青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< April 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 【天皇陛下御即位記念】特別展「行幸 ―近現代の皇室と国民―」開催中! | main | 「山下裕二の隠し球」 >>

「アジアのイメージ」

東京都庭園美術館で開催中の
「アジアのイメージ―日本美術の『東洋憧憬』」展に行って来ました。


https://www.teien-art-museum.ne.jp/

チラシに「キングダム」に登場する河了貂そっくりの香取秀眞《鳩香炉》と中国で紀元前に作られた《鴟鴞尊》を並べ、全くどんな内容の展覧会なのか伝わって来ませんが、行ってみると中々これが良い内容でした。


キングダム 河了貂 (かりょうてん)


香取秀眞《鳩香炉》 1949年
千葉県立美術館所蔵

1910年代から60年代にかけて日本人の中で、中国をはじめとするアジア諸国の古典美術に対し異様なまでに憧れを抱いた時期があったそうです。

香取秀眞《鳩香炉》もキングダムではなく、中国(商後期)の《鴟鴞尊》などに影響・感銘を受け作られた作品です。


鴟鴞尊》 商後期
泉屋博古館所蔵
※会期後半(12月12日)より展示

アジアの古い美術・工芸品とそれらからインスパイアされ描かれ作られた日本の近代作家の作品を、丁寧に見せています。

ジャンルは多岐に渡り、日本画、洋画から陶磁器、竹籠まで。多彩なジャンルの作品が取り上げられ次から次へと展開するので、飽きることなく鑑賞できます。


杉山寧《雲崗5窟 如来像
1942年 ユニマットグループ所蔵

ユネスコの世界遺産(文化遺産)にも登録されている、中国山西省にある雲岡石窟を目の当たりにした日本画家たちが描いた作品はどれもとても品がよく、良い意味で作家の個性が消されています。

杉山寧やあの川端龍子も雲岡石窟に非常に強い衝撃(感動)を受け筆を走らせているのです。

中国の世界遺産「雲崗石窟」は仏教彫刻に囲まれた3D空間!

今でこそ労せず観に行けたり、こうしてwebでもその素晴らしい概要を掴むことが出来ますが、明治から昭和初期ではそれこそ夢のまた夢だったことでしょう。


染付魚藻文壺》 元時代
14世紀 東京国立博物館所蔵
Image:TNM Image Archives

また、「博物館で容易に目にすることが出来る」ような時代でもまだまだありませんでした。古典美術品を観る機会など皆無だったと言っても過言ではありません。

しかし次第にアジアへ足を広げていったことにより、中国や朝鮮の美術品が日本に持ち込まれ、衆目を集めるようになると、それが喜びと共に憧れとして日本人を突き動かしたのです。

展覧会の構成は以下の通りです。

アジアへの再帰
古典復興
幻想のアジア


大きなセクション分けは3部構成とざっくりしていますが、主たる展示である1章と2章はそれぞれ細分化され、丁寧に見せようとする想いが伝わってきます。

1章:アジアへの再帰
雲岡石仏との遭遇(川端龍子、杉山寧)
チャイナドレスの婦人(岡田謙三、藤島武二、安井曾太郎)
静物画のなかのアジア(岸田劉生、前田青邨、バーナード・リーチ)

2章:古典復興
古代青銅器と工芸モダニズム(岡部嶺男、香取秀眞、高村豊周、豊田勝秋、津田信夫)
生きのびる中国陶磁器(石黒宗麿、北大路魯山人、富本憲吉)
(1)黒釉褐彩 (2)白地黒花 (3)五彩
籐籠と竹籠(飯塚琅玕齋)
李朝白磁と民藝運動(河井寛次郎)
文様から装飾芸術へ (睫郛昌魁∩田三男、松田権六、石黒宗麿、北原千鹿)
(1)走獣文 (2)唐三彩と斑文 (3)魚文


安井曾太郎《金蓉》 1934年
東京国立近代美術館所蔵

この展覧会の文脈に沿って観ていくと、近代美術館で見慣れた感のある安井曾太郎《金蓉》も全く別物として目の前に現れます。

昭和初期に「チャイナドレス」を着た女性を描いた作家の多いこと!そしてそもそもチャイナドレス自体が、近代が生み出した新たな産物でもあるのです。

「キングダム」の河了貂そっくりの作品を敢えてチラシに用いて鑑賞者を混乱させているのではないかと穿った見方さえしてきます。


東京都庭園美術館 本館 ベランダ

小部屋で構成される庭園美術館本館の特性を上手く活かし、様々な作品がテンポよく目の前に展開します。

太陽光に当たっても問題ない焼物などを本館のベランダに置いたりと、普段ではめったに観られないチャレンジングな展示も印象的でした。


3章:幻想のアジア 展示風景

新館ギャラリーでは、岡村桂三郎(画家)、田中信行(漆芸家)、山縣良和(デザイナー)の3人の現代作家がアジアをイメージして制作した新作が展示されています。(3章:幻想のアジア)

若干解説が少なく関連性が掴めないものもありましたが、そこまで詳しく理解せずとも十分満足いく展示です。もっと深く知りたい方は公式図録兼書籍で補完すればOK!


アジアン・インパクト 日本近代美術の東洋憧憬
東京都庭園美術館 (編集), 樋田 豊次郎 (監修)

1910〜60年代の日本近代美術にみられる、アジアの古典を強く意識した傾向を、日本画、洋画、そして工芸の各ジャンルの事例により検証。東京都庭園美術館で開催される展覧会の公式図録兼書籍。

普段よく目にしている近代美術の創造の原点を探る意欲的な展覧会です。

「アジアのイメージ展」は2020年1月13日までです。派手さは全くないですが、とても良い視点からまとめ上げられた展覧会です。


「アジアのイメージ―日本美術の『東洋憧憬』」
Images of Asia: The East as Longed-for Other in Japanese Art

会期:2019年10月12日(土)〜2020年1月13日(月・祝)
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
*ただし、11月22日(金)、23日(土・祝)、29日(金)、30日(土)、12月6日(金)、7日(土)は夜間開館のため夜20:00まで開館(入館は19:30まで)
休館日:第2・第4水曜日(10/23、11/13、11/27、12/11、12/25、1/8)、年末年始(12/28〜1/4)
会場:東京都庭園美術館(本館+新館ギャラリー1、2)
https://www.teien-art-museum.ne.jp/
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館
年間協賛:戸田建設株式会社、ブルームバーグ・エル・ピー Bloomberg
特別協力:ユニマットグループ


東京都庭園美術館 庭園

これからの紅葉の時期に合わせて行かれると良いかもしれません。庭園美術館のお庭、紅葉の隠れた名所でもあります。


カフェのある美術館 感動の余韻を味わう
青い日記帳 (著)

ショップに『カフェのある美術館』置いてくださ〜い!!庭園美術館さん。



Twitterやってます。
@taktwi

Facebookもチェック!

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5646

JUGEMテーマ:アート・デザイン



およそ1910〜60年頃にかけてのことですが、日本の知識人、美術愛好家、美術作家たちがアジアの古典美術に憧れた時期がありました。唐物趣味は日本の伝統だとはいえ、このときのアジア熱は別格でした。

朝鮮半島や中国から、考古遺物や古美術が日本に輸入されると、それらは実業家たちによって競うように蒐集されました。平壌では漢代の楽浪漆器が発掘され、河北省では磁州窯や定窯が調査されます。そして息を呑むような伝世品(殷の青銅器、唐三彩・宋磁・元の染付・明の赤絵、煎茶で愛好された籐籠、李朝白磁など)が輸入されました。それらを目の当たりにした画家や工芸家たちは、創造の翼をアジアへと羽ばたかせます。

さらに画家たちは、大同で雲岡石仏を見て、飛鳥仏との繋がりに想いを馳せました。流行のチャイナドレスにも目を留め、アジアの新しい息吹も掬いとりました。

アジアへの憧れは、1960年頃に表舞台からフェードアウトしますが、その後どのように深化されているのでしょうか。新館ギャラリーでは、3人の現代作家に表現していただきました。

東京都庭園美術館 館長 樋田豊次郎
展覧会 | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
この記事に対するトラックバック