青い日記帳 

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高本敦基「組み立て式の社会」

今年の3月、上野の森美術館で開催された「VOCA展2020 現代美術の展望−新しい平面の作家たち−


http://www.ueno-mori.org/exhibitions/main/voca/2020/

ご存知の通り、VOCA展は誰でもが選ばれるわけではなく、以下の2点の条件を満たしている作家・作品のみがエントリーされます。

・40歳以下の若い作家
・平面作品の新作


コロナのせいで会期途中で閉幕してしまった今年のVOCA展の中で、ひと際目を惹く作品(群)がありました。

高本敦基 (たかもとあつき)の「組み立て式の社会」と題された作品です。
https://www.takamotoatsuki.jp/


高本敦基「組み立て式の社会」(パターンとコントラストの隙間)
72.3x72.3cmが12枚
2019 制作 
素材 : アクリル塗料、プレート看板(アルミ複合板)

※作品写真提供:上野の森美術館 撮影者:上野則宏

「欲しい!」とか「めっちゃ感動した!」といった類のものではなく、心の隅っこを舌ブラシでごそごそ磨かれる何となくこそばゆい気持ちにさせる作品群でした。

こうした作品は時間が経過しても忘れられず、残るものです。そしてまた観てみたいと思わせます。




高本敦基「組み立て式の社会」(パターンとコントラストの隙間)

この作品を制作した経緯や込めた思いなどを作家さん自身からどうしても伺いたく、思い切って連絡してみました。

すると突然のお願いにも関わらず、非常に前向きに対応して下さり、画像とテキストを送って下さいました。

そこで折角ですので、このブログをご覧になられている方々にも共有したく(同じ感覚を味わってほしく)掲載させて頂くことになりました。




高本敦基「組み立て式の社会」(パターンとコントラストの隙間)

まずはこの作品の生まれた経緯についてです。

日々、仕事(生きるための)をしていて、疲れ切った頭と体で帰宅する時に何が自分を行動させているのか分からなくなってきたことがありました。

それは恐らく誰しもある経験かと思いますが、そういったときに目の前に見える信号や横断歩道、標識、看板など ほとんどコピー&ペーストで出来た視覚記号に従って無意識に、何も考えずに行動できてしまうのが非常に楽に感じ、同時に恐ろしくも感じました。

この納まりの悪い感じの体験が着想のきっかけとなりました。

高本敦基

なるほど、これが心の奥をいじられる感覚の理由だったのですね。我々も常日頃体感する「納まりの悪い感じ」を具現化しているのです。




高本敦基「組み立て式の社会」(パターンとコントラストの隙間)

「組み立て式の社会」(パターンとコントラストの隙間)についてとても明確な意図を有し制作されたことが以下の作品解説からもはっきりと伝わります。

この作品は、私たちの日常の風景の中に潜む、社会の構成要素「反復と複製」について考えてみた作品です。

私たちが生活する日常風景には、日々大量に生産される「反復と複製」(コピー&ペースト)の人工物が多く組み込まれています。

道路、信号、標識や看板、建物等、これらは程良くまあまあな感じに「反復と複製」によって組み立てられているので、別段の不満はないのですが、それゆえに別段考えることもなく私たちは行動しています。

しかし、別段考えることもしないでいい社会に行動を規定されている、という見方も出来ます。





高本敦基「組み立て式の社会」(パターンとコントラストの隙間)

そこから、無意識のうちに、社会によって私たちの行動が作られるのではなく、意識的に、社会を私たちの行動によって作っていくためにはどうすればいいか。という問題意識のもとに着想しました。

作品は、作家自身が撮影した日常風景のスナップ写真を使っているそうです。

写真の中の「反復と複製」を過剰に繰り返すことで、見ているけれど見えていない社会の構成要素を視覚化し、認識することを試みています。

見ようとして見えないものは多くあります。それと同じ割合で目にしているのに観ていないものも我々の日常には数多く存在します。

そして折からのこのコロナ禍。「見ているけれど、見えていないもの」が浮き彫りとなりました。

「見ているけれど、見えていないもの。」「見ていなくても、見させられているもの。」の双方に視野を広げることは、日々生きていく社会の中で、自分を取り戻すきっかけになる、と考えて制作活動をしているそうです。




高本敦基「組み立て式の社会」(パターンとコントラストの隙間)

「VOCA展 2020」展示室キャプションの解説も掲載しておきます。

日常を捉えたスナップ写真の中の記号部分が、絵具で反復され描かれていく。ベストの反射盤や横断歩道など、街にひそむこれら記号は私たちの行動を規定する、と作者は言う。高本はおびただしい量のモノや情報が複雑に絡まり形成される現代社会、そしてその中で行動を巧みに操作されてしまう私たちの暮らしのあり様を、作品を通してあぶり出す。

途中で終わってしまった今年のVOCA展ですが、高本敦基氏の「組み立て式の社会」に出合えたことはまさに僥倖でした。

ようやく街中に出かけられるようになりました。数か月前とは変わらぬ街並みかもしれません。でも「見ているけれど、見えていないもの」は沢山あります。

複眼で風景を捉え、新しい世界を見渡してみましょう。世界は想像以上に支配的です。




高本敦基「組み立て式の社会」(パターンとコントラストの隙間)

高本敦基氏の公式サイトも要チェックです。
https://www.takamotoatsuki.jp/

作品画像とテキストをお忙しい中、お送り頂きあらためて感謝申し上げます。


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VOCA展2020 
推薦文 高松市美術館学芸員 牧野裕二 さん

高本はおびただしい数の洗濯バサミを用いたインスタレーションの作者として知られる。時に数万個に及ぶ洗濯バサミを連結させ、砂紋によって模様が描かれた石庭にバベルの塔が屹立するような風景を生み出してきた。一方で2016年から「組み立て式の社会」と題した平面作品も並行して制作しており、本作はこちらに該当する。
このシリーズでは、日常を捉えたスナップ写真の中の記号部分が、絵具で反復され描かれていく。例えば、警備員が交通整理をする写真では、警備員の着るベストのVの字のような反射盤が反復され、画面の大部分が埋められる、といった具合である。ベストの反射盤、横断歩道、煙突、カラーコーンなど、街にひそむこれらの記号はいずれも私たちの行動を規定する、と作者は言う。高本はおびただしい量のモノや情報が複雑に絡まり形成される現代社会、そしてその中で行動を巧みに操作されてしまう私たちの暮らしのあり様を、作品を通してあぶり出すのである。

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