青い日記帳 

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「川瀬巴水展」

ニューオータニ美術館で開催していた
「大正・昭和の風景版画家 川瀬巴水展」に行って来ました。



行こう行こうと思っていながらずるずると…
最終日の今日、滑り込みで観て来ました。

観る者を魅了する巴水の青。「ハスイブルー」とでも言うのでしょうか。
因みにこの文字の色は縹(はなだいろ)という青色です
Blue Dictionary(青色百科)

千葉市美術館で巴水の作品を観た時はとにかくこの青色に心奪われてしまい
描かれている風景や作品自体を鑑賞する余裕がありませんでした。
今回はそうならないように気持ち引き締めて?展覧会へ向かいました。

青色に心惹かれつつも、観ていると他の点がひとつ気になりました。
それはこの絵の中にも描かれているものです。
東京十二題 雪に暮るる寺島村

巴水の作品は江戸時代の浮世絵からの流れを当然ながら感じさせますが
大正・昭和時代にあって、江戸時代になかったもの。
電信柱、とりわけ電線がとても気になりました。

↑の「東京十二題 雪に暮るる寺島村」も中央に電柱がどーんと描かれています。
そして当然、電線も細い線で描かれています。
浮世絵にはなかった「横の線」の登場です。

それまで「縦の線」はありました。
例えば、広重の「大はしあたけの夕立

「縦の線」が降りしきる雨を見事に表現しています。

巴水の作品にもこれと同じく雨を描いた作品もあります。
河原子夜雨
でも、「横の線」・電線も描かれていたりもします。

日本の近代化を明治維新後とする一般的な捉え方で考えると
巴水の「横の線」が描かれた作品は明らかに近代的な作品。
モダンな作品と言うことが出来ると思います。

ここで現在、東京都近代美術館で開催中の展覧会
「モダン・パラダイス展」がふと頭に浮かんできました。

モダン=近代化の象徴としていくつもの事柄が提示できると思いますが
その中に必ず「電線」が含まれることは間違いないはずです。

すると気になるのは「モダン・パラダイス展」に出展されていた金村修の写真です。
金村は都市の風景を撮影している写真家さんですが
その特徴は電線への執拗なまでのこだわりです。

街中で気に入った風景があり写真に収めようとすると
電線がどうしても入ってしまい困ったなんて経験されたことありません?

普段は全然意識していない電線ですが、いざ気になりだすと
どうにも視界から外れてくれなくなります。目障りです。
ところがその邪魔モノの電線なくしては私たちの生活が
成り立たないことは重々承知はしているはずなのに。。。

金村の写真はその邪魔モノを意図的に写し込んでいます。
「モダン・パラダイス展」に金村の写真を展示した意図読めてきます。

Happiness is a Red before Exploding―金村修写真集
Happiness is a Red before Exploding―金村修写真集
金村 修

その象徴的である電線を巴水も意図的にかどうかは分かりませんが描いています。
今の我々の目には見えないもしくは邪魔にしか映らない電線も
描かれた当時はきっと「モダン」なものであったに違いありません。
だからこそ敢えて巴水は「横の線」を描いたのだと思います。

東京十二景 新大橋
雨の降る中、電燈の灯りが人力車を浮かび上がらせています。
鉄で出来た橋には路面電車のレールが敷設されているのが分かります。
そして空中には無数の「横の線」・電線が。。。

近美の学芸員さん、この絵今からでも「モダン・パラダイス展」に出しません?
きっとこの当時はまだ近代化は楽園への道だったはずですから。

夕暮れ巴水―林望の日本美憧憬
夕暮れ巴水―林望の日本美憧憬
川瀬 巴水, 林 望

この展覧会、以下を巡回するそうです。
9月9日(土)〜10月9日(月)
高浜市やきものの里 かわら美術館
http://www.kawara-museum.takahama.aichi.jp/

10月21日(土)〜11月19日(日)
南アルプス市立 春仙美術館
http://shunsen.art-museum.city.minami-alps.yamanashi.jp/gaiyo/ 

おまけ

あれこれ変てこな感想書きましたが、実はこれが一番気に入った作品です。
東京十二題 夜の新川

巴水の青、それに空には星の形をした星が描かれていました。
川瀬 巴水(1883-1957)は、幼少の頃より絵に関心を寄せて油彩画や日本画を学び、27歳で鏑木清方に師事します。その後、同門の伊東深水の影響を受けて版画への関心を深めると、大正7(1918)年に処女作となる塩原3部作を発表します。
巴水が版画制作を始めようとした時期、版画制作の方法として、2つの大きな潮流がありました。ひとつは、明治30年代以降に生じた"創作版画"です。これは、画家が制作の全ての工程を自ら行う、"自画・自刻・自摺"を主張するものです。それに対して、大正時代初期からは"新版画運動"が起こります。画家、彫師、摺師、版元が共同して版画を作り出すこの運動は、日本における伝統的な版画制作の工程を見直そうとするものでした。
巴水は、"新版画運動"の一員として、処女作以来、約40年にわたり、風景版画を生み出します。日本各地の取材にもとづき、四季折々の風景を描き続けた巴水の作品は、見るものの心に、郷愁や旅へのあこがれを誘います。
本展では、巴水作品のなかでも評価の高い関東大震災以前の作品を中心とする約150点を、蟻臉鬼、郷椋劼ら戦前、契鏝紊ら晩年の3部に分けて展覧し、巴水の画業を振り返ります。古きよき時代の日本の情景をお楽しみください。
展覧会 | permalink | comments(14) | trackbacks(6)

この記事に対するコメント

こんばんは
わ〜い Takさんも電線に目を留められましたね。
わたしも電線を描くのを見て、現在では邪魔者にされた電線も巴水の時代にはモダンの象徴でもあるのだわ、と思ったものです。
それで嬉しくなってたのですが、「同志よ・・・」という気持ちでますます嬉しいです。
遊行七恵 | 2006/09/03 10:20 PM
@遊行七恵さん
こんばんは。

同士!!嬉しいです。
気になりますよね、我々には。
でもきっと当時はこれ描くことが
モダンだったのでしょうね。
それにしても日本は電線天国ですね。
Tak管理人 | 2006/09/03 10:28 PM
電信柱・・なるほどと思いつつ拝読いたしました。
そのような視点で観ていくとおもしろいですよね。
そういえば「月夜のでんしんばしら」(宮沢賢治)というお話もありました。
tsukinoha | 2006/09/04 5:48 AM
電線も電柱もすっかり巴水の作品の風景になじんで
当たり前のように感じていました。
新大橋の路面電車と人力車の共存には意識が行きましたが
電線までは気づきませんでした。
いろいろな発見があって面白いですね。
参考になって嬉しいです。
一村雨 | 2006/09/04 7:34 AM
なかなかいい展覧会だったようですね^^。

私は東京大丸の「天地水 月光浴」を観てきました。
幻想的な蒼い世界にまだ魅入られてます(笑)。
shamon | 2006/09/04 9:09 PM
@tsukinohaさん
こんばんは。
TBありがとうございます。

電線が観ている最中異常に気になったもので。。。
モダン・パラダイス展の影響ですね。
賢治いいですね〜
絵も描いていますよね!

@一村雨さん
こんばんは。
TBありがとうございます。

普段自分も意識して観ていないので
視界には入っていても気がつかないんですよね。
それがいざ気になりだすともううるさいくらい。
発見面白いです!
ギリギリで行って良かったです。
今度、ご一緒できるといいですね。

@shamonさん
こんばんは。

秋は魅力的な展覧会目白押しですね。
身体いくつあっても足りません。

それに仕事も・・・
トホホです。
月光浴は評判いいですよね!
Tak管理人 | 2006/09/04 10:12 PM
時、すでに遅し

ここ、数年、良質な版画展に恵まれましたが、川瀬巴水展は見のがしました。
最近、アンテナ張っていないので、後の祭りが多いです。

ところで、作品はみんな縦長でしょうか?
鼎 | 2006/09/04 11:10 PM
@鼎さん
こんばんは。

縦長がメインでしたが
横長も何点かありました。
初期から晩年まで。

絶筆の平泉の版画は大変印象的でした。
Tak管理人 | 2006/09/06 8:50 PM
どうも、こんばんは、初めて書き込まさせていただきます。
なんだか自分の日記はとてもタイムリーだったみたいですね?(笑)

もう、早く見たくてうずうずしてます。
なにしろ新版画自体、見るのが初めてです。

電柱ってもしかすると、というか近い将来なくなりそうですよね。
だとすると今は見なれて邪魔な電柱もいずれは
時代を感じさせる風物になるのでしょうか…
ナムル | 2006/09/07 12:26 AM
こんばんは。Takさんもご覧になられましたか。

電線、仰る通り上手くまとめていましたよね。
今では何かと邪魔もの扱いされていますが、
巴水版画ではそれが画面にリズムを与えていたようです。
縦線の妙ですよね。

>夜の新川

私もそれ大好きです!
朧げに照る明かりが素敵ですよね!
はろるど | 2006/09/07 12:48 AM
私も《夜の新川》が一番気に入りました。前期・後期を通してのお気に入りは↓です。
http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/JA061.htm#060805
とら | 2006/09/07 8:27 AM
@ナムルさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

良かったですよ〜純粋に。
私ひねくれているので
電線ばかり気になりましたが
観るべきところは沢山あります。
是非!!

電線って中々なくなりそうにないですね。

@はろるどさん
こんばんは。

木々では表現しきれない
単純な縦線が電柱で表されていました。
リズム感確かにでてきますね。
千葉市美術館で広重展開催しているので
巴水の記憶がまだ残っているうちに
観てきたいと思っていますが、中々。。。

@とらさん
こんばんは。

前期は行けなかったので「市川」を
見られなかったのが残念です。
「こま形河岸」面白い構図ですね。
Tak管理人 | 2006/09/07 11:03 PM
姫路での川瀬巴水展の巡回展がないか知りたくて調べてたら、
Takさんのところに辿り着きました。
もしかしてこの展覧会の巡回かもしれないと思って
ブログで紹介させて頂きました。

2年前には巴水を知らなかった我が身が恨めしいです。
観たかった・・・。
m25 | 2008/09/30 11:45 PM
@m25さん
こんばんは。

巴水は江戸博が結構持ってますし
版画ですからまたいづれか
どこかで展覧会やるでしょう。
千葉市美術館などでに
ちょこちょこ出されています。

待てば必ずご覧になれます!
Tak管理人 | 2008/10/03 8:14 PM
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