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『初老耽美派 よろめき美術鑑賞術』

毎日新聞出版より刊行となった『初老耽美派 よろめき美術鑑賞術』を読んでみました。


初老耽美派 よろめき美術鑑賞術
高橋 明也 (著), 冨田 章 (著), 山下 裕二 (著)

某美術館スタッフが「最近うちの館長が『初老耽美派』にどっぷりハマってしまい困っているんです…」と耳にしたのが昨年だったでしょうか。

「初老」も「耽美派」も単体であれば誰でも知るところですが、「初老耽美派」となるとはてさて?一体なんのことやら。


初老耽美派 よろめき美術鑑賞術』より。

東京ステーションギャラリー館長の冨田章氏と美術史家の山下裕二氏は、共に1958年6月15日生まれ。

生年月日だけでなく血液型まで一緒の二人が還暦を迎えた2018年に、5歳年上の三菱一号館美術館館長の高橋明也氏と飲んでいる席で結成されたユニットが「初老耽美派」です。

普段講演会やトークイベントなどでは聴けない、この3人のぶっちゃけトークを収録したのが『初老耽美派 よろめき美術鑑賞術』です。


「会いたい人に会いに行く」

ここ最近、ビジネスの世界で役立つアート本だとか、世界のエリートのアートの常識といった類の所謂「役立つアート本」が売れているようです。

しかし、初老耽美派はそんな流行など全く気にせず、己の好きなこと愛するアートについて語ります。それが読んでいて実に痛快なのです。

「もし皆さんが正解や役に立つ情報がほしいとお考えであれば、今すぐ、この本を閉じて、数学の問題集とかビジネス書を買い直してください。正解がないこと、役にたたないものーそれこそが、美術鑑賞と美術のもっとも尊く、揺るぎない価値であるからです。」


マリー=ガブリエル・カペ「自画像」1783年頃
国立西洋美術館蔵

山下裕二氏が大好きでたまらない(上から目線の美人に弱い)カペの自画像。国立西洋美術館常設展示室で目にする機会の多い作品です。

この作品を購入した経緯についても『初老耽美派 よろめき美術鑑賞術』で述べられています。題して「美術館の『お買い物』」!

高橋明也氏が西洋美術館にいたころ、パリの老舗画廊のオーナーの部屋に掛けてあったカペの自画像に得も言われぬオーラを感じ、購入交渉に。中々首を縦に振らないオーナーを口説き落として見事購入に成功。

しかし、カペは美術史的にはマイナーな画家。当時(2000年頃)の西美スタッフの評判はイマイチだったとか。ただとてもお安く購入できたので皆も納得。

同じ年に購入したグイド・レーニ「ルクレティア」の10分の1くらいだったそうです。高橋「たしか2000万くらい。」山下・冨田「安い!」


グイド・レーニ「ルクレティア」1636-38年頃

こんな話、講演会では話せませんからね。まさに初老耽美派ならぬオジサマたちの飲み会トークです。

高橋氏も山下氏も飲んでも決して美術の「悪口」を言わないのが素晴らしいです。根っからの美術応援団であることこの本の端々からも伝わってきます。

でも、近代美術館が購入した話題の鏑木清方「築地明石町」の3部作が5憶円オーバーというのは、高すぎるとも。それと出光が購入したプライスコレクション(一部)についても…


鏑木清方原寸美術館 100% KIYOKATA! (100% ART MUSEUM)

『初老耽美派』【目次】

第1章 いくつになっても美術館に行きたい!
第2章 巨大博物館を攻略する
第3章 にぶった感性を刺激する
第4章 おっぱいとエロとエロスの話
第5章 アートは結局「好き」「嫌い」


冨田「今の世の中って、役に立つことばかりがもてはやされるじゃない。大学だって、哲学科は無駄だからつぶそうとかね。」

山下「しまいにゃ、美術をビジネスに役立てようなんて言い出す始末。」

高橋「(略)子どもの勉強嫌いと同じ理屈でね。何か役に立てようと思って美術を見るのはすごぐ嫌だ。美は、もっとピュアでチャーミングなものであるはずだから。」


初老耽美派 よろめき美術鑑賞術』より。

SNSや出版業界でもてはやされている「アート鑑賞術」に対する、強烈なカウンターとしてこの本の存在がことさら際立ちます。

専門分野こそ違えども、美術や好きで好きでやまない三人のオジサマたちの、肩の力を抜いた(と言いつつもかなり鋭い指摘満載。目から鱗の発見も)会話を通し、アートの接し方が自然と身につきます。

60年近くアートを見尽くしてきた三人の会話です。まぁ、考えてみたら面白くないはずがないんですけどね。いや〜楽しかったです。病院の待合室で一気に読んでしまいました。

皆さまも是非是非〜トークイベントやりたいな〜〜(毎日新聞出版社さん!)


初老耽美派 よろめき美術鑑賞術
高橋 明也 (著), 冨田 章 (著), 山下 裕二 (著)

美術館の巡り方・作品の見方から、おっぱいとエロの真剣考察まで。ゆる~くて限りなく深い!初老3人が語るアートを楽しむ極意とは?

名画・名作を堪能したい! と思っても、人気の展覧会はどこも激混み。意外に初老のカラダにはきついもの。加えて、いまさら熱心に美術の“お勉強"もつらい……。そんなお悩みを解決する1冊。仲良し美術史家3人によるユニット「初老耽美派」が常設展をめぐって楽しみ方を紹介! ベテランたちがたどりついた美術鑑賞の極意とは?読めば、「美術ってこんなに気軽に楽しんでいいんだ! 」と目からウロコ。さっそく美術館、博物館に出かけたくなるはずです。



ひととき2019年1月号【特集】京都 寿ぎの美 初老耽美派がゆく

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