青い日記帳 

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『蘆雪を殺す』

いきなり物騒な題名ですが、
れっきとした小説のタイトルです。

歴史小説家、司馬遼太郎さんの短編小説です。
文庫本だとこれに収録されています。

最後の伊賀者
「最後の伊賀者」
司馬 遼太郎

蘆雪とはプライス展の入口に展示してあった虎の絵を描いた長澤蘆雪の事。

長沢芦雪「猛虎図

また蘆雪は円山応挙の弟子でもあった人です。

以前、司馬遼太郎の歴史小説を史実として参考文献に
用いていた人がいましたが!?気持ちも分からないわけではありません。

それだけ、忠実っぽく、あたかも見聞きしてきたように書かれています。

少しだけご紹介。
あくまでも「小説」ですからね。

 去年の春、丹波亀山侯の家来だという男が訪ねてきて、
 「殿様が、どういうわけか足下の絵がおすきである」と、尊大な態度でいった。蘆雪は叩き出してやるかと思ったが、あやうく気持ちをおさえた。亀山松平家五万石からの注文というのはえがたい名誉である。
 「画題に注文がある。殿は三国志の玄徳劉備がおすきでな、檀渓越えの図をかいてもらいたい、とこう申される」
 「承知つかまつりました」
 「ついては」
と、米田外記はいった。「その下絵ができたら、四条の応挙殿にみせていただきたい」
 「応挙先生に?」
 「左様、お手前の師匠殿でござったな」
 「いかにも」
 蘆雪はむかむかしてきた。亀山侯は自分の技量をあやぶんで、師匠の応挙の修正をえさせようというのか。
 「さればいっそその玄徳図は師匠の応挙先生にたのまれればいかが」
 「いや、殿はお手前の絵がおすきじゃ」
 よくきくと下絵を応挙に見せよ、というのは亀山侯の指図ではなく、この米田外記という納戸役人の勝手な小知恵から出たものらしい。米田は絵がすきで、画壇にも精通している。あるいはこの役人は事大主義で、殿様が蘆雪などに絵をかかせることを好んでいなかったのであろう。
 察するところ、
 「いや、お言葉ながら、蘆雪は京で評判がわるく、虚喝漢などと取り沙汰されておりまする。応挙こそしかるべきかと存じまする」
ということぐらいは、殿様に申しあげたかもしれない。そこを殿様は「いや、蘆雪にこそかかせてみたい。ぜひ頼んで来よ」とおしてこの男を派遣したのであろう。


面白いでしょう〜〜
司馬さんの手にかかるとほんとタイムスリップして
その場に居合わせたかのような錯覚に陥ります。

この小説に書かれている芦雪のイメージ
この絵に何となく通ずるものがあります。


軍鶏図」長沢芦雪

因みにこの本には与謝蕪村の弟子、松村呉春を題材にした
『天明の絵師』も収められています。

『蘆雪を殺す』はこちらでも紹介されているそうです。
司馬遼太郎を歩く〈2〉
司馬遼太郎を歩く〈2〉
荒井 魏, 重里 徹也, 楠戸 義昭
司馬作品の舞台を訪ね、地元の方たちの話を聞き、日本の歴史と風土を考え、司馬文学の成り立ちに思いを馳せ、作品の読み解きを行う。


この小説読んでから芦雪や応挙の作品と
プライスコレクション展で向き合うと
また、違った感想を持てるかもしれませんね。
読書 | permalink | comments(6) | trackbacks(1)

この記事に対するコメント

 こんにちは。
 この「軍鶏図」はすごいですね。ガニマタでのしのし歩く姿は、鶏の皮を被ったおっさんにしか見えない。豪華な画材ばかりを使って鶏を描くどこぞの青物問屋の隠居に、対抗心を燃やした?
mizdesign | 2006/07/21 7:56 AM
こんにちは
わりと司馬さんには芸術家の話もありますよね。
特に短編に。『割って、城を』とか。
大阪弁で言う「けったい」な人間が闊歩する司馬ワールド、大好きです。
芦雪もケッタイなあまり、おっしょさんから破門食ろたんやろなぁ、と想像しております。

遊行七恵 | 2006/07/21 4:30 PM
> 以前、司馬遼太郎の歴史小説を史実として参考文献に
> 用いていた人がいましたが!?
日本史の論文にですか?
驚きです。

さて、「原寸美術館」の日本編がでました。
編者は千住博先生、企画・構成は、オリジナル(西洋編)と同じく結城昌子さん。(出版に当たっては、千住先生の講演会?もあったと思います。)

蘆雪は取り上げられていませんが、若冲は取り上げられています。
鼎 | 2006/07/21 11:33 PM
@mizdesignさん
こんばんは。

今日もじっくり観てきました。
芦雪の虎と鶏。
師匠の応挙に対する気持ちの
表れかもしれません。
めちゃめちゃ威張ってますね。

@遊行七恵さん
こんばんは。

司馬さんの短編をもう一度
おさらいしないといけないかもしれません。
昔ほど読まなくなってしまいました。
芦雪の死は謎ですよね。
客死。その死因は何だったのでしょう。
破門されて自殺とかまさかね。。。

@鼎さん
こんばんは。

某研究紀要で見かけました。
笑う以外ありませんでしたけどね。。。。

「原寸美術館」日本編
東博で立ち読みしました。
千住さんなのはイマイチ謎ですが
妥当な線なのでしょうかね。

欲しい本ばかりで困ってしまいます。
Tak管理人 | 2006/07/22 2:54 AM
Takさん、こんばんは
TBありがとうございます。
実はこの小説、私もブログで記事にしようかと思っていましたが、「先を越され」てしまいましたね(笑)
司馬さんのこの作品ですが、小説の中での蘆雪自身による作品の解釈=司馬さんの蘆雪作品に対する感想になっていて面白いです。(一方で「天明の絵師」で呉春を擁護しようとして、しきれなかったという司馬さんご自身の説明もおかしかったです。)

奈良の展覧会は良かったですよ〜
(私、Takさんはてっきり行かれたものだと思っていましたよ!!!行かれたら感想教えてくださいませ。)
アイレ | 2006/10/15 7:59 PM
@アイレさん
こんばんは。

奈良の展覧会羨ましいです。。。
行けないと思います。今の状態では。
指をくわえています。

「芦雪を殺す」は短編ながらとても
面白く読み応えがあります。
あの世界に引き込まれてしまうのは
やはり司馬さんの表現力のせいでしょうか。

よい機会ですから、また読み直してみますね。
Tak管理人 | 2006/10/16 11:49 PM
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応挙と芦雪(前期)−1 | 青色通信 | 2006/10/15 7:43 PM