青い日記帳 

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「坂田一男展」

東京ステーションギャラリーで開催中の
「坂田一男 捲土重来」展に行って来ました。


http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

シャガール、スーティン、キスリング、ピカソなど「エコール・ド・パリ」の画家たちが活躍した1920年代のパリに赴いた日本人画家がいました。彼の名前は、坂田一男(さかた・かずお、1889-1956)。

地元の岡山ではそれなりの知名度はあっても、残念ながら全国区では坂田一男がどんな画家だったのかを詳らかに知る人はほとんどいません。かく言う自分もそのひとり。


坂田一男「キュビスム的人物像」1925年 
岡山県立美術館蔵

ピカソ、ブラックらが確立したキュビズム作品や、フェルナン・レジェに師事しレジェ風の作品を描き続け、実に10年以上にも渡りパリで画家として活躍します。

キュビズムやレジェ風の作品は、どちらかと言えば、「めっちゃ感動した!」的な感動を得らえるものではありません。理論的で一定の法則に則って描かれているからです。

どこか冷たい感じがするものです。しかし、坂田の作品からはあまりそうした形式ばった冷徹さは感じません。「近づきやすいキュビズム」とでも言いましょうか。

キュビスム的人物像」の画面右上に「さかた」と平仮名でサインを入れてあったりするのもその要因かもしれません。


右:坂田一雄「女と植木鉢」 1926年 兵庫県立美術館
左:フェルナン・レジェ「緑の背景のコンポジション(葉のあるコンポジション)」 1931年 愛知県美術館

キュビズムを離れ、太い輪郭線と単純なフォルムが印象的なレジェ的な作品を描いても、どこか愛嬌のある「かわいらしいレジェ」風になっています。

具象画でなく抽象画において、こうした差異を発見できるのはとても貴重な経験です。

1933年に帰国してから描いた作品でも、その可愛らしさがよく現れていると同時に、ただキュビズムやレジェに傾倒するのではなく、自分独自の作風を確立できたことが伺えます。


右:坂田一男「上巳
左:坂田一男「タイトル不詳」

「上巳」という独特のテイストで描かれとても雰囲気のある作品ですよね。お雛様(ヒトガタ)とフランス抽象絵画が華燭の典を迎えたような一枚です。これ欲しいな〜

それにしても、帰国後に描かれた作品は制作年不詳のものがほとんどです。その理由として坂田のアトリエが度々水害に遭ったことがあげられます。

水没というと今年大きな被害をうけた川崎市民ミュージアムを思い浮かべずにはいられません。

令和元年台風第19号による川崎市市民ミュージアムの浸水被害への対応状況について



干拓地にあった坂田のアトリエは1944年と1954年の2度に渡り水害に遭い、多くの作品が破損、または失われました。

ポスターに使われている2枚の「静物」は水害の被害が残る作品です。面白いことに坂田はこれらの作品に部分的に加筆したり修復を施したりもしています。

「(浸水により)見る影もなく相成り申した。(略)でも時代は原子時代、新しく生まれ変わりますよ!」と知人宛の手紙に綴っています。

「復興画家」「復興絵画」だけでなく、それを逆手にとり、新たに描いた作品に剥がれ落ちた跡や破れ目を描き込むなど寒水からの復活を宣言するかのような作品も手掛けています。

そのような類の作品が「カタストロフと抵抗」として一つの章にまとめられています。



展覧会の構成は以下の通りです。

1:滞欧期まで 事物の探求 ― 事物に保管されたもの/空間として補完されたもの
2:帰国後の展開 戦中期 カタストロフと抵抗 ― 手榴弾/冠水
3-1:戦後1 スリット絵画 ― 積層される時空 ― 海/金魚鉢、 
3-2:坂田一男のパラダイム
4-1:戦後2 残された資料 時間の攪乱=アナーキーなアーカイブ 
4-2:戦後3 黙示録=捲土重来


また、「坂田一男展」ではより未知の作家を知るために、坂田一男以外の作家も何点か出ています。

フェルナン・レジェ、坂本繁二郎、ル・コルビュジエ、ジョルジオ・モランディ、ニコラ・ド・スタール、山下菊二、リチャード・ディーベンコーン、ジャスパー・ジョーンズ、若林奮



モランディをこの美術館で観るとあの素晴らしい展覧会の記憶が蘇ってきますね。
ジョルジョ・モランディ」展

それにしても、坂田一男ついて、最後の最後まで一体どんな作家だったのか掴み切れませんでした。作風がコロコロ変わるわけでもなし、派手さも地味さもなく…

「ワシの絵は50年経ってから分かるようになる」と生前口にしていた坂田。没後60年が過ぎた今、そろそろ本格的に坂田作品と向かい合う日が来たようです。

「坂田一男展」は2020年1月26日までです。監修は岡乾二郎氏が務めています。まだ図録が出来上がっていませんでした。


「坂田一男 捲土重来」

会期:2019年12月7日(土)〜2020年1月26日(日)
開館時間:10:00〜18:00
金曜日は20:00まで
*入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日[1月13日、1月20日は開館]、12月29日−1月1日、1月14日(火)
会場:東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
主催:東京ステーションギャラリー[公益財団法人東日本鉄道文化財団]
特別協力:岡山県立美術館


『抽象の力 (近代芸術の解析)』
岡崎 乾二郎 (著)

20世紀美術を動かした真の芸術家たちは誰か――
ヒルマ・アフ・クリント、夏目漱石、ヴァネッサ・ベル、トーレス・ガルシア、熊谷守一、ダヴィド・ブルリューク、ジョン・D・グラハム、ゾフィー・トイベル=アルプ、坂田一男、ジョルジョ・モランディ、岸田劉生、恩地孝四郎、村山知義、白井晟一、イサム・ノグチ、長谷川三郎、瑛九、内間安瑆──

「キュビスム以降の芸術の展開の核心にあったのは唯物論である。戦後美術史の不分明を晴らし、現在こそ、その力を発揮するはずの抽象芸術の可能性を明らかにする」(本書より)


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キュビスム以降の抽象絵画の展開を核心で理解し、その可能性を究極まで推しすすめた画家・坂田一男(1889-1956)。世界的にも稀有な高い次元に到達していた坂田一男の仕事の全貌を展示し、その絵画に織り込まれた世界の可能性をひもときます。造形作家の岡乾二郎氏を監修者に招き、〈現在の画家としての〉坂田一男の全貌を提示するはじめての展覧会です。
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