青い日記帳 

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「エルンスト・バルラハ展」

東京藝術大学大学美術館で開催中の
「ドイツ表現主義の彫刻家 エルンスト・バルラハ展」に行って来ました。



日本におけるドイツ年(2005/2006)で多くの未知の作品に触れる
チャンスに昨年から恵まれていますが、その中でも
「隠し玉」であり「とっておき」な展覧会がこのバルラハ展かもしれません。

「ドイツ表現主義の彫刻家」
なんて肩書付けられてしまうと逆にお客さんが減るように思えます。

だってなにやら難解そうですもの、いかにも。。。
ドイツ・表現主義・バルラハの彫刻」この三つの単語並べて
とても「よし!観に行くぞ!!」とはならないはず。

しかも絵画でなく彫刻…藝大美術館今慌てて行かなくても6月になれば
「ルーヴル美術館展−古代ギリシア芸術・神々の遺産−」始まるし……

フランス・ルーブル美術館・古代ギリシア」これなら
「行きたい!!」ってなりますものね。

しかーし
「ルーブル美術館展−古代ギリシア芸術・神々の遺産−」よりも
はっきり言って100倍は感動します。「エルンスト・バルラハ展」

心に深く響きます。
下手すると泣いちゃいます。
それくらい良い展覧会です。

この展覧会が良いという大きな理由はエルンスト・バルラハ自身が
単に形だけで作品を創る作家でなかっただと思います。
作品にそれぞれ「想い」や「魂」が注入されているかのようです。

1870年1月2日に生まれ、1938年10月24日に亡くなっているバルラハ。
ドイツという国の歴史に翻弄された作家です。

展覧会の構成もしっかりしたものでした。
時代を追って彼の作品の変遷を観ることができます。

第1章 ハンブルクとドレスデンでの修行時代
第2章 パリ滞在時代
第3章 ハンブルク、ベルリン、へール時代…ムッツ製陶工房での制作
    およびへール製陶専門学校での教師時代
第4章 ロシア旅行とベルリンでの芸術家としての初成功
第5章 フィレンツェでの修行時代
第6章 ギュストロー時代…第一次世界大戦中・戦後
第7章 偉大なる制作の時代そしてナチス時代における芸術家バルラハの存在

バルラハ―神と人を求めた芸術家
バルラハ―神と人を求めた芸術家
小塩 節

ロシア旅行後の作品に特に高い精神性を垣間見ることができます。
何かが彼の中で劇的に変化した様子が分かります。

そして戦争へと突入していくわけです。
第6章 ギュストロー時代…第一次世界大戦中・戦後
第7章 偉大なる制作の時代そしてナチス時代における芸術家バルラハの存在
この最後の2つのセクションは言葉をなくしてしまいそうなほど
バルラハの作品から観るものに訴えかけるものが感じられます。

会戦当初こそ戦争を肯定していたバルラハも次第に
ベクトルの方向が変わっていきます。
そしてナチス政権化では極右勢力から攻撃され
有名な「退廃芸術展」に展示されるまでに。。。

当然、経済的にも困窮してきます。

パリ、ロシア、フィレンツェそれぞれ場所で母国ドイツの良さを
再認識し祖国のために「偉大なる制作」に打ち込んだ彼にとって
こんな仕打ちが還暦を過ぎてから待っていようとは誰が予想したでしょう。

そして、1938年に68才の生涯を閉じたバルハラ。
どんなことを思いながら息を引きとったのでしょうか。。。

ここからは私の勝手な思い込みです。
不遇な人生の最期を向えたかのように思えるバルラハですが、
心は腐っていなかったように思えてなりません。

いくら辛い目に遭おうとも。

最後の展示室にこの作品がありました。

笑う老女」という作品です。

木彫です。円空の作品のような荒削りで素朴な作品です。
観ようによっては仏様のようにさえ見えます。

この作品、1937年に作られたものだそうです。
亡くなる前の年です。

今まで書いてきたように、晩年は大変不遇だった作家さんです。
そんな彼の死ぬ前の作品がこれなんです。笑っているんです。

ね、凄いでしょ。

到底自分には真似できません。
「不遇」を利用して「悲劇の作家」になるのがおちです。

でも、エルンスト・バルラハは笑っていられるのです。
「笑う老女」は彼自身の『即身仏』のように観えました。



既に観に行っているのに、まだ感想書いていない展覧会あるにも
かかわらず、「エルンスト・バルラハ展」の感動覚めやらぬ間に
upしたくて驟雨にも負けず一気に書き上げてしまいました。

An Artist Against the Third Reich: Ernst Barlach, 1933-1938
An Artist Against the Third Reich: Ernst Barlach, 1933-1938
Peter Paret

バルラハの作品です。


復讐者


読書する修道院生徒


ギュストロー大聖堂「空飛ぶ天使
(これは展覧会には出展されていません)


2005年にエルンスト・バルラハ・ハウスで開催された
「舟越桂とバルラハの二人展」のカタログです。
Katsura Funakoshi - Ernst Barlach: A Map of the Time
Katsura Funakoshi - Ernst Barlach: A Map of the Time
Katsura Funakoshi, Ernst Barlach, Ernst Barlach Haus

日本でも是非開催して欲しいですね。


この後、山梨県立美術館に巡回するそうです。6月3日〜7月17日
展覧会 | permalink | comments(13) | trackbacks(5)

この記事に対するコメント

こんばんは

京都で開催されたとき、会場にはそれこそ老若男女が溢れておりまして、みんな『真摯』な眼差しで作品と対峙していました。声も出さずに。
わたしも沈黙しながらみつめていました。
遊行七恵 | 2006/05/20 9:46 PM
こんばんは!TBありがとうございました◎

>作品にそれぞれ「想い」や「魂」が注入

これが紛れもなく本当なのですから、、すごい人です。

《笑う老女》、私も印象に残ってます。
私は押し殺したような強い感情を感じましたが、
いずれにせよバルラハがこの表情に込めたものは
超越的なとでも言えるような何かなのだと思います。。

こちらからもTBさせていただきます^^
Sonnenfleck | 2006/05/21 12:15 AM
私も今日行ってきました!
時代に翻弄され、残された作品がとても少ない芸術家の個展で、
こんなにたくさんの感動的な作品を拝めるなんて!と泣けました。
ドイツ太っ腹です…

私がバルラハの作品を知ったのは、
大好きな小塩節先生のエッセイがきっかけなのです。
ドイツ留学時代にマールブルクの聖エリザベート教会で
バルラハ作の「十字架上のキリスト」に出会って、
いつも説教そっちのけで見ていたんだとか。
小塩先生を惹きつけた理由が、よくわかりましたよ〜。

Takさんご紹介の本「バルラハ―神と人を求めた芸術家」、
今日ショップでちらっと見たのに、これも小塩先生著だったなんて、
ちっとも気づきませんでした。ぐやじい〜。買ってくればよかった。
秋津(Arthur-co. in mixi) | 2006/05/21 12:22 AM
Takさん、私も単純な形に深い精神性を潜めた彼の作品群に感動しました。おっしゃるように、一部の彫刻は仏像と共通するところもあると思いました。
とら | 2006/05/21 10:28 AM
@遊行七恵さん
こんにちは。

静かに見入ってしまいますよね。
時代を経るごとに重くなります。
でもその重さも悪くないのが良いところですよね。

@Sonnenfleckさん
こんにちは。

「笑う老女」は突然目の前に現れて
言葉を一瞬失いました。。。
ナチスの迫害など追い詰められているにも
関わらず、あの作品を創る心情たるや。

精神は変えることが出来ない典型例ですね。

@秋津さん
こんにちは。

おおーーそれじゃ〜会場で会っていたかも。
雨に降られませんでしたか?
私は普段の行い悪いので見事にやられました。

>小塩節先生のエッセイ
これ気になります。
早速調べてみます。
多分買いだな。

こんな素晴らしい展覧会を開催してくれるなんて
ドイツ年エライ!!
フェルメールだけがドイツ年だけではないですね。

普段中々見る事のできない
このような作品に出会えたことに感謝です。

@とらさん
こんにちは。

木彫だから仏像との共通点があるのでは決してなく
作品に潜んでいる精神性にこそ共通点があると観てよく分かりました。
ドイツ人ってやっぱり。。。

Tak管理人 | 2006/05/21 12:21 PM
バルラハ展取り上げていただいて、すごく嬉しいです。
そして、私も「笑う老女」が一番印象に残りました。「歌う男」(?)という作品が近くにあって、この2つが妙に気になって何回も戻って見なおしていたのです。

舟越桂との二人展、作風は全然違うと思いますが、並べるとどんな感じになるのか、本当に見てみたいものです。
meme | 2006/05/21 7:37 PM
Takさん、ご無沙汰しております。
私は毎日お邪魔していますので、ご無沙汰感はないんですけどね。

今日は休養日の予定でしたが、mixiをAM10時半頃見たら、この紹介文があり、これは「いかねば」とせき立てられる何かがあり、急いで支度をし、近所の親友を誘って家を11時半に出るという速攻さでした。
行ってホント良かったです。
おっしゃるとおりその精神性の高さに驚きました。
多くの彫刻が上を向いていて(ちょっとイナバウアー?)その表情に魅きつけられました。
こんなに動きがあり、人間のこころを表現している彫刻に始めて出会い、魂が大きく揺すぶられました。

「笑う老女」を観ていると笑い出したくなりますね。
「再会」のおばあちゃま?も素敵でした。

ご紹介いただきありがとうございました。感謝いたします。
花子 | 2006/05/21 8:28 PM
Takさん、TBお返しありがとうございました。
なんだか、こちらのブログ新発見がいっぱいで
色々勉強になりますね♪
多分毎日チェックしてると
思いますので、
面白いものいっぱい載せてくださいね。
| 2006/05/21 8:53 PM
@memeさん
こんばんは。

「歌う男」ありましたね。
あれもまたセットで心にくるものありました。

舟越と意外と共通している点あるかもしれません。
少し会場で舟越のことも頭に浮かびました。

@花子さん
こんばんは。

中々「ツアー」に参加できずもうしわけないです。
もう少し落ち着いたら参加させていただきますね。
今はヘトヘトです。。。

さてさて、展覧会
良かったですよね。
うんうん。

感動を分かち合えて嬉しいです。
心に響く作品てそう滅多にないのですが
この展覧会では違いました。
会場内からビンビン伝わってくるものありました。

帰り土砂降りの雨でしたが
心はとっても晴れやかな気分でした。

@健さん
こんばんは。

ありがとうございます。
何とかへなちょこですが
毎日続けています。
どうぞよろしくお願いします。
Tak管理人 | 2006/05/22 11:21 PM
Takさんこんばんは。
TBさせていただきました。
コメントの中にもありましたが、老若男女ほとんど声も出さず彫刻の独特の世界に引き込まれていたのを私も感じました。
す、すごすぎる、と思いました。
なにかものすごく圧倒されました。
どんちゃん | 2006/05/24 8:34 PM
@どんちゃんさん
こんばんは。
TBありがとうございます。

圧倒されっぱなしでした。
はじめはそれでもまだ良かったのですが
ロシア時代くらいから徐々に。。。
そして戦争突入と同時に一気に
重くのしかかるもの感じました。
Tak管理人 | 2006/05/24 10:28 PM
こんばんは。初めてコメントさせていただきます。

実はチケットを頂いてなんの予備知識もなしに京都近代美術館で見たんです。どかーんと打ちのめされたような衝撃でした。
バルハラを見るちょっと前にプーシキン美術館展に行ったところだっただったこともあり印象派の華やかなイメージとはいい意味でかなりギャップが。

一番印象的だった作品は やっぱり 「笑う老女」でしょうか。
「空飛ぶ天使」実物見たかったですね♪
十六夜 | 2006/05/26 9:02 PM
@十六夜さん
初めまして、こんばんは。
コメントありがとうございます。

>どかーんと打ちのめされたような衝撃でした。
まさにそうでしたね。
無防備のまま私も行ってしまいやられました。。。

「空飛ぶ天使」の実物って大きいですよね。きっと。
観たいな〜インパクトあるでしょうね。

今後ともよろしくお願い致します。
Tak管理人 | 2006/05/28 12:37 AM
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