青い日記帳 

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『図説 モネ「睡蓮」の世界』

創元社より刊行された『図説 モネ「睡蓮」の世界』を読んでみました。


図説 モネ「睡蓮」の世界
安井裕雄 (著)

西洋絵画にほとんど興味関心がなく美術館へも自ら進んで行くこともない方であっても、「モネ」という画家や彼が描いた作品については朧気ながら頭の片隅にあるはずです。

美術館という特別な空間でなくても、モネの作品は身近な様々なものに転用され存在しています。

スーパーに買い物に行っても、通勤通学の電車内でもかなりの高確率で「モネ」に出会えたりするものです。


クロード モネ 『睡蓮(1916年)』 大容量ハンドエコバッグ ランチバッグ買い物袋手提げ袋両側の独立した網袋

一方で、絵画に造詣の深い方にとって「一番好きな画家はモネです!」と公言しにくい月並みな感じが付きまとう画家です。あまりにもメジャー過ぎるがゆえに。

音楽の世界でもそうですが、あまりにメジャーな楽曲や歌手を好きだと公言するのを憚られる傾向があります。もっとマニアックで、「こんな楽曲も知っているんだぜ!」とマウント獲りにかかってくる人のなんと多いことか。

でも自分も初めの頃はそうでしたが、モネを筆頭とする印象派作品に惹かれ大きな「睡蓮」を観られただけで十分満足感を得られたものです。

今でも、例えば西美常設展のモネルームに入るとどこか安心した気持ちになります。「おかえりなさい」とやさしく迎い入れてくれているかのように。


クロード・モネ「睡蓮」1916年
国立西洋美術館蔵(松方コレクション)

あらためて考えてみると、クロード・モネ(Claude Monet, 1840〜1926年)ほど多くの日本人に愛されている画家はいないでしょう。

確かにレオナルド・ダ・ヴィンチやフェルメールの人気は依然高いものがありますが、常に安定した人気を保っているモネには敵いません。

それは美味しいイタリアンや中華料理に舌鼓を打ってもやっぱり白いご飯とお味噌汁に勝る料理が無いのと同じです。


クロード・モネ「睡蓮の池」1907年
アーティゾン美術館蔵

そんなモネがライフワークとして描き続けたのが「睡蓮」です。一体何枚描いたのでしょうか。現在確認されている「睡蓮」だけでも308点もあるそうです。

その全てを一冊の本に収めたのが、『図説 モネ「睡蓮」の世界』です。

86年に及ぶ彼の生涯の中で「睡蓮」を描き始めたのが1895年頃のこと。第1回印象派展に「印象、日の出」を出し(結果的に)ド派手なデビューを飾ったのが1874年です。

「睡蓮」を手がけるようになるまで20年。その間もモネは常に「水」を見つめ作品としてきました。辿り着くべくして辿り着いたのがまさに「睡蓮」だったのです。偶然ではなく必然でした。


クロード・モネ「日本の橋、ジヴェルニー」1895年
フィラデルフィア美術館蔵

国からの依頼でオランジェリー美術館の巨大な睡蓮の連作を描いたのが、1915-26年ですから、初期作品から約30年であの「睡蓮」大装飾画に至ったことになります。

果たして30年でそれは為し得ることが出来るのでしょうか。自分はいつもそのことが気になって気になって仕方ありませんでした。

実際に、オランジェリー(改装前と改装後)で睡蓮の連作の前に立ち、バイカラーのような感動8割、疑問2割を抱きました。でも、そんな疑問も『図説 モネ「睡蓮」の世界』を通読しようやく晴れました。

やはり、偶然ではなく必然なのです。


クロード・モネ「睡蓮」1915-26年
オランジェリ―美術館蔵
(随分前に撮影したこの写真、Twitterのヘッダーに使っているものです)

図説 モネ「睡蓮」の世界目次

Chapitre I 壮大なライフワークの始動
Chapitre II 日本の太鼓橋
Chapitre III 水面への没入
Chapitre IV 沈黙、そして制作再開
Chapitre V 「大装飾画」プロジェクトの始動
Chapitre VI 試行錯誤の日々
Chapitre VII 壁画
Chapitre VIII 「大装飾画」の完結
(コラム)
ジャポニスムと「睡蓮」
絵葉書で見るジヴェルニーの暮らし
セーヌ川の洪水とモネの庭
モネが描いた「睡蓮」の数、廃棄した数
白内障を乗り越えて……ほか



幅広い色彩のニュアンスにあふれ筆の動きも変幻自在


水底の深い緑と対岸の樹木の反映が華やかな色彩を奏でる

全308作品、全ての「睡蓮」を年代順に紹介。作品解説のほかにこうしたキャッチフレーズのような端的な紹介文まで付けられています。

地道にコツコツと作業を進めるのが苦手な自分には到底考えられない仕事です。世界中の美術館や個人コレクションを全て網羅しているのです。

良い意味で「変態本」です。やれと言われてやれる仕事では決してありません。

これまでも著者の安井氏はモネの決定版的な画集を著してきましたが、それの上を行く稀代の一冊です。これは。


『モネ作品集』
安井裕雄 (著)

安井 裕雄(ヤスイ ヒロオ)
1969年生まれ。財団法人ひろしま美術館学芸員、岩手県立美術館専門学芸員を経て、現在、三菱一号館美術館上席学芸員。専門はフランス近代美術。主な担当展覧会に「モネ―睡蓮の世界」(共同監修、2001)、「シャルダン―静寂の巨匠」(2012)、「ルドン―秘密の花園」(2018)、「全員巨匠! フィリップス・コレクション展」(2018)など多数。「ルドン―秘密の花園」では第13回西洋美術振興財団賞「学術賞」を受賞した。主な著書に『もっと知りたいモネ 生涯と作品』『モネ作品集』(東京美術)、『ルノワールの犬と猫 印象派の動物たち』(講談社)、共著に『モネ入門―「睡蓮」を読み解く六つの話』(地中美術館)、『地中美術館』(公益財団法人福武財団)がある。


図説 モネ「睡蓮」の世界』より。

写真のように目の前の風景を切断するかのように捉え表現した風景画よりも、モネのようにボヤボヤとした作品によりリアルさを感じてしまうのは、よく考えてみれば不思議なことです。

実はそれは我々の目にモネの作品の方が近しいからなのだと思います。

意外なほど人間の目はいい加減なもので、目の前の対象を観ているつもりでも、その実アバウトに概観しかとらえていなかったりします。一、二度会ったことのある程度の人の写真を見せられると違和感やズレを覚えるのはそのせいです。

セザンヌがモネを讃えた有名な言葉に「Ce Monet, ce n'est qu'un oeil, mais quel oeil !(モネは一つの目に過ぎない、しかし何という目だろう!)」がありますが、まさに言い得て妙だといつも思います。



そうそう、「睡蓮」全作品掲載&解説だけではなく、モネが愛したジヴェルニーのことや、睡蓮以外の連作についても丁寧に記されています。時にイラスト付きで分かりやすく。

素人も玄人も大人も子供もみんな大好きなモネ。彼が半生をかけ病と闘いながら描いた睡蓮を通しあらためて偉大さを読み直してみましょう。

図説 モネ「睡蓮」の世界』久々に凄い一冊に出逢えました。おススメです!


図説 モネ「睡蓮」の世界
安井裕雄 (著)

すべての「睡蓮」を集めた永久保存版!
美しいだけでは終わらないモネの壮絶なるライフワーク、「睡蓮」の真実を紐解く。

きらめく水面にたゆたう可憐な睡蓮の花――
ジヴェルニーに造成した庭を舞台とするモネの「睡蓮」は、今も世界中の人々を魅了してやまない。
50代後半から約30年をかけて描かれた「睡蓮」は、膨大な数にのぼる。
ひたすら光を追い、千変万化する水を見つめ続けたモネは、いったい何を表現しようとしたのか。
自然に開かれたモネの眼がとらえたものとは?

最初期の作品から
晩年のオランジュリー美術館の大装飾画まで、生々流転する「睡蓮」の真実を、モネ研究の碩学が解き明かす。
すべての「睡蓮」とその関連作を集めた、永久保存版資料。
〈全308作品、完全収録!〉


『図説 モネ「睡蓮」の世界』


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