青い日記帳 

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3冊の「ソール・ライター写真集」

フェルメールやラ・トゥールそれに伊藤若冲など、美術史の世界では「再発見」される画家が何人もいます。

生前はメジャーな存在であっても、その後自然とまたは故意に歴史の中で忘れ去られてしまった画家たちが、新たな価値観を見いだされ現代に華々しく蘇ることがしばしば見受けられます。

そうした「再発見」が写真の世界でも起こることあります。中でもここ数年俄然注目を集めているのが、ソール・ライター(Saul Leiter、1923年12月3日 - 2013年11月26日)です。



ソール・ライターの「再発見」が特殊なのは、1950年代からファッション写真の第一線で活躍しながら、1980年代に商業写真から自ら「引退」を表明し、忘れ去られたこと。

更に、驚くことは83歳になってから再び脚光が当たり、今の大ブームへと結びついているところにあります。

きっかけは、この一冊の写真集でした。


『Early Color』
Saul Leiter (著), Martin Harrison (著)

2006年、ドイツの出版社シュタイデルから出版された『Early Color』は異例の大ヒットとなります。

一躍彼は「カラー写真のパイオニア」として、世界の注目を浴びることになり、見事「復活」を遂げるのです。

面白いのは、NYの街や人を生涯撮り続けたソール・ライターが、アメリカではなくヨーロッパで「発見」された点です。


ソール・ライター 《バス》 2004年頃、発色現像方式印画
ⒸSaul Leiter Foundation

ソール・ライターが、他のアーティストとは距離を置き独り黙々と坦々と日々身の回りの写真を撮り続けてたことは、よくよく考えると奇蹟的なことなのかもしれません。

なにしろ、当時のNYはウォーホルやバスキアといった新進気鋭のアーティストたちが跋扈し、常に変革と新しいものを求めていた時代です。


ソール・ライター 《無題》 撮影年不詳、発色現像方式印画
ⒸSaul Leiter Foundation

アメリカ的な押しの強さが全く感じられない写真は、確かにヨーロッパの人々の心に強く響くのも納得です。

また、彼が愛したボナールも多大な影響を受けた浮世絵、とりわけ歌川広重「名所江戸百景」に共通する視点があるため、自然と我々日本人のDNAにも刺さるのです。


『All about Saul Leiter ソール・ライターのすべて』
青幻舎

2017年に同じBunkamura ザ・ミュージアムで開催された「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」は日本で初めて彼の写真を紹介した展覧会でした。

青幻舎から出された写真集(彼の言葉も満載!)は、売れに売れて2019年10月現在、13刷目という日本の写真集業界では異例のベストセラーとなっています。


『All about Saul Leiter ソール・ライターのすべて』より。

「人生で大切なことは、何を手に入れるかじゃない。何を捨てるかということだ」
初期のストリートフォトから広告写真、プライベートヌード、ペインディングなど約200点とともに、アトリエ写真、愛用品などの資料も収録。ソール・ライター財団全面協力により結実した、完全オリジナル作品集。

我々日本人を引きつけてやまない、人生観、情緒的表現、浮世絵の影響を感じさせる構図、色彩など、その深遠なる魅力の謎に迫る。

ソール・ライター 《高速道路から》 1950年代、発色現像方式印画
ⒸSaul Leiter Foundation

翌年2018年に2冊目となる写真集が発売となりました。


『ソール・ライター写真集 WOMEN』
スペースシャワーネットワーク

若い時に第一線で腕を奮っていた、ファッション誌の商業用の写真は型通り過ぎて、嫌気がさしてしまったのでしょう。

「引退」した後は、身の回りの女性たちの親密で、ラフな写真を数多く撮り続けました。



生前、ヌード写真集の企画が持ち上がったこともあったそうですが、生涯そのプロジェクトは実現せずに終わってしまいました。

NYのイーストヴィレッジにある彼のアパート兼アトリエで撮影された気取らない女性たちの日常がここにはあります。


ソール・ライター 《デボラ》 撮影年不詳、ゼラチン・シルバー・プリント
ⒸSaul Leiter Foundation

若くしてこの世を去ってしまった妹のデボラや、パートナーであったソームズたちとの思い出を、今の我々が垣間見ているかのような気にさせる素敵な写真集です。

これまで、この2冊が日本語で出されたソール・ライターの写真集でしたが、新たに2020年にもう一冊が加わりました。

それが現在Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の展覧会に合わせて出された『永遠のソール・ライター』です。


『永遠のソール・ライター』
小学館

2017年と今年では出版社が違うので、本のサイズやテイストも変わってしまうのではないかと危惧していたのですが、全くの杞憂でした。

逆に、前回の本と同じデザイナー(おおうちおさむ氏)を起用し第1巻、第2巻のような連続性のある仕立てとなっています。


本の帯まで揃えてあります。世界初公開となる豊富なスナップ写真群と、セルフポートレート、最愛の妹や女性のポートレートを収録。ライターが暮らしたニューヨークの街並みへの優しい視線、身近な人に向ける親密なまなざしを、作品を通して感じることができる写真集です。
一枚も同じ写真が掲載されていません!


『永遠のソール・ライター』より。

まだまだこれから更に注目され、知る人ぞ知る写真家から、誰しもが知る写真家と大きな変貌を遂げるはずです。

既にInstagramなどにはソール・ライターのような写真がちらほらと。



日本語で出ているこの3冊の写真集。展覧会に行った人も、遠方でちょっと無理だという方も、これさえあればソール・ライターの魅力が必ずや分かるはずです。


「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」

開催期間:2020年1月9日(木)〜3月8日(日)
*1/21(火)・2/18(火)のみ休館
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
https://www.bunkamura.co.jp/museum/
主催:Bunkamura、読売新聞社
協賛・協力等:
[協力]ソール・ライター財団、NTT東日本
[後援]J-WAVE
[企画協力]コンタクト


Bunkamuraザ・ミュージアム「永遠のソール・ライター」展開催記念特別上映
写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと
Bunkamura ル・シネマ


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