青い日記帳 

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智積院 国宝障壁画

京都智積院で長谷川等伯一門が描いた国宝「障壁画」を観て来ました。

智積院金堂内から七条通りを望む。
地図はこちら

京都国立博物館で「大絵巻展」も何とか観ることができ
これで午前中の予定は無事終了。時計を見ると11:30。
お昼の予約を12:30から萬亀楼に入れてあったので
ちょっとお店に向かうには時間的にまだ早い。。。

なんてことブツブツ言っているとタクシーの運転手さんが
それならすぐ近くにある智積院はどうですか?とご推薦。

ガイドブックを開くと長谷川等伯が描いた荘厳な障壁画があるとのこと。
二つ返事で行く意志を告げ、智積院へ。(といっても車で2分)

境内はかなり広く初めて行くと迷ってしまいそうなほど。
タクシーの運転手さんに先導されて等伯らの作品が収められている
国宝障壁画収蔵庫へ小走りに向かいました。

智積院
智積院
近藤 隆敬, 水野 克比古

長谷川等伯一派の障壁画がこのお寺にあるのは調べてみると
かなりの紆余曲折があったようで……

元々は豊臣秀吉の長男棄丸の死を弔うために1593年に竣工した
祥雲寺客殿内部の障壁を埋めていたそうです。

因みにこの祥雲寺は禅寺だったそうなのですが、、、
秀吉の意向で金碧障壁画による絢爛豪華な内装になっていたそうです。
(ゴールド好きですからね〜)

その後、徳川の世になり祥雲寺は智積院に与えられたそうです。
しかし智積院に引き継がれた後の1682年に火災に遭い寺は消失。
辛うじて障壁画の一部は持ち出され再建後に復興。
ところが1892年に盗難に遭ったり、1947年に再び火災に遭ったりし、
それら幾多の災いを潜り抜けた長谷川一門の作品が、
現在、国宝障壁画収蔵庫に展示されているそうです。

↑なんて薀蓄は旅行から帰ってきてから調べたもの。。。
見学した時は全く知らずに観てきました。知っていたら
また違った感慨もあったかもしれませんが、それはまた次回。

さてさて、肝心の長谷川等伯らの障壁画を見ていきましょう。

まずはやっぱりこれ。

智積院 障壁画「楓図」長谷川等伯

国宝障壁画収蔵庫にある作品の中でもひときわ目を引くのがこれ。
元々は障壁画だったものを火災から救い出した後、
二曲一双の屏風のように仕立て直した作品です。

かなり大きな作品で縦170cm以上、横6m近くもあります。
本物の楓の木より大きな作品です。
秀吉が建てさせた祥雲寺がいかに凄いお寺だったのか
この作品からだけでもうかがい知ること出来ます。


一部分を拡大してみました。
葉っぱの一枚一枚をきちんと描き分けています。
それでも若冲のような神経質的な感じは受けません。

とにかく大胆な一枚です。
中央の楓の幹の太いこと太いこと。巨人の身体のようです。
その太い幹の右側に先ほどの楓や草花。
そして左側には「フォンタナ」のような流水。

金地に白、緑、青、赤など様々な色を散りばめ荒々しいながら
絶妙のバランス感覚で超一級品に仕上げています。

金地院の「老松図」水墨画ながらこの作品とイメージが似ているそうです。
観たい…

代わってこちらは如何でしょう?

智積院 障壁画「桜図」長谷川久蔵

長谷川久蔵、等伯の大事な大事な息子です。
等伯の後継者として将来を嘱望されていた久蔵による作品。

お父さんの「楓図」に比べると控え目な桜の幹や枝ぶりは
繊細で可憐な印象を与えます。隣同士に展示してあるので
余計に見比べてしまいます。お父さんの作品と。


同じく桜の花の部分を拡大してみました。

お〜もこもこしています。桜の花が。
胡粉を用いてこれ描かれているそうです。
描かれているのは枝垂桜ですが花だけ見ると八重桜のようにも見えます。

等伯父さんの描いた「楓図」に比べて汚れをしらない
若々しい感性が素直に作品上に現れているのが分かります。
久蔵が25歳の若さで描いた作品だそうです。若い!!

ところがこの等伯の大事な跡取り息子の久蔵は
この作品を描いてすぐに急逝してしまいます。
享年26歳。

狩野派が全権を手中に収めていたこの時代
狩野派に対するカウンターとして登場した長谷川等伯。
元はこの寺の障壁画も狩野派に任されるはずだったものを
狩野永徳の死によって運よく舞い込んだこの仕事。

長谷川一派の今後の躍進の大きな跳躍のチャンスだった
この大仕事に全精力を傾けた取り組み「さぁこれからだ!」
という時の最愛の跡取り息子の死。

狩野派の陰謀?と穿った見方までしてしまいます。

夢追いびと等伯
「夢追いびと等伯」
三木 進一


さて、国宝障壁画収蔵庫には他にも長谷川派による
障壁画が何点か展示されています。

長谷川等伯のような大胆さは少し影をひそめてしまっています。
パターン化、装飾化が一世代違うだけで見て取れると以前
専門家の方のお話の中にありましたが、確かにその通りかもしれません。


智積院 障壁画「松に梅図


智積院 障壁画「松に立葵図

長谷川等伯―真にそれぞれの様を写すべし
「長谷川等伯―真にそれぞれの様を写すべし」 宮島 新一


国宝障壁画収蔵庫の隣ある金堂は昭和50年に建設された
とても新しく綺麗な建物です。

庭園を見渡せる畳敷きのお部屋には長谷川一門の
障壁画のレプリカがはめ込まれていました。


                 

これら障壁画を背中にし、畳に正座し眺めるお庭は
とても静かで時折池にポチャンと落ちる亀の水音が
耳に入ってくるくらいでした。(タウトが喜びそうですね)


そしてまた長谷川一門の諸行無常の響きも
耳を澄ますと遠くから聞こえてきそうでした。

さて、のんびりお庭を眺めていたらすっかり時間が経ってしまいました。
運転手さん、急いで下さい!萬亀楼まで!!自動車
お寺のパンフより
智積院の障壁画は、豊臣秀吉が3才で生命を閉じた実子鶴松の菩提の為に、文禄2年8月までに建立完成させた祥雲禅寺を装飾していたものである。人をして「都第一の寿」「京都第一の壮観」と云わしめたが、当時を偲ばせるのはこれらの金碧画群である。
作者は狩野派に抗して、豪放かつ繊細な画風で、絢欄豪華な桃山画壇に活躍した、長谷川等伯(1539−1610)とその一派の制作になる。中でも等伯父子の作品、楓・桜図は有名である。等伯の楓図は、画面中央に描かれた楓の幹や枝が、激しい動きに富んだ全体を統一している。日本の秋色をこれ程に生々と明るく絢燭に描いた類例はない。楓図は長男の久蔵25才の筆という。金と白を基調に日本の春欄漫の景を写しだし、そして蕾や若葉の優美さが全体に華麗な気品をそえている。
戦乱の世を抜け出た室町人の、平和への祈りと希望がこれらの障壁画の中に息吹いている様である。
智積院の庭園は、中国の盧山を形どって造られた利休好みの庭と伝えられており、数多い名勝庭園の中でも傑作の一つとして世に知られている。正面右側、石橋より奥の方は祥雲禅寺時代に造られたもので、桃山時代の特色である白然石のみを用い、刈込を主体とし、また庭の外にある大木をも借り、深山の中にあるような奥行のある、野性的な雄大さ、勇壮さを感じさせてくれる。滝の落ちている正面には、石組と植込とが交互に並び、洗練された美しさが築庭の極限を表現し、江戸時代好みの感じを与えてくれる。これは智積院第7世運敞僧正(江戸三大名墨家)によって修築されたものである。
その他 | permalink | comments(8) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

こんばんは

智積院は春にも秋にも素敵なお寺です。
障壁画のもこもこの桜がホントに綺麗で、可愛くて。
お寺では一日修行体験コースと言うのも開催されていましたが、生憎わたしは経験してません。←コンジョなし。

ここから少し上がれば、今度は河井寛次郎の記念館があります。いい感じの建物です。是非今度はそちらへも・・・
遊行七恵 | 2006/06/07 10:52 PM
@遊行七恵さん
こんばんは。
早速のコメントありがとうございます。

予定していなかったのですが
ここは大収穫でした。
等伯の新しい側面見ることできました。

久蔵の桜はほんと、もこもこしてていい感じでした。
桜と同じく儚い生涯でしたが。。。
合掌。
Tak管理人 | 2006/06/07 10:57 PM
いい収穫があって良かったですね♪日頃の行いがいいからでしょうネ(笑)
あの宝物館に私が行った時は、観客は私ひとりで、それこそ国宝を貸切したみたいでスゴク贅沢な気分でした(笑)

私が最後に智積院に行った時は、本堂の建替え工事で、内部に新たに坪庭とか石組みを敷設していた時期です。
でも、まだ数年前のことだから、内装はかなりきれいだったのでは…。

智積院の庭も美しいでしょう。季節によって庭は姿を変えるから、今度は別のにまた訪れることをお勧めいたします。

庭園好きの私は、京都じゅうのお寺の庭をライフワークのように見て回っておりますが、未だに完全踏破はおろか半分も見れておりません。なぜなら過半数が拝観禁止もしくは非公開なのです。(だから京都は奥が深いです)

智積院のそばにある妙法院なんかも普段は非公開、年に1回ぐらい公開されます。ここの庫裡の建築なんかも実に見応えあります。あと、そこから足を伸ばせば豊国神社とかもありましたね♪

シルフ | 2006/06/08 8:58 AM
@シルフさん
こんばんは。

日頃の行いは決して良くないのですが
良い人とめぐり合うこと多くいつも
サポートしてもらっています。感謝!

あのお部屋、解説用のボタンがあったので
押したらうるさいうるさい。
鑑賞には向きませんね、あの解説。

向き合い正座でもして心静かに
激しいタッチの作品と対峙したいものです。

ここもまた毎回訪れるスポットに加わりました。

京都の庭園見て回ったらそれこそ
フェルメールを観て周るより
時間と労力要りそうですね。
Tak管理人 | 2006/06/08 11:26 PM
智積院・・・とっても行きたい所です!
 まだおしりが青かった頃、留学生たち向けの歴史の授業で、安土桃山時代を担当したとき、「無個性じゃない、地味じゃない日本」を見てもらおうか、と思い立ち、なにか安土桃山の絢爛豪華な絵は??と図録などを見ていて、楓図を知りました。「松浦屏風」や、伝永徳の「檜図」の後にそれを見せて、もちろん留学生たちも唖然。休み時間にカラーコピーに群がってきました。人に訴えかける何かすごいものがあると思います。
 それにしても「禅寺」にあったとは! やっぱり日本人の常識を越えたことが起こる時代だったのでしょうか。
 ところで、tak 様、絵画に詳しいタクシーの運転手さんに、どうやって巡り会われたのでしょうか。偶然? それとも、もしかして、京都のタクシー業界ではそれぐらいは常識??
sato | 2006/06/09 1:22 PM
@satoさん
こんばんは。

タクシーの運転手さんは偶然です。
とある個人タクシーに一日お願いしたのですが、
その方がたまたま絵画がお好きな方でラッキーでした。
絵画だけでなく歴史、文化などなど立て板に水のように
すらすら何でも教えて下さいました。
名刺を頂いてきたのでお礼のお手紙書くつもりです。

長谷川等伯の「楓図」がダントツに素晴らしいです。
「桜図」はやっぱりまだ若い!
お父さんの勝ちです。

大きく迫力のある作品です。
是非今度京都に行かれるときは
智積院でこの長谷川一門の障壁画
たっぷりご覧になってきてください。
私もまた行きたいです。すでに。
Tak管理人 | 2006/06/11 1:02 AM
初めまして。
先月智積院に宿泊した者です。
見どころもいっぱいで、大満足な一泊でした。
ブログにて旅行記を書いていますが、こちらの記事を参考までご紹介させていただきました。
不都合がありましたらおっしゃってくださいね。

定期的に訪れたいくらい気に入りました。勤行は感動しますね。

以上よろしくお願いいたします。
sonica | 2009/07/25 9:55 PM
@sonicaさん
こんにちは。はじめまして。
コメントありがとうございます。

ブログ拝読させて頂きました。
襖絵ももう納められているようですね。
京都へは秋ごろまた行けたらと思っています。

>不都合がありましたらおっしゃってくださいね。
全くそんなこと御座いません。
どうぞご自由にこんな記事で良ければ。

今後とも宜しくお願い致します。
Tak管理人 | 2009/07/26 10:42 AM
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