青い日記帳 

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『タマ、帰っておいで』

講談社から刊行となった横尾忠則(著)『タマ、帰っておいで』を読んでみました。


タマ、帰っておいで
横尾 忠則 (著)

ペットを飼っている方なら、ご自身のスマホに何枚も可愛いペットの写真が残されているはずです。うちも2匹の愛犬の写真を暇さえあれば撮っています。

Instagramも専ら同じ犬種の写真を見るためだけに使っていると言っても過言ではありません。恋以上にペットは人を盲目にさせます。

それは、世界を股にかけ第一線で活躍するアーティストも同じであるということを、教えてくれる一冊が『タマ、帰っておいで』です。


横尾忠則「タマ、帰っておいで 082 自宅にて」2019年

横尾さんの愛猫「タマ」の絵だけで一冊になった画集です。

タイトルからお分かりのように、その「タマ」はもうこの世にはいません。2014年に天に召されました。

15年もの間、横尾さんと共に過ごした愛猫に捧げたいわば鎮魂歌のような作品集です。



絵描きとしての仕事ではなく「愛」で描き続けたタマ作品の数は91点もあるそうです。横尾さんの愛を独り占めした日本一、否世界一幸せな猫。

「この絵はアートではない。猫への愛を描いた」―横尾忠則

ところで、横尾さんの作品を多少なりとも目にしたことのある方なら、この画集が如何に普通でないかが分かるはずです。

広く知られている絵としてはユーミンのアルバムのこれとか、「戦場の昼食」のような灰汁の強い絵柄が横尾作品の真骨頂とも言えます。


『ザ・ダンシング・サン』松任谷由実


横尾忠則「戦場の昼食」1990 / 2019年 カンヴァスに油彩 178.0×212.0cm 作家蔵(横尾忠則現代美術館寄託) 撮影:上野則宏

国立新美術館「古典×現代2020―時空を超える日本のアート」出品作品
https://kotengendai.exhibit.jp/

それがどうでしょう、『タマ、帰っておいで』に掲載されているタマの絵はどれもみな可愛らしくInstagramで「いいね!」したくなるものばかりです。

ある日ノラ猫として横尾家の裏庭に忽然とやって来たタマ。それから15年間、横尾さんと同じ屋根の下で暮らしました。

タマがこの世を去った2014年から今年2020年にかけて描かれた連作は、「生まれ変わったら、また一緒の家族になろう」というタマへの想いを胸に描いたそうです。

作品の一枚一枚からタマがどれだけ愛されていたのかが如実に伝わってきます。と同時に合わせ鏡のように、自分が飼っているペットの姿をそこに投影して浮かびあがらせます。



絵だけではなく、タマに関する記述を集めた日記も掲載されています。これが猫好き(動物好き)なら、涙なしには読めないものとなっています。

2014年6月1日
「タマ」の名で始まる朝はもう来ない。
五時起床。
タマの祭壇にはインドのお香の匂いがたち込めている。
すでに妻がお香を焚いてくれている。
半日、公園でタマを想う。


「初夏」「インド」の2つのキーワードですぐさま江國香織さんの小説の一説が頭に思い浮かびました。こんな台詞があります。

「古代インドはいつも初夏だったような気がする」

江國香織の『つめたい夜に』に収録されている短編小説「デューク」で亡くなった愛犬の化身と美術館に行った主人公が二人でインドの細密画を観る場面で語られます。



亡くなったタマやデュークはもう帰ってきませんが、季節が巡り四季折々の花を咲かせるように、その時過ごした思い出は心の中に深くいつまでも刻まれるものです。

アート好きだけでなく、猫好き(動物好き)の心を直撃するヤバイ本です。


横尾忠則「タマ、帰っておいで 007 東宝スタジオにて」2014年

本来ですと、この本の刊行に合わせ西村画廊で「横尾忠則 REQUIEM タマ、帰っておいで」展が開催される予定でしたが、新型コロナの影響で開催が延期となってしまいました。

西村画廊
http://www.nishimura-gallery.com/

テキストも読みごたえ十分の画集『タマ、帰っておいで』とりわけ、最後の文章は涙腺崩壊します。

横尾さんにこれほどまでに愛されたタマ。91点も描いてもらったタマ。世界中のどんなモデルよりもダントツで幸せな猫であること間違いありません。



新型コロナウイルス感染拡大の影響で美術館・博物館が閉館を余儀なくされ、展覧会に足を運べない日々がまだまだ続きそうです。

座して落ち着いて本をとり、感性を研ぎ澄ましながら美術館で展覧会を再び観られる日を気長に待ちましょう。ジタバタしても仕方ありません。こんな時こそ読書です。


タマ、帰っておいで
横尾 忠則 (著)

横尾さんの愛にあふれた「タマ」にまつわる文章や日記は、すべての読者に、「愛」とは、「生きる」とは、「死」とは、いったいなんなのかを問いかける、人生にとって大切で、そしてなにより可愛くて仕方がない画集です!

猫好きのあなた、アート好きのあなた、この本はいつまでもあなたの人生に寄り添うことでしょう。

横尾 忠則
1936年兵庫県生まれ。72年にニューヨーク近代美術館で個展。その後もパリ、ヴェネツィア、サンパウロ、バングラデシュなど各国のビエンナーレに出品し世界的に活躍する。アムステルダムのステデリック美術館、パリのカルティエ財団現代美術館での個展など海外での発表が多く国際的に高い評価を得ている。2012年、神戸に横尾忠則現代美術館開館。2013年、香川県豊島に豊島横尾館開館。2015年、第27回高松宮殿下記念世界文化賞受賞。作品は、国内外多数の主要美術館に収蔵されており、今後も世界各国の美術館での個展が予定されている。


『横尾忠則さんへの手紙』
酒井忠康 (著)

冒険王・横尾忠則氏へ捧げる、美術評論家・酒井忠康氏からの11篇のエール。


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