青い日記帳 

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「ラスト・ウキヨエ」

太田記念美術館で開催中の
「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち ―悳俊彦コレクション」展に行って来ました。

【老舗力】浮世絵は企画力で勝負だ!太田記念美術館の魅力と秘密


http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/

広辞苑で「浮世絵」を調べてみると「江戸時代に発達した民衆的な風俗画の一様式。」とありますが、決して江戸時代だけに制作されたものとは説明されていないように、時代が明治になってからも精力的に刷られ続けました。

そもそも当時の人たちは、平成から令和に改元された際の我々とは違いリアルタイムで時代の変遷を感じる術もありませんでした。


揚州周延「二十四孝見立画合 王褒 十四」1890年(明治23年)

ゆえに、明治になったからといって浮世絵師がパタンと本を閉じるかのように仕事を辞めてしまうなんてことはあり得えないのです。

「ラスト・ウキヨエ」展では現在ではほとんど顧みられていないそんな明治期に制作された浮世絵をまとめて紹介するほぼ初めての試みです。


安達吟光「東京名所花競 不忍池 蓮」1889年(明治22年)

「ラスト・ウキヨエ展」に出ている多くの作品を観ると、江戸時代の浮世絵とはやはり異なる「何か」を幾つか感じられるはずです。

まず第一に派手な「赤色」に目が行きます。浮世絵の色は天然の草木などが主な原料でしたので、パッと明るい赤色を出すのは難しいものがありました。

ところが、明治期に入ると化学顔料が手に入るようになり、発色の良い赤色を出せるようになりました。植物由来のものの弱点である褪色などもなく今でもパッと目に飛び込んできます。

江戸時代に青色(ベロ藍)が日本にもたらされて以降、浮世絵作品に鮮やかな青色が積極的に用いられたことと同じ流れと言えます。

【参考】

葛飾北斎「冨嶽三十六景 甲州石班澤
すみだ北斎美術館蔵
プルシアン・ブルーは、18世紀初頭にドイツ(プロシア)・ベルリンの染色・塗料職人が、赤い顔料をつくろうとしていたときに偶然発見された青色顔料です。日本には延享4(1747)年に輸入されました。
日本美術の革新!若冲と北斎を変えた魔法の色「ベロ藍」とは? より。

第二に描かれているモチーフが江戸時代の浮世絵とは大きく変わっている点が見て取れます。

美人画や子どもたちの何気ない日常を描いた作品もありますが、激動の時代明治を象徴するかのように、荒々しい戦の場面を篤かった作品が何点も出ていました。


小林清親「我艦隊於黄海清艦隊撃沈之図」1894年(明治27年)

「東京名所図」や光線画で人気を博した小林清親が、このような戦争画を描いていたのです。

確かに明治から昭和初期にかけての日本は戦争に明け暮れていたと言っても過言ではありません。日清、日露戦争の様子を描いた浮世絵が存在してもおかしくないのです。

【参考】
アジア歴史資料センター・大英図書館共同インターネット特別展
「描かれた日清戦争 〜錦絵・年画と公文書〜」
大英図書館所蔵日清戦争関係版画類


泰平の世であった江戸時代に花開いた庶民文化である浮世絵が、激動の時代に入ると政府のプロパガンダ的役割を担うようになるのは、非常に大きな潮目であったと言えます。

幕府から再三再四、世を乱すものとして制限をかけられつつも反骨心を露わに新たなチャレンジを続けた喜多川歌麿の時代とは明らかに違う作品となっています。

「浮世」を題材に描いた浮世絵がこの時代をもって終焉を迎えた理由もよく分かります。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章:歌川国芳の系譜
第2章:歌川国貞の系譜
第3章:尾形月耕と門人たち
第4章:さまざまな流派



宮川春汀「東京名所図会 築地門跡」1903年(明治36年)

生まれたのが明治時代だからという時代だけで不当な評価を与えられている(美術的価値を認められていない)浮世絵たちが勢ぞろい。

小林清親、水野年方、楊洲周延、尾形月耕ら総勢37人の浮世絵師による「新しい時代の浮世絵」を存分に満喫できるまたとない機会です。

【老舗力】浮世絵は企画力で勝負だ!太田記念美術館の魅力と秘密

「ラスト・ウキヨエ展」は12月22日までです。地下会場も使っての大掛かりな展示となっており、見ごたえ十分です。是非是非〜


「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち ―悳俊彦コレクション」

会期:2019年11月2日(土)〜12月22日(日)
前期 11月2日(土)〜24日(日)
後期 11月29日(金)〜12月22日(日)
※前後期で全点展示替え
開館時間:午前10時30分〜午後5時30分
(入館は午後5時まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
会場:太田記念美術館
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/


『もっと知りたい浮世絵』
田辺昌子(著)

浮世絵についてのベーシックな知識と主要作品を網羅した入門書の決定版。浮世絵が成立した頃の初期の作例から絢爛豪華な錦絵の誕生を経て、世界中から注目される北斎や国芳の超絶技巧にいたるまでの流れを多くの作品と共にわかりやすく解説。

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浮世絵といえば江戸時代の文化と考える方は多いでしょう。しかしながら、明治時代の終わり、20世紀の初頭まで、浮世絵版画は制作され続けていました。現在ではその美術的価値があまり評価されていないため、美術館で紹介されることがほとんどない状況です。本展では、洋画家であり、浮世絵コレクターとしても知られる悳俊彦(いさお・としひこ)氏のコレクションの中から、歴史に埋もれた明治の浮世絵、約220点を掘り起こします。
展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

申し訳ありません。どうしても誤字脱字は気になってしまいます…。
◯「科学顔料」→「化学顔料」
いつもお世話になります。 | 2019/11/28 6:16 AM
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