青い日記帳 

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「如鳩と沼田居 展」

足利市立美術館で開催中の
「如鳩と沼田居 展 いのちの眼で見えるもの」へ行って来ました。


http://www.watv.ne.jp/~ashi-bi/

栃木県足利市出身の二人の超個性的な画家の全貌を紹介する展覧会が、足利市立美術館で開催されています。

二人の画家の名前を聞いてもすぐに作品は頭に浮かんで来ないかもしれません。しかし、それぞれ類を見ない個性的でインパクトのある作品は、きっと脳裏に焼き付いているはずです。


牧島如鳩「医術」1929年頃
足利市立美術館蔵

横長のキャンバスに油彩で描かれた作品。中央に鎮座するキリストから三角形の構図で画面左には子どもの誕生の場面を、右にはレントゲン写真を撮る結核を患い早世した妻の姿が描かれています。

今回の展覧会では「医術」の下図も発見され並べて展示されています。結核の療養として滞在した伊豆の風景を下図ではもっと大胆に描いていましたが、本図では人の生と死をより際立たせています。


牧島如鳩「大自在千手観音菩薩」1968年
願行寺蔵(文京区)

2009年に三鷹市美術ギャラリーで開催された「牧島如鳩展」のポスターにはこの作品が使われていました。

牧島如鳩(まきしま にょきゅう、明治25年(1892年)6月25日 - 昭和50年1975年)12月31日)については、2009年の「牧島如鳩展」にかなり詳しく書きましたが、10年以上も経つと作品との向き合い方も変わってくるものです。

以前は破天荒に感じたキリスト教絵画や仏画も、今回はいずれもしっくりと心の中に入り込んできました。コロナや数多の自然災害も少なからず影響しているのは確かです。


牧島如鳩「極楽鳥」1960年
願行寺蔵(文京区)

牧島如鳩齢70歳の時、が飛び去り、如九と改名した時に描いた作品。

展覧会の構成は以下の通りです。

1:如鳩と沼田居の出合い
2:和田居の展開
3:如鳩の転機
4:沼田居の転機
5:如鳩の晩年
6:沼田居の晩年


牧島如鳩(まきしま にょきゅう)については、山下裕二先生も注目され押されているので、そこそこ知名度はありますが、一方の長谷川沼田居(はせがわ しょうでんきょ)は知る人ぞ知る画家でしょう。

長谷川沼田居(はせがわしょうでんきょ 1905‐1983)は、如鳩に洋画を、如鳩の父親にあたる牧島閑雲(かんうん)に南画、日本画を学びました。


長谷川沼田居「太陽花之図」1960年
長谷川沼田居美術館蔵

神と仏が同居する誰も見たことのない宗教画を描いた如鳩に対し、沼田居の作品は一見穏やかそうに見えます。ひまわりやかきつばたなどを繰り返し描いています。

ただし、白内障が悪化し1965年8月右目摘出手術を受け、左目も視力が衰え終には左目も失明してしまいます。

ゴッホが描いた情熱的なヒマワリとは違い、沼田居のひまわりは眼光鋭い目玉のように見えます。


長谷川沼田居「かきつばた抽象」1970年
長谷川沼田居美術館蔵

そして驚くことに失明した後も作品を描き続けています。「かきつばた抽象」「遠き逃げ失せた眼の玉今や何處にか有る」等の作品は生への拘りと、強い制作意欲が身体中で感じられました。

ふと思ったのですが、長谷川沼田居は神を信じていたのでしょうか。信仰心は持っていたのでしょうか。仏?キリスト?それとも八百万の神々??

牧島如鳩が一貫して宗教に関わる作品を描いていたのとは対照的です。想像ですが沼田居は自分自身を強く信じていた人だったのではないでしょうか。デューラー風の自画像などもそうした観点からは必見です。


牧島如鳩「魚籃観音像」1952年 
(公財)足利市民文化財団蔵

新型コロナの影響で当初春の開催だった展覧会が夏にスライドしました。結果的に良かったような気がします。今の気持ちが沈んだ状態で向き合った方が、表面的な派手さだけに目を奪われず「内側」までしっかり鑑賞できます。

如鳩の辞世の句。実に彼らしい一句です。
われ死なば シャカ・キリストや観音の御使いたちが骨ひらうらん

足利藩の江戸藩邸に生まれた画家・河野次郎とその息子・河野通勢の作品も特別展示室で公開されています。二人は如鳩と親交がありました。

足利にまつわる4人の画家の作品をまとめて観られる好機。東京へ出るのは気が引ける方も足利なら大丈夫でしょう!「如鳩と沼田居 展」は8月16日までです。今観ておくべき展覧会です。是非。


「如鳩と沼田居 展 いのちの眼で見えるもの」

会期:2020年5月19日(火)〜8月16日(日) ※会期変更
4月18日(土)〜6月7日(日)
開館時間:午前10時〜午後6時(入館は午後5時30分まで)
休館日:月曜日(ただし5月4日は開館)、5月7日(木)
会場:足利市立美術館
http://www.watv.ne.jp/~ashi-bi/
主催:足利市立美術館
協力:長谷川沼田居美術館、公益財団法人 足利市みどりと文化・スポーツ財団


『画家たちの二十歳の原点』

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5924

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牧島如鳩(1892-1975)と長谷川沼田居(1905-1983)はともに足利出身の画家です。
 如鳩は、ハリストス正教会のイコン画家として教会を荘厳するイコンを描く一方、仏画を手がけ、さらにはキリスト教と仏教の図像を混交した他に類例を見ない作品を制作しました。沼田居は、如鳩の父閑雲に南画を、如鳩に西洋画を学びました。1960年ころから視力が減退し、最晩年の10年間全盲となりますが、描くことは生きることと等しく筆を折ることなく人生を全うしました。
 如鳩と沼田居は師弟の間柄ですが、作風も性格も大きく異なります。ただ二人に共通することは人生の後半に大きな転機が訪れたことです。如鳩においては神仏のダイレクトな感得であり、沼田居においては失明という、いずれも有無を言わせぬ体験でした。その結果、驚くべき作品の数々が遺されました。如鳩は独自の図像により目に見えぬ神仏を描き、沼田居は肉眼による「視力」に依拠しない前人未踏の画境を拓きました。本展は、両者の作品をともに展示し、足利が生んだ類いまれな二人の足跡をたどります。
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