青い日記帳 

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映画「エッシャー 視覚の魔術師」

映画「エッシャー 視覚の魔術師」を観て来ました。


http://pan-dora.co.jp/escher/

美術に全く興味の無い人でも、エッシャーの作品は何度も目にしたことがあるはずです。しかもチラ見ではなくかなり興味関心を持ちそれこそ目を皿のようにして見たことでしょう。

<だまし絵>で知られるオランダ人版画家・画家のマウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898年〜1972年)の作品は確かに老若男女国境を問わず人々を惹きつける魅力に溢れています。


Maurits Cornelis Escher(1898年6月17日〜1972年3月27日)

しかし、初めから目の錯覚を利用した(だまし絵)を描いていたわけではありません。映画「エッシャー 視覚の魔術師」では、展覧会や関連書籍からでは分からないエッシャーの全貌が丁寧に編まれています。

今年、東京ステーションギャラリー他で開催された「メスキータ展」は、一部のコアな美術ファンの間では話題となりました。

このサミュエル・イェスルン・デ・メスキータ(1868−1944)も映画の中に登場します。エッシャーの師であり、ナチスによって殺されたのち、エッシャーが作品をアトリエから取り戻してきたことでメスキータ作品を21世紀の我々も観ることが出来るのです。

床に散乱した作品には軍靴に踏みつけられた足跡がはっきりと残っていたと、劇中でエッシャーが語っているのを聞くと、まさに命がけの行動だったのです。



それにしても、作品先行でエッシャーほどその生涯について知られていない画家も珍しいのではないでしょうか。劇中にも登場しますが、彼が生前中より作品のコピーが出回り、手を加えられ今風に言うなら「拡散」しました。

1960年代後半にアメリカ合衆国で一世を風靡したカウンターカルチャーであるヒッピーたちにとりわけエッシャーの作品は持てはやされたのです。

エッシャー自身もそのことを知っていたのも面白い点です。映画の中ではどのようにコピー作品に対して策を取ったのかも紹介されています。



ところで、エッシャーって50歳を過ぎた頃まで仕事に就いていなかったってご存知でした。好きなように絵を描いてその日暮らしをしていたのです。

父親が日本にも技術支援として明治時代にお抱え外国人として招聘されたほど、名の知れた人物であったためエッシャー自身は働かずとも親の資産で家族を養っていけたのです。

奥さまとの出会いの場面はロマンティック。子どもたちによる語りは時に辛辣で笑ってしまいます。第二次世界大戦が終わった後、ようやく自分で稼がねばならず版画制作により一層打ち込む姿も人間臭くて良い感じです。



映画の中でエッシャーは何度も「Wonder」という言葉を使います。「不思議」というより「わくわく」「ドキドキ」といった感覚で用いているようです。

〈だまし絵〉もその観点から見直してみるとただの錯覚を利用した絵にとどまらず、より幅が感じられませんか。

そして何より、彼自身が自分は画家ではなく数学者であると述べている点も見逃せません。若い頃、イタリアで生活していたエッシャーですが、旅行で訪れたスペインのアルハンブラ宮殿で目にした幾何学模様のタイルに目を奪われます。


アルハンブラ宮殿

今回のこの映画を、荒木義明氏(日本テセレーションデザイン協会/数学者)が応援していらっしゃるのもなるほど納得がいきます。

エッシャーはアルハンブラ宮殿で目にした敷詰模様(テセレーション)に生き物を加えることで、オリジナリティを発揮、そしてそれが数々の有名な(だまし絵)作品へと発展して行ったのです。



劇中では彼の日記、書簡、二人の息子へのインタビューなど家族や収集家の証言等を手掛かりに、創作の足跡を丹念に辿り、彼の立体的な作品を、CGアニメーションを用いてさらに斬新な表現へと導くなど、これまで以上のエッシャー体験が出来る映画です。

またエッシャーから多大な影響を受けたロック・ミュージシャンのグラハム・ナッシュへのインタビューや、タイルなど我々の日常生活にまで及ぶ影響と、エッシャーの創造力の源泉を探るなど、新たなエッシャー像が見出せるはずです。

この予告動画を観ただけでも「ワクワク」してきます。


ドキュメンタリー映画 『エッシャー 視覚の魔術師』予告編

他にも新しい発見の連続であっという間に上映時間が過ぎてしまいました。ドキュメンタリー映画でこんなにも時間が短く感じたのは初めてです。

眠くなるどころか、目がらんらんと輝いてきます。2019年の締めくくりに、2020年の一本目に映画「エッシャー 視覚の魔術師」を!


映画「エッシャー 視覚の魔術師」
http://pan-dora.co.jp/escher/

2019年12/14(土)〜アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺にてロードショー、全国順次公開

©All M.C. Escher works © the M.C. Escher Company B.V.- Baarn – the Netherlands


エッシャー ミニカレンダー 2020

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この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5713

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Maurits Cornlis Escher
マウリッツ・コルネリス・エッシャー

1898年6月17日〜1972年3月27日 オランダ生まれ
いわゆるトリック・アート(だまし絵)で知られる版画家・画家。
オランダのレーワルデンで誕生。父の土木技師の父G・A・エッシャーは明治時代に日本に<お雇い外国人>として来日経験あり。1919年からハーレムにある建築装飾芸術学校に通い、恩師S・J・d・メスキータに版画の才能を見出され、専攻を変更する。1924年、イエッタ・ウミカーと結婚。1926年長男ジョージ誕生。1935年ごろスペイン、グラナダのアルハンブラ宮殿のタイルに魅了される。1937年頃から<平面の正則分割>に関するノオトをまとめ始める。1950年代「タイム」誌と「ライフ」誌の取材を受け、一躍世界的に知られることになる。1960年代後半から健康を損ね、ガンの手術を何度も受ける。1969年遺作<蛇>を制作。1972年3月27日死去。
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