青い日記帳 

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「藝大コレクション展 2020」

東京藝術大学大学美術館で開催中の
「藝大コレクション展 2020――藝大年代記(クロニクル)」に行って来ました。


https://www.geidai.ac.jp/museum/

特別展の端境期に場つなぎ的に開催する所蔵品展だと思ったら大間違い。タイトルこそコレクション展ですが、内容的には立派な「特別展」です。「ザ・藝美展」!

理由は3つ。

まず1つ目はケチケチせずに、バンバン良い作品を出している点。

第1部「日本美術」を創る入って正面にこの藝大3トリオをいきなり出してきています。


原田直次郎「靴屋の親爺」(重要文化財)1886年
高橋由一「」(重要文化財)1877年頃
黒田清輝「婦人像(厨房)」1892年

中学生のころ、美術の教科書で高橋由一「」を見て、なんで鮭を描いただけなのに名画なんだろう?と思ったものです。

美術の歴史、とりわけ明治以降日本が西洋から積極的に絵画を学び吸収していったことは改めて説明する必要もありません。

西洋の新しい絵画(洋画)を自分のものにせんと、高橋由一は必死で学び独自の表現を獲得していきます。後に「日本で最初の洋画家」と呼ばれるまでの存在に。


⽥辺⾄「セーヌ河畔の娘達」(ギュスターヴ・クールベ模写)1922-24年

黒田清輝や和田英作、田辺至のようにヨーロッパへ赴き実際の作品を目の前にし模写を通して学んだ洋画家たちとは違い、高橋は日本国内に留まりました。

高橋作品から受ける、どこかしらあか抜けなさや、見よう見真似ではなく独自路線を貫いている感はそんなところにも理由があるようです。

高橋由一の油彩画ほど観る機会を重ねるごとに、美術史の知識が増すごとに輝いて観える作品も他にはありません。


狩野芳崖「悲母観音」(重要文化財)1888年
上村松園「序の舞」(重要文化財)1936年

この2作品を並べて観られる(しかも空いているので独占状態!)なんてにわかに信じられないでしょう。でも事実です。ね、大盤振る舞いでしょ!

2つ目は、キュレーション(展示構成)がしっかりしている点です。

展示室2か所使い、特に第1部は東京美術学校・東京藝術大学の130年以上の歴史の中で、どのようにコレクションが収集されていったのかを細かなテーマを設定し丁寧に紹介しています。

展示構成は以下の通りです。

第1部 「⽇本美術」を創る 
イントロダクション
第1章 1889年 東京美術学校と最初期のコレクション
第2章 1896年 ⿊⽥清輝と⻄洋画科
⻄洋画科と模写
⾕⽂晁コレクション
第3章 美校の素描コレクション
平櫛⽥中コレクション
令和元年度 新収蔵品紹介
第4章 1900 年 パリ万博と東京美術学校
特別出品
第5章 1931 年 官展出品・政府買上作品

第2部 ⾃画像をめぐる冒険
イントロダクション
⾃画像コレクション
卒業制作
Collection in Focus︓ヨーゼフ・ボイスと東京藝術⼤学



アントニオ・フォンタネージ「建築物写生方式

1883年に閉鎖された、工部美術学校(1876年,絵画,彫刻の技術教育を目的に工部省工学寮内に設けられた日本最初の官立美術学校。)時代の作品も藝大美術館に素描コレクションとして所蔵されています。

イタリアから明治政府に招聘され日本にやって来た、フォンタネージの素描がそこで学んだ学生たちの作品と共にまとまった形で展示されています。



鎌倉時代の仏画や、知られざる谷文晁コレクション(調査研究中)などもバランスよく配置され、全く飽きさせることがありません。

「コレクションを見せる」とは、どういうことなのか。そんな学びの場でもあります。

最後の3つ目は「説明しなくてはそれがわからんというのは、つまり、どれだけ説明してもわからんということだ。」(村上春樹『1Q84』)です。


東京美術学校の自画像

展示室が変わり、第2部は「⾃画像をめぐる冒険」です。勿論これは村上春樹の『羊をめぐる冒険』に由来していることは明白です。

卒業制作の一環として描かれた「自画像」一体何枚展示されていることでしょう。卒業生が毎年自画像を制作し収めていくため、6000件を超える作品が所蔵されています。


白滝幾之助「自画像」1898年
青木繁「自画像」1904年

白滝の自画像が東京美術学校の自画像制作第一作目にあたるそうです。そしてこれらが、藝大の歴史を振り返るのに格好の好材料となります。

時代と共に自画像も少しずつ変化をみせます。川俣正や宮島達男の「自画像」は想像通り絵ではありません。ある意味必見です。

必見といえば、展示室の最後にある「黒板」は激レアものです。1984年にヨーゼフ・ボイスが来日し藝大に招かれ学生たちとの対話集会が催されました。

実行委員長兼司会役を務めたのは、当時まだ学生だった長谷川祐子、宮島達男、タナカノリユキたち。

ただ対話集会は惨憺たるものだったそうです。ヨーゼフ・ボイスと学生たちの意見が対立、話にすらならないのを根気強く黒板を使い説明を試みた痕跡として「⿊板(ヨーゼフ・ボイス 筆跡)」が今での藝大には残されているのです。

「そして冒険が始まるの」


伝 狩野永徳「松鷹図屏風」桃山時代

本当は見どころ3つどころかこの屏風絵のように、まだまだ沢山あります。彫刻も良いもの出ています。

事前予約制ではなく、思い付いたら気軽に行けるのが良いですね。しかもビックリするほどコスパ高い!

「藝大コレクション展 2020」は10月25日までです。是非是非〜


藝大コレクション展 2020――藝大年代記(クロニクル)

会期:2020年9月26日(土)〜10月25日(日)
開館時間:午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日
会場:東京藝術大学大学美術館 本館 展示室1、2
https://www.geidai.ac.jp/museum/
主催:東京藝術大学
助成:藝大フレンズ賛助金


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東京美術学校(美校)開学から現在の東京藝術大学まで、130年以上にわたって引き継がれている本学の美術・教育資料の集積である「藝大コレクション」。2020年の展示では、美校・藝大に残された多様な美術作品によって、学史を「年代記」のように辿ります。
第1部では、上村松園の《序の舞》、狩野芳崖の《悲母観音》など、名品群を紹介します。
第2部では、藝大を象徴するコレクションと言える自画像群を特集します。黒田清輝を中心とする西洋画科の卒業課題としてはじまり、現在まで続くコレクションで、その総数は現在6000件を超えます。これらの自画像を、日本近代美術・美術教育史の流れを示す「歴史資料」として扱い、100件以上の自画像を一堂に並べ、美校・藝大の流れを「年表」のようにご覧いただきます。
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