青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< April 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< ヤコポ バボーニ スキリンジ展 「Bodyscore-the soul signature」 | main | 佐藤可士和氏デザインによる「くら寿司」 >>

「〈対〉で見る絵画」

根津美術館で開催中の
「〈対〉で見る絵画」展に行って来ました。


http://www.nezu-muse.or.jp/

展覧会タイトル「(対)(つい)で見る絵画」とあったので、2幅対(ふくつい)の作品をまとめて見せているのかな〜と勝手に思い込んでいました。

そんないい加減な企画展を根津美術館がやるはずはありません。実際に足を運んでみると、三幅対どころか、四幅対、五幅対の作品までずらり。


楊月「太公望・花鳥図」日本・室町時代 15世紀

アイドルでも3人組が多かったりします。絵画も3幅対あたりが丁度いい塩梅に感じます。中央に主役を描いて左右を脇役がしっかりと固める。盤石の布陣です。

そうかと思うと、3枚とも対等に扱われている三幅対作品もあったりします。代表的なのが「三夕図」。そう、三夕の歌を絵画化したものです。

土佐光起と春木南冥がそれぞれ描いた「三夕図」が、今回2セット出ていますが、個人的に好きなのはこちら。


春木南冥「三夕図」日本・江戸時代 18〜19世紀

向かって左から西行、寂蓮、藤原定家の順になっています。土佐光起の作品ではこれが西行、藤原定家、寂蓮の並びとなっていて、中央の定家がいかにも主役のような趣があります。

しかも土佐光起作には人物と詠まれた風景が描かれていますが、春木南冥作には人物の姿はありません。風景の繋がり、3幅のバランスを考慮した並びとしたことでセンターから定家が外れています。

時代と共に価値観や人気は変化してゆくもの。山夕の歌もアイドルが唄う曲も同じこと。


土佐光起「三夕図」日本・江戸時代 17世紀
東京国立博物館蔵

参考までに三夕の歌(さんせきのうた)を

心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ(西行法師)
見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ(藤原定家)
寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ(寂蓮法師)


展覧会の構成は以下の通りです。

1.二幅対
2.一双の屏風
3.工芸における〈対〉
4.三幅対
5.四幅対・五幅対…
6.分割と再生




絵画だけでなく対で作られた工芸品も含まれており、展示にメリハリを利かせています。

掛け軸だけでは確かに少々飽きてしまいますからね、こうした配慮がなされるのが流石、根津美術館だな〜と思います。

また掛け軸が続く続くかと思いきや中間地点手前でいきなりド派手な屏風を展開してきます。チラシに使われている「吉野龍田図屏風」6曲1双はいつ拝見しても迫力満点です。

今回あらためてじっくりと拝見したところ、状態がとても良い屏風なのに驚きました。桜の花は胡粉を盛り上げ表現されていますが、欠損は見られませんし、色も鮮明です。

左右季節は違いますが、下を流れる「川」で連結、時間が継続していること示しています。


尾形光琳「夏草図屏風」2曲1双 日本・江戸時代 18世紀

さて、軸や屏風は左右を入れ替えたり、2幅のものを単独で楽しんだりと、如何様にも使えます。ただ中には頑としてそれを拒む作品もあります。

尾形光琳「夏草図屏風」がまさにそれです。

俵屋宗達「蔦の細道図屏風」や尾形光琳「燕子花図屏風」のように、琳派の屏風は左右隻を入れ替えても鑑賞可能である、永続性を持たせたものが多くあります。

また酒井抱一「夏秋草図屏風」や宗達「風神雷神図屏風」のようにどちらか一方だけでも鑑賞に堪え得る作品も存在します。

しかし、光琳の「夏草図屏風」は固い絆で結ばれた二人のように、この「かたち」でないと成立しない構図となっています。

そうした対作品も存在することを念頭に置くと「6.分割と再生」が俄然生き生きとしてきます。「6.分割と再生」があってこそ初めて完成している展覧会と言っても過言ではありません。



呂文英「売貨郎図」 2幅 中国・明時代 16世紀

2幅対作品となっていますが、元々は4幅セットでした。残りの2幅が藝大美術館に所蔵されているそうです。つまりいつの時代にか半分に分かれ分かれとなってしまった作品なのです。

このように様々な理由で「分割・再生」された作品を最後に持ってくることで、「対」の非永続性をさり気なく示すことに成功しています。

どんなに硬い絆で結ばれている二人でも決してそれが未来永劫永遠に続くことなどあり得ないのですから。



この可愛らしい子もそんな数奇な運命を辿った作品の一部です。展覧会会場で探してみて下さい!

「〈対〉で見る絵画」思った以上に見応えあり、考えさせられるものがあります。

2階の展示室5には伝狩野山楽「百椿図」と子年にちなんだ作品が出ています。「百椿図」にもネズミが描かれているってご存知でした?

「〈対〉で見る絵画」展は2月11日までです。


「〈対〉で見る絵画」

会期:2020年1月9日(木)〜2月11日(火・祝)
休館日:毎週月曜日 ただし1月13日(月・祝)は開館し、翌14日休館
開館時間:午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場:根津美術館 展示室1・2
http://www.nezu-muse.or.jp/




『日本美術のことばと絵』 (角川選書)
玉蟲 敏子 (著)


Twitter:https://twitter.com/taktwi
Facebook:https://www.facebook.com/bluediary2/
Instagram:https://www.instagram.com/taktwi/
mail:taktwi(アットマーク)gmail.com

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5739

JUGEMテーマ:アート・デザイン



東洋の絵画には、2幅対(ふくつい)や3幅対など、複数の掛幅からなる対幅や、右隻と左隻で1双となる屏風など、〈対〉で成り立つ作品が数多くあります。対幅は全体としてだけではなく、単幅や異なる組み合わせでも鑑賞できる性質をもっています。そのため、伝来の途中で4幅対が2幅ずつに分割されたり、あるいは逆に別々の作品が組み合わされて対幅に仕立てられるということもありました。
この展覧会では、「〈対〉で見る絵画」の各幅・各隻相互の連続性や独立性、対比のおもしろさや全体の完結性など、その見どころの多様さをお楽しみいただきます。絵画と同じように、刀装金具に表された対の図様にもご注目ください。
展覧会 | permalink | comments(0) | -

この記事に対するコメント

コメントする