青い日記帳 

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『芸術とスキャンダルの間』

毎月各出版社から新書の新刊が発売されると
どーしても数冊は買う破目になってしまいます。
その昔、新書といえば「岩波新書」だった時代と
打って変わって百花繚乱。書店の賑わいは驚くばかりです。

さてさて、今日はそんな新書本の中から
講談社現代新書より今月発売になったばかりのこの本をご紹介。
芸術とスキャンダルの間――戦後美術事件史
『芸術とスキャンダルの間――戦後美術事件史』 大島 一洋

帯には紹介文を兼ねてこんなことが書かれています。
世間を驚愕させた「美術事件」あなたはいくつ知っている?

・滝川太郎贋作事件 
国際的詐欺師・ルグロの手口
・謎の「佐伯祐三」
・陶芸界最大の醜聞「永仁の壺」
・「佐野乾山」騒動
・三越を揺るがした「ペルシアの秘宝」
・「ガンダーラ仏」をめぐるお粗末
・棟方志功の「板画」流出
・名画盗難と三億円強奪事件
・ロートレック「マルセル」の盗難
・昭和天皇コラージュ問題
・模型千円札裁判 ほか
目次は……
第1部 贋作編
 第1章 天才詐欺師・滝川太郎
 第2章 ルグロにだまされた国立西洋美術館
 第3章 謎の佐伯祐三現わる
 第4章 永仁の壺という捏造
 第5章 佐野乾山騒動
 第6章 北大路魯山人の怪
 第7章 三越事件と古代ペルシア秘宝展
 第8章 贋作を擁護した奈良博
 第9章 棟方志功には、なぜニセモノが多いのか
第2部 盗難・裁判編
 第10章 名画盗難と三億円強奪事件
 第11章 ロートレックの「マルセル」盗まる
 第12章 昭和天皇コラージュ版画騒動
 第13章 模型千円札裁判
 第14章 パロディに著作権の壁

この他、コラムも10本以上載せられていて、その中に今年話題になった
芸術選奨取り消し事件」について触れられています。

著者の大島一洋氏はマガジンハウス社で雑誌、書籍の編集に携わっていた方。
現在は独立されて、フリーの編集者&ライターをなさっているそうです。
美術畑専門のおエライさんが書いた堅苦しい文章ではなくとても読みやすい文章。
ただし、中身が薄っぺらなわけではありません。目次をご覧になっても分かるように
戦後美術事件史を総ざらえしたような豪華な内容を読み手の立場になって
書かれている私のような素人美術愛好家にとっては大変有り難い一冊です。

単行本としても立派に通用する内容の本が、昨今の新書ブームのおかげで
たったの760円で買えるのですから何ともこれまた有り難いことです。

ところで、上記の目次の中で赤字にしてある部分お気づきになったかと思います。
そう、あの有名なルグロ事件です!
<本文より>
ルグロ自身は贋作をしない。無名画家に贋作を描かせ、それをホンモノに仕立て上げていくのである。その手口は鑑定書や認証書を積み重ねていくという方法である。たとえば、ドランの贋作があるとする。これを鑑定人に見せ、ドラン作という鑑定書を書かせる。この場合、鑑定人は有名でなければならず、そのためルグロはパシッティというパリ裁判所公認の鑑定人を抱きこんだのである。さらに、人がよくて高齢で目がよく見えないドラン未亡人の元へ贋作をもっていき、ドランが描いたものであるという認証書を取りつける。当然それなりの謝礼は払っただろうが、結果から考えればたいした額ではない。鑑定書と認証書によって、贋作はだんだんホンモノになっていく。
因みに今年1月に発売になったこの新書本でも
やはりルグロ事件のことが取り上げられています。
迷宮の美術史 名画贋作
『迷宮の美術史 名画贋作』 岡部 昌幸
第2章 画商たちが作り上げた贋作事件(国立西洋美術館も巻き込んだルグロ事件の真相;大量の“ゴッホ”を生んだオットー・ヴァッカー事件;国内昭和最大の贋作スキャンダル 春峯庵事件)

で、一体ルグロ事件って何??
【ルグロ事件】
 昭和39(1964)年、東京上野の国立西洋美術館はドラン作《ロンドンの橋》を2232万円で、デュフィ作《アンジュ湾》を228万円で購入し、翌年にもモディリアーニ作《女の顔》を129万円で買った。しかし、贋作説が浮上して国会で追及された。昭和46(1971)年、文化庁と同美術館は3点とも「真作とするには疑わしい。今後一切展示しない」と発表した。この事件の加害者はフェルナン・ルグロという画商で、贋作者エミール・ド・ホーリーと共謀して、世界各国の美術館やコレクターに偽の近代絵画を売り飛ばしていた。1967年に国際逮捕状が出されるまで、偽の鑑定書と本物の認定書を巧妙に組み合わせて、少なくとも500点を超える作品を世界中にばらまいたのである。

もっと知りたい方はこちらの本で。
真贋のはざま―デュシャンから遺伝子まで
『真贋のはざま―デュシャンから遺伝子まで』 西野 嘉章

画商ルグロは贋作を描いたわけではありません。
エミール・ド・ホーリー(エルミア・ド・ホーリィ)に描かせたとされています。
彼こそが贋作者だった…っと彼本人がこの本の中で告白しています。(1969年)
贋作』クリフォード・アーヴィング/著 関口英男/訳

ただ、ルグロ自身はこれを真っ向から否定。
エミール・ド・ホーリーなる人物は知らない!と突っぱね
逆に『贋作』の著者、出版社を名誉毀損で訴えています。

それから月日は経ち、ルグロもホーリーもこの世を去った1988年。
また新たな「カミングアウト」があり世界中を驚かせました。

ルグロにはもう一人「仲間」がいました。
レアル・ルサールという人物です。
彼は『贋作への情熱―ルグロ事件の真相』という本を出し
その中で、自分こそがルグロの扱った贋作を描いた張本人だと告白したのです。


贋作への情熱―ルグロ事件の真相
『贋作への情熱―ルグロ事件の真相』 
レアル ルサール, R´eal Lessard, 鎌田 真由美

事件の真相を知る物がレアル・ルサールだけとなってしまった以上
ことの信憑性を疑う声も多くありますが、果たして。。。

レアル・ルサールは現在「画家」としてサイトまで立ち上げています。
そこには彼が描いた有名画家の作品に似た?作品が堂々と紹介されています。
こちらでご覧になってみて下さい。その腕前を!

おまけ その1
実は、私、レアル・ルサール本人と会ったことがあります

1995年にBunkamuraが主催して行われた
「対談とカクテル『贋作への情熱』をめぐる一夜」と銘打たれた
本人を交えてのカクテルパーティーに出席しました。

今以上に図々しかったので、当然サインももらいましたが、
その際に「得意のデュフィの絵も描いて!」と頼みました。
しばし考えた後、すらすら〜とサインペンで描いてくれました。
椰子の木が並ぶ海岸の絵でした。

おまけ その2
贋作画商ルグロに国立西洋美術館もまんまと騙されて
贋作を購入してしまったのは有名なお話。
レアル・ルサールのサイトにそっくりな?絵がありますのでご参考までに。
・デュフィ「アンジェ湾」
・ドラン「ロンドン橋」

西洋美術館の倉庫の奥に仕舞いこまれていて二度と表に出ることはないとか。。。

おまけ その3
贋作関連の本といえば、これ。
にせもの美術史―メトロポリタン美術館長と贋作者たちの頭脳戦
にせもの美術史―メトロポリタン美術館長と贋作者たちの頭脳戦
トマス ホーヴィング, Thomas Hoving, 雨沢 泰

内容も面白いですが
何と言っても表紙がフェルメールの…ですからね〜


冷静と情熱のあいだ
『冷静と情熱のあいだ』
江國 香織, 辻 仁成
読書 | permalink | comments(2) | trackbacks(1)

この記事に対するコメント

最近、黒川博行とか北森鴻などの小説を
読み始めたので、贋作ものに興味を持ち始めました。
この本も面白そうですね。さっそく買いに行きます。
一村雨 | 2006/08/25 8:59 AM
@一村雨さん
こんにちは。

私もまだつまみ読みしかしていませんが
これはお勧めできる一冊です。
文章もスラスラ読めます。
鞄の中に忍ばせておくにはもってこいです。
Tak管理人 | 2006/08/26 8:17 AM
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Takさんのブログで知った、講談社現代新書の一冊。窃盗、贋作、盗作など美術作品を巡って世間を賑わせた戦後の美術事件を取り上げた本。著者は元雑誌編集者だけあって、臨場感ある読み物になっていて、興味深かった。三越の古代ペルシア秘宝展のニセモノ事件など記憶に
芸術とスキャンダルの間 戦後美術事件史 大島一洋 | つまずく石も縁の端くれ | 2006/09/19 8:39 AM