青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< March 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 『Casa BRUTUS』特集 「バンクシーとは誰か?」 | main | 「ルネ・ラリック展」 >>

「磁州窯と宋のやきもの展」

静嘉堂文庫美術館で開催中の
「―「鉅鹿」発見100年― 磁州窯と宋のやきもの展」に行って来ました。


http://seikado.or.jp

悠久の歴史の中で生まれた数多くの中国陶磁の中でも、宋代(北宋、南宋)の「宋磁」と称されるやきものは、当時から現代に至るまで高い評価を受けています。


青磁鼎形香炉」南宋官窯
南宋時代(12〜13世紀)
静嘉堂文庫美術館蔵【全期間展示】

唐代のように社会の中心を担うのが門閥貴族ではなく、科挙をクリアすれば地方の庶民であっても士大夫(官僚)として重用され国政に当たれたのが宋代です。

儒教的な学問と教養を身につけた士大夫らには、精神性の高い崇高な美術作品が好まれたことが宋磁にとって幸運でした。


国宝「曜変天目」建窯
南宋時代(12〜13世紀)静嘉堂文庫美術館蔵
【全期間展示】

とりわけ日本では平安時代末期から鎌倉時代に受容され、主に「茶の湯」の世界で大切に扱われてきました。栄西が著した『喫茶養生記』などでも紹介されています。

現在国宝に指定されている曜変天目、油滴天目、玳玻天目茶碗の他にも多くの名碗が日本国内に存在します。「茶の湯」の道具から「鑑賞美術品」として貴ばれているのは周知の通りです。

青磁に関しては、官窯(かんよう)とも呼ばれます。つまり宮廷専用の陶磁器の窯で焼かれた一流ブランド品のような存在です。


国宝「曜変天目」

今回の「磁州窯と宋のやきもの展」でも官窯作品の名品「青磁鼎形香炉」が出ており、それだけでも十分観に行くだけの価値のあるまさしく優品です。

ところが、それら本来なら展覧会の花形作品たちが今回に限り「脇役」のように扱われ、代わりに民窯(みんよう)で焼かれた素朴なやきものたちが主役として紹介されています。


「磁州窯と宋のやきもの展」展示風景

日用の器物を大量に生産した民窯、磁州窯(じしゅうよう)の陶器がずらりと並びます。

そして目玉は北宋の町「鉅鹿(きょろく)」遺跡から発掘された陶器コレクションです。

イタリアのポンペイは火山の噴火により一夜にして消えてしまった街として有名ですが、鉅鹿という街も自然災害により一瞬にして土中に埋没してしまいました。

大正9年(1920年)に、地中からフリーズドライされたかのような鉅鹿の街が発見され、磁州窯のやきものも大量に発掘されました。そして日本でも磁州窯ブームが起こるのです。

※鉅鹿…河北省南部の町。北宋・大観2年(1108)、漳河(しょうが)の氾濫により一挙に泥土に埋没し、1920年前後に遺跡が発見され、大規模な発掘がはじまった。磁州窯陶器をはじめとする大量の陶磁器や建築址などが出土し、「東洋のポンペイ」と呼ばれた。
展覧会の構成は以下の通りです。

1:磁州窯の起源 白化粧の陶磁器
2:磁州窯系陶器の世界
3:宋磁の美


昨年、東京都庭園美術館で開催された「アジアのイメージ―日本美術の『東洋憧憬』」展をご覧になられた方は、きっと今回の展覧会はとても興味深く接することが出来るはずです。

それぞれの美術館での、様々な展覧会もときたま、このように明確な繋がりが生じることがあります。それはとてもとても嬉しいことであり、たまらないひと時でもあります。


「磁州窯と宋のやきもの展」展示風景

日本における磁州窯受容の大きな契機となった鉅鹿の発見。展覧会タイトルにわざわざ付けられているのも納得です。

まとまった数の磁州窯とその周辺の陶磁器(磁州窯系陶器)を観られる好機です。対照的な関係にあった官窯で焼かれた青磁や宮廷で使われていたかもしれない、国宝「曜変天目(稲葉天目)」をはじめとする宋磁の名品も前述の通り出ています。

現在、世界的にも高値で取引されている磁州窯とりわけ鉅鹿から掘り出された作品たちにロマンを感じ、想いを馳せながら少しだけ感傷的に接するのも良いかもしれません。



最後に、京橋の古美術商・繭山龍泉堂の代表取締役、川島公之氏お薦めの一点をご紹介。

青磁鼎形香炉」南宋官窯 ↑このように青磁を自然光で観られる機会はまず無いそうです。釉薬のヒビ「貫入(かんにゅう)」がはっきりと見えました。

会場で是非! 「磁州窯と宋のやきもの展」は3月15日までです。新しいことを知る喜びが待っています。


「―「鉅鹿」発見100年― 磁州窯と宋のやきもの展」

会期:2020年1月18日(土)〜3月15日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし、2月24日は開館)、2月25日(火)
開館時間:午前10時〜午後4時30分(入館は午後4時まで)
会場:静嘉堂文庫美術館(東京都世田谷区岡本2-23-1)
http://seikado.or.jp

今回の記事を書くにあたり、繭山龍泉堂の代表取締役、川島公之氏の論文「わが国における「宋磁」の蒐集と評価」を参考にさせていただきました。

繭山龍泉堂のサイトには様々な論文や資料が無料で公開されおりDLも可能です。
https://www.mayuyama.jp/


『天目 てのひらの宇宙』 (別冊『炎芸術』)


Twitter:https://twitter.com/taktwi
Facebook:https://www.facebook.com/bluediary2/
Instagram:https://www.instagram.com/taktwi/
mail:taktwi(アットマーク)gmail.com

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5756

JUGEMテーマ:アート・デザイン



中国宋代(960〜1279)の陶磁器は「宋磁」と称され、中国の工芸文化のひとつのピークを示すものとして世界的に 評価されています。2020年は、近代における宋磁蒐集の契機となった北宋の町「鉅鹿」遺跡と磁州窯の陶器の再発 見からおよそ100年にあたります。

磁州窯は河北省南部に位置し、五代(10世紀)以降現代まで日用の器物を大量に生産した民窯です。白化粧や黒釉 の技法を基本に、独特の「掻落し」と呼ばれる彫刻的な文様表現、鉄絵や紅緑彩(赤絵)、三彩や翡翠釉などを用い た多種多彩で装飾性豊かな陶器を生み出しました。また同様の製品を焼造する生産地は、河南・山西・山東・安徽・ 陝西といった華北地域一帯に広がり、またその技術は国境を越えて契丹族の遼(916〜1125)やタングート族の西夏 (1038〜1227)にまで伝わっていきました。

本展ではまとまって公開されることの少なかった館蔵の磁州窯とその周辺の陶磁器(磁州窯系陶器)を紹介します。 あわせて国宝「曜変天目(稲葉天目)」をはじめとする宋磁の名品を展示いたします。

展覧会 | permalink | comments(1) | -

この記事に対するコメント

管理者の承認待ちコメントです。
- | 2020/02/04 9:52 PM
コメントする