった。すると、両岸に咲き誇る桃花の林が現れる。画面の最初の場面に描かれた咲き誇る桃花の林である。漁師はさらに歩を進め、水源まで登り詰めると、山が控えており、山腹には洞穴があった。舟を乗り捨て、洞穴を抜けて数十歩ばかり行くと、広々とした空間に出た。家居の傍には良田・美池・桑竹が見え、鶏や犬の声が聞こえる。この鶏と大のモティーフはより後方の村人たちが集まる場面に登場している。

農民たちの姿は老若男女、児慣れぬ古風な格好をしており、実に楽しげだが、漁師を見て驚き、「どこから来たのか」と問うた。詳しく答えると、村人の一人の家に誘 われ、酒に絞めたばかりの鶏を馳走になった。村中の人が訪間者の報を聞きつけ、集ってきた主人は、先祖が秦時代の戦乱を避け、山深い絶境に住み、それ以後、外部との交渉を絶った、という事情を語った。漢・魏・晋と王朝が交代したことを知らず、村人はみな驚きと同情のこもった嘆息の声をあげた。村人たちの歓待を受けること数日、帰り際に、見送りの一人にこの場所のことを語らないようにと念を押され、帰途に就いた。 乗ってきた舟に乗って道しるべを置きながら元の場所に戻った。多くの画面は滝を描いてこの場面で終わっているが、後日談が続く。郡の大守は漁師の報を聞き、道しるべ通りに探らせたが、二度とあの地に辿り若くことはなかった。劉子驥が試みるも果たせず、その後、渡し場のかなたを尋ねる者はなかった、という。



尚、会場には桃源郷トリビアとして、桃源郷作品の見どころ解説が幾つか掲出されています。大まかなストーリーとを頭に入れつつ、こちらをチェックすれば怖いものなしです。

尚、1階展示室では「大倉集古館名品展」を同時開催しています。


国宝・重要文化財から横山大観「夜桜」まで名品がずらり勢揃い!国宝「普賢菩薩騎象像」も!!

「桃源郷展」は11月17日までです。新しくなったホテルオークラと共に是非!!


大倉集古館リニューアル記念特別展
「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの―」


会期:2019年9月12日(木)〜11月17日(日)
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(月曜祝日は開館し、翌火曜日は休館)
9/17(火)、9/24(火)、9/30(月)、10/7(月)、10/15(火)、10/21(月)、10/28(月)、11/5(火)、11/11(月)休館
会場:大倉集古館
https://www.shukokan.org/
主催:公益財団法人 大倉文化財団 大倉集古館


桃源の水脈―東アジア詩画の比較文化史―

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本展では、新収品の呉春筆「武陵桃源図屏風」(江戸時代・18世紀)を本邦初公開し、本作品の創作の原点となった呉春の師・与謝蕪村の筆になる一連の桃源郷作品へのオマージュ、そして呉春自身の画業における本作品の位置づけに着目します。これらに関連の深い作品の展観を通じて、蕪村が中国文化に向けた詩情や桃源郷への憧れが呉春に受け継がれ、やがては独自の様式の中に昇華される軌跡を辿ります。
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