青い日記帳 

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「江戸ものづくり列伝」

江戸東京博物館で開催中の
特別展「江戸ものづくり列伝−ニッポンの美は職人の技と心に宿る−」に行って来ました。


https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/

タイトルは漠然としているし、何の展覧会なのかイマイチよく分からないかったので、期待値の低かった「江戸ものづくり列伝」が、予想に反して?!良い内容でした。

江戸東京博物館の特別展は展示空間も殺風景で、ただ並べてあるだけといった感があり、折角良い作品が出ていても魅力的に観えないのが難点です。


「江戸ものづくり列伝」展示風景

ところが、今回それなりに頑張っているのです。展示空間に関しても。まずそこがひとつ予想と違い良かったところ。

逆に、空間がいくら素敵で映えても、展示作品がイマイチだと高評価には繋がりません。その点もしっかりとクリアしており、時間とお金をかけて観に行くに十分値する内容の展覧会となっています。


綾杉地獅子牡丹蒔絵十種香箱」(幸阿弥長重/作)慶安2年(1649) 
江戸東京博物館蔵

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章:伯爵が愛したニッポン−初来日 バルディコレクション−
第2章:武士の都のものづくり
第3章:江戸の蒔絵師 羊遊斎と是真
第4章:鬼才の陶工・三浦乾也と隅田川のやきもの
第5章:府川一則−北斎の愛弟子が歩んだ金工の道−
第6章:大正昭和に生きた江戸の技−小林礫斎のミニチュア工芸−


もうひとつ、良いと思えたのは、ベニス東洋美術館所蔵「バルディコレクション」が日本初公開されている点でしょう。


バルディ伯爵肖像」明治22年(1889) 
ベニス東洋美術館蔵

明治前期に世界一周の途中に日本に立ち寄った、ブルボン・バルディ伯爵(1851-1906)が日本で収集した10,000点以上ものコレクションがベニス東洋美術館に所蔵されているそうです。

勿論、19世紀に個人が収集した日本資料としては、現在残されている最大規模のコレクションの一つです。大人買いどころの比ではありません。買いすぎです。


第1章:伯爵が愛したニッポン−初来日 バルディコレクション−

こちらは写真撮影可能エリアです。

ベニス東洋美術館所蔵「バルディコレクション」だけでも、特別展開催できます。間違いなく。

どのような経緯で、「バルディコレクション」の展示が組み込まれたのか分かりませんが、「江戸ものづくり列伝」展として、これあるかないかでは見応えがだいぶ変わることは事実です。


藍鮫研出鞘脇指拵」(鐔 銘 後藤光美、目貫 割際端銘 光・美、小柄・笄 無銘) 江戸時代 19世紀 
ベニス東洋美術館蔵

先ほど「日本に立ち寄った」と書きましたが、「日本に滞在した」の方が正しい表現となります。

なにせバルディ伯爵1889年に来日し、7ヶ月もの間、長崎、京都、東京、仙台、函館等ほぼ日本全国を回り日本の美術工芸品を蒐集したのですから。


柴田是真の団扇絵

第3章以降はそれぞれ、「ものづくり」をテーマに特色のある5人の名工たちを取り上げています。

二人の蒔絵師・原羊遊斎柴田是真、尾形乾山の陶法を継承し軍艦の建造をも手がけた鬼才の陶工・三浦乾也、葛飾北斎の弟子で絵師から金工の道に転じた府川一則、江戸の職人気質を受け継ぎ超細密工芸を究めた小林礫斎


蔓梅擬目白蒔絵軸盆」と下絵 (原羊遊斎/蒔絵、酒井抱一/下絵) 文政4年(1821) 
江戸東京博物館蔵

井田太郎氏の著書『酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情』(岩波新書)でも抱一の多角的な活躍についてしるされているように、江戸文化を紹介する際に抱一の存在は避けて通ることは出来ません。

『酒井抱一 俳諧と絵画の織りなす抒情』レビュー

原羊遊斎とのコラボ作品数点や、「第4章:鬼才の陶工・三浦乾也と隅田川のやきもの」でも大事なキーパーソンとして酒井抱一が登場しています。


隅田川窯場図屏風」(酒井抱一/画) 江戸時代 18世紀 
江戸東京博物館蔵

江戸の名工たちの展覧会ですが、酒井抱一ファンにとっては普段中々観られないレアな抱一作品に出会える好機となっています。

国宝「曜変天目」や「油滴天目」を脇役に配した静嘉堂文庫美術館の「磁州窯と宋のやきもの展」と同じく、「江戸ものづくり列伝展」では琳派のスターがその役に就いています。

府川一則も北斎の作品と共に展示されていました。


文机硯箱揃 銘 寺小屋」(小林礫斎/作))大正〜昭和時代 20世紀 
江戸東京博物館蔵

知る人ぞ知る5人の名工たちのしんがりを飾るのが小林礫斎(こばやし・れきさい 1884年〜1959年)です。

「江戸時代から続く指物師・礫斎の四代目として、大正末期から昭和初期にかけて究極とも言える精巧で緻密なミニチュア工芸品を製作し、多くの作品を現代に残す。」そう↑の作品も実物は本当に小さな小さな作品なのです。

2010年に近くのたばこと塩の博物館で開催された「小林礫斎 手のひらの中の美 〜技を極めた繊巧美術〜」以来のまとめて観られる機会です。


「第6章:大正昭和に生きた江戸の技−小林礫斎のミニチュア工芸−」展示風景

小林礫斎の展示作品も写真撮影可能なのですが、如何せん小さくて撮るのが難しい。仮に撮れたとしてもその凄さが写真だと伝わりにくいものがあります。

これこそまさに百聞は一見に如かずの世界。観れば必ず心惹かれること間違いありません。「ちひさきものはみなうつくし」です。


六瓢提物」(小林礫斎/作) 大正〜昭和時代 20世紀 
江戸東京博物館蔵

これもミニチュアなのですが、画像だとフツーに見えちゃいますよね。なんの感動もなく。会場で是非実物をその目でご覧になってみて下さい。

もう言葉にならない驚きの世界が待ち受けています。

色々と見どころが多く実に面白い展覧会でした。ほぼノーチェックでいたことあらためて謝ります。これだけ観ていても、やっぱり展覧会は実際に足を運んでみないとその良し悪しが分からないものですね。

「江戸ものづくり列伝展」は4月5日までです。是非〜


特別展「江戸ものづくり列伝−ニッポンの美は職人の技と心に宿る−」

会期:2020年2月8日(土)〜4月5日(日)
開館時間:午前9時30分〜午後5時30分(土曜日は午後7時30分まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日(ただし2月24日は開館)、2月25日(火)
会場:東京都江戸東京博物館 1階特別展示室
(東京都墨田区横網一丁目4番1号)
https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館、毎日新聞社
後援:イタリア大使館
協賛:大日本印刷、トヨタ自動車
協力:ベニス東洋美術館、アリタリア−イタリア航空


『柴田是真の植物図』(改訂版)
黒川廣子 (著), 薩摩雅登 (著)


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 日本の伝統美術は、日本人の暮らしとともにありました。四季折々の生活シーンに応じて配される建具や調度品は、人びとに潤いと彩りを与えました。開国後の日本を訪れた西洋人が一様に驚いたのは、こうした品々に宿る日本人の豊かな遊び心と繊細な美意識でした。その日本の美を作り上げてきたのが、ものづくりに生きる職人たちです。

 本展では、特色のある5人の名工たちを取り上げます。江戸が生んだ二人の蒔絵師・原羊遊斎と柴田是真、尾形乾山の陶法を継承し軍艦の建造をも手がけた鬼才の陶工・三浦乾也、葛飾北斎の弟子で絵師から金工の道に転じた府川一則、江戸の職人気質を受け継ぎ超細密工芸を究めた小林礫斎― 彼らは江戸東京で活動し、時代の空気を吸いながら、それぞれの道に精進し新たな創造に挑戦し続ける人生を歩みました。

 本展では、明治前期に日本を訪れたヨーロッパ貴族バルディ伯爵の日本コレクション(ベニス東洋美術館所蔵)の日本での初公開をはじめ、当館のコレクションを中心に、江戸東京で活躍した職人たちの仕事と人生に光を当て、日本が世界に誇るものづくりの力の源泉を見つめたいと思います。
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