青い日記帳 

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「子どもへのまなざし」

東京都美術館で開催中の
上野アーティストプロジェクト2019「子どもへのまなざし」展に行って来ました。


https://www.tobikan.jp/

東京都美術館で開催されている展覧会は海外の名作が並ぶ特別展だけではありません。トビカンは書道に彫刻といった公募展の会場としても大きな役割を担っています。

全ての展示室を合わせるとどれだけ多彩な作品がこの一館に展示されているのか容易に想像がつくはずです。まさに美術のヴンダーカンマーです。


私の都美ものがたり

2017年からは上野アーティストプロジェクトとして、テーマを設け公募団体に所属する作家の紹介行う企画展を独自に開催しています。

3回目となる今回のテーマは「子ども」。

フィリップ・アリエスによる、子供という存在(認識)は近代になってからのものであり、かつて子供は〈小さな大人〉として認知され、家族をこえて濃密な共同の場に属していたとの捉え方は非常に大事な視点です。


〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活
フィリップ・アリエス (著), 杉山 光信 (翻訳), 杉山 恵美子 (翻訳)

そうしたことを踏まえ、子供のようであり、大人のようでもあり、そしてまた何物でもない中庸的な雰囲気を醸し出している新生加奈「少女と宇宙」を展覧会ポスター・チラシに使ったのはお見事!

内容的にもとても見応えがあり、よく考えられた展覧会に仕上がっています。大きな企画展の近くで見逃しがちですが、これは観ておいた方が良いかと。


新生加奈「もうひとつの歌」2016年

出品作家は以下の6名。

大久保綾子(一陽会)
木原正徳(二紀会)
志田翼(独立美術協会)
新生加奈(日本美術院)
豊澤めぐみ(新制作協会)
山本靖久(主体美術協会)


20代の若手からベテランまでどんな基準でセレクトしたかは分かりませんが、とてもバランスが取れた人選です。それは会場で作品を実際に見ればすぐに分かります。


大久保綾子「生命を紡ぐ」2014年

若手作家の今の世相や子どもの心の内を上手く表現した作品に交じり、1945年生まれの大久保の作品は母性愛を前面に打ち出したあたたかさを感じる力作です。

極端にデフォルメされている子どもを抱える母親の手足ですが、決しておかしく感じません。逆に母親の大きな愛情を違和感なく表現しています。

イタリア絵画から影響を受けた方なのでしょうか。どことなくそんなテイストが感じ取れました。


新生加奈「月と日に」2017年

新生加奈と大久保綾子が描いた、母親と子どもの情愛に満ちた美しくあたたかな作品とはテイストの全く違う「子ども」も若手女性作家たちにより表現されています。


志田翼「きょうだい」2010年

無邪気に遊ぶ二人の兄弟。プラレールで遊んでいるのかと思いきや置かれているのはレールではなく、銃です。

手にしている黄色い物体は紛れもなく薬莢です。子どもは無邪気な存在でもあり、恐ろしい存在でもあります。そんな内包している二面性をさり気なく表現している力作。


志田翼「籠る」「絡まる」2009年

個人的には、現代の子どもたちが抱える不安定な心の一端を視覚化したこの2点に惹かれました。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章 愛される存在
第2章 成長と葛藤
第3章 生命のつながり


6人の中で最年少の豊澤めぐみの作品が、最も現代の子どもたちの姿や心をストレートに表現しています。


豊澤めぐみ「The Birthday」2015年

描かれている人物は全て作家自身だそうです。十字架の上に葬られたかのように眠る女子高生を描いた作品に付けられたタイトルは誕生日。

おじさんやおばさんになると誕生日って嬉しくなくなるのが常ですが、今の学生さんたちも実は誕生日をさほど喜ばしいイベントだとは思っていないようです。

それは歳を重ねることへの不満などではなく、煩わしい人間関係が具現化されるイベントだからでしょう。人付き合いに毎日ヘトヘトなのですから、きっと。


豊澤めぐみ「空虚」2019年

イタリア・ルネサンス期に多く描かれた円形のトンド(tondo)。そのほとんどが聖母子など親子の情愛を描いたものですが、現代版トンドは「空虚」「隔絶」「無価値」とそれぞれタイトルが付けられています。

絶対的な孤独を現すには四角いキャンバスよりも円形の方がより深度がより増し、限界を感じなくさせます。


豊澤めぐみ

6人中、4人も強く惹かれる作品を描いた作家さんに出会えたなんてとてもラッキーでした。と言うか、この展覧会は観る人を選びません。誰が見てもいいな〜と思える作品・作家が必ず見つかります。

上野で開催されている大掛かりな特別展だけでなく、「子どもへのまなざし展」のような企画力で勝負する展覧会にも是非足を運んでみて下さい。

「子どもへのまなざし」は2020年1月5日までです。是非是非〜(写真撮影可能です!)


上野アーティストプロジェクト2019「子どもへのまなざし」

会期:2019年11月16日(土)〜2020年1月5日(日)
休館日:11月18日(月)、12月2日(月)、16日(月)、26日(木)〜2020年1月3日(金)
開室時間:9:30〜17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開館:金曜日、11月30日(土)、12月7日(土)は9:30〜20:00(入室は閉室の30分前まで)
会場:東京都美術館ギャラリーA・C
https://www.tobikan.jp/
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館

「子どもへのまなざし展」連動企画


松本力「記しを憶う」−東京都写真美術館コレクションを中心に
会期:2019年11月16日(土)〜2020年1月5日(日)


展覧会プロデューサーのお仕事
西澤 寛 (著)

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この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5690

JUGEMテーマ:アート・デザイン



「公募展のふるさと」とも言われる東京都美術館は、さまざまな芸術家の発表と成長の場として大きな役割を果してきました。2012年のリニューアルオープンを機に「芸術活動を活性化させ鑑賞の体験を深める美術館」という役割を果たすことを目的に公募展活性化事業がスタートし、2017年からは上野アーティストプロジェクトとして、テーマを設けた企画展により公募団体に所属する作家を紹介し、その魅力を発信しています。
2019年は上野アーティストプロジェクトの第3弾として、「子どもへのまなざし」をテーマに美術公募団体に現在所属する作家を取り上げます。「子ども」は魅力的なモチーフとして多くの作家の心をとらえてきました。子ども時代は誰しも経験するものであり、作家はそれぞれの想いをもって「子ども」を含んだ作品を制作します。子どもに仮託される多層的なイメージについて、3つの視点をキーワードに読み解こうとする展覧会です。
展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

「是非」とのことだったので、本日上野にいったついでに寄ってみました。非常に見ごたえがあり面白かったです。

見終わった後に改めて拝見したところ、全く違う感想だったので、しみじみと「人それぞれだなあ」と思いました。

自分では行かなかったと思うので、ご紹介いただきありがとうございました。一言御礼をと思いましてこちらにコメントさせていただきます。
サトウ | 2019/12/07 6:31 PM
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