青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< January 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「大平由香理展 海鳴り」    | main | 「ブダペストーヨーロッパとハンガリーの美術400年」 >>

『時代を語る名画たち』 

ぴあ株式会社より刊行となった『時代を語る名画たち 絵画を変えた22人の天才』を読んでみました。


時代を語る名画たち 絵画を変えた22人の天才
木村泰司 (著)

このブログで何度も紹介している木村泰司氏の新著が発売になったので早速読んでみました。

絵画作品、画家どちらにも偏らない安定した筆はいつも通り。最大の魅力は絵画や画家について書かれている文章の中にふんだんに、ヨーロッパの歴史、価値観、文化が登場する点です。


ラファエロ・サンツィオ「アテネの学堂」1509〜10年 
ヴァティカン美術館

何故37歳の若さでこの世を去ったラファエロが、19世紀に至るまで西洋美術の古典として圧倒的な存在として美術史に君臨することになったのでしょう?

同時代のレオナルドやミケランジェロではく、三人の中では最も若手のラファエロが「美の王」となった経緯を『時代を語る名画たち』では歴史に基づきながらも軽妙洒脱に語られます。


ピーテル・パウル・ルーベンス「自画像」1623年
ロイヤル・コレクション

木村氏の著書を何冊か読んでいると、好き嫌いがよく文章に出ることに気が付かれるはずです。ルーベンスに関しては諸手をあげて称賛しています。

しかし、ただべた褒めし、褒め殺すのではなく、日本ではいま一つ人気のパッとしないルーベンスが、西洋では非常に重要な画家であることを理詰めで丁寧に語ります。

「王の画家にして画家の王」と称された所以が一読するだけですんなりと分かるのです。絵の前でいくら腕組みしていてもこうした知識は入ってきません。


ニコラ・プッサン「アルカディアの牧人たち」1638〜39年
ルーヴル美術館
現代の日本では、やたらと「感性」という言葉を絵画鑑賞の際に使いがちです。しかし、伝統的に西洋では、感性に訴える絵画は低く見られる傾向があり、理性・知性に訴えることを良しとされてきました。

特にフランスではその傾向が強く、その伝統的なフランスの美意識を理解するには、ニコラ・プッサン(1594〜1665)の絵画芸術を抜きにして語ることはできません。なぜならば、プッサンの芸術理論を基に、17世紀後半以降のフランス絵画が発展したからでした。
日本国内の展覧会や常設展示でまずお目にかかることの無いプッサンですが、彼の存在なくして西洋美術を語ることが出来ません。

今年の夏から秋にかけて行った連続特別講座「夢の西洋美術史500年」でも小林亜起子先生がそのことについて静かに熱く力説していました。


ジャン=アントワーヌ・ヴァトー「ヴェネチアの祝宴」1718〜19年
スコットランド・ナショナル・ギャラリー

ヴァトーも同じく日本では目にする機会がまずなく、日本人の西洋美術史の中で最もこの部分が欠落している箇所です。

ロココ絵画の創始者ヴァトーはこのような「雅宴画」(フェート・ギャラント)と呼ばれる絵画のジャンルを確立した画家でもあります。

ルイ14世が亡くなりヴェルサイユからパリへ政治の中心が移り、宮廷人も裕福なブルジョワたちも、新しい時代に相応しい美を求めるようになった結果、軽やかなロココ時代となりました。


ギュスターヴ・クールベ「オルナンの埋葬」1849〜50年
オルセー美術館

しかし、それから100年後のパリではクールベが革命を起こすのでした。

時代を語る名画たち』のほんの一部を紹介しましたが、いかがですか、流れるように世界史を復習しながら、何故その時代にその画家のその絵画が生まれたのかを、流れるように読み解いていきます。

世界史にその名を残す、偉大な22人の画家にフォーカスし、彼らの名画が時代をどう変え、どんな役割を果たしたのかをその絵画と共に、わかりやすく解説しています。

美術好きはもちろん、それほど興味が無い人でも全く違った角度から世界の歴史を学べる一冊です。何か所か助詞や接続詞のおかしいところや、重複する箇所などがありましたが、それはお愛嬌。


カラヴァッジョ「法悦の聖フランチェスコ」1595〜96年
ワズワースアテネウム美術館

美術史を語る上で欠かせない22人の画家を紹介する中で、木村氏の好き嫌いも文章に見え隠れします。そういう副次的な楽しみもある『時代を語る名画たち』。木村氏の講座に行けなくてもこれ一冊で満足できます。

著者について: 木村泰司
西洋美術館史家。1966年生まれ。米国カリフォルニア大学バークレー校で美術史学士号を修めた後、ロンドン・サザビーズの美術教養講座にてWORKSOFART修了。知識だけでなくエスプリを大切にした、全国各地での講演会、セミナー、イベントは新しい美術史界のエンターテイナーとして評判をよんでおり、新たな美術ファンを生み出している。著書は『名画は嘘をつく1〜3』(大和書房)、『世界のビジネスエリートが身につける教養西洋美術史』(ダイヤモンド社)、『人騒がせな名画たち』(マガジンハウス)、『名画という迷宮』(PHP)、『ゴッホとゴーギャン』(筑摩書房)など多数。
オフィシャルサイト:http://taijikimura.com/web/


ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」1902〜04年
フィラデルフィア美術館

登場する画家: ポール・セザンヌ、クロード・モネ、ポール・ゴーギャン、フィンセント・ファン・ゴッホ、ラファエロ、ピーテル・パウル・ルーベンス、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アルブレヒト・デューラー、エドゥアール・マネ、レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン、 アンソニー・ヴァン・ダイク、ジャン=アントワーヌ・ヴァトー、ジャン=バティスト=シメオン・シャルダン、エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン、カラヴァッジョ、ギュスターヴ・クールベ、テオドール・ジェリコー、ウジェーヌ・ドラクロワ、ジャック=ルイ・ダヴィッド、ヤン・ファン・エイク、ニコラ・プッサン、クロード・ロラン


時代を語る名画たち 絵画を変えた22人の天才
木村泰司 (著)

名画には理由があった!天才たちの絵はなぜ「名画」と呼ばれるようになったのか?気が付けば美術も歴史も大好きになる、22のストーリー。


カラー新書 ゴッホとゴーギャン』 (ちくま新書)
木村泰司 (著)

Twitterやってます。
@taktwi

Facebookもチェック!

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5695

JUGEMテーマ:アート・デザイン



読書 | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
この記事に対するトラックバック