青い日記帳 

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「化け物の文化誌展」

国立科学博物館で開催中の
「化け物の文化誌展−化け物に注がれた科学の目」に行って来ました。



河童や天狗のミイラが展示されていました

「そんなバカな!そんなの実在するわけないじゃん!!」と
思っちゃった方は少し寂しい想像力の乏しい人かもしれません。

現代の妖怪研究の第一人者、小松和彦氏は著書の中でこう述べています。
妖怪学新考―妖怪からみる日本人の心
「妖怪学新考―妖怪からみる日本人の心」 小松 和彦
 科学的・合理的精神を身につけて日常生活を送るのが好ましい人間だとする、妖怪や迷信を信じない人たちから見ると、若い女性の精神はまだ「原始的」で「呪術的」、「非合理的」段階にある、ということになり、子供も一定の時期はそういう段階にある、ということになるのかもしれない。しかし、人間を幸福にするはずであった近代の科学文明・合理主義が頂点にまで到達したという現代において、多くの人々がその息苦しさ、精神生活の「貧しさ」(精神的疲労)を感じ、将来に漠然とした「不安」を抱いているということを思うと、逆に「原始的」とか「呪術的」とか「迷信」といったレッテルを貼って排除してきたものの中に、むしろ人間の精神にとって大切なものが含まれているとも言えるのかもしれない。だとすれば、むしろ妖怪を登場させる若い女性や子供たちの精神活動のほうが、人間らしく心が豊かであるということにもなるだろう。少なくとも、画一化してしまった物質文明の中で、妖怪の名を借りて想像力を膨らませている彼らの生活が、私にはとても人間的に思えてならないのだ。

また、この展覧会のチラシには明治生まれの天才、寺田寅彦の言葉を借りながらこう記されています。
「昔の化け物は昔の人にはちゃんとした事実であったのである。」(寺田寅彦「化け物の進化」より)
河童、天狗、龍、麒麟、鵺(ヌエ)・・・。かつての日本人にとって、「彼ら」は実際に存在する生き物でした。
しかし明治近代化の中で、「彼ら」は伝承の彼方に置かれました。
今再び、科学の目から化け物に光を当てます。
この展覧会を「くだらない」と一蹴してしまうことは容易です。
でもそれではあまりにも寂しい。
そういう人は「トトロ」とか観ても全然面白くないのでしょうね。
あれだって化け物ですから。
ネコバスにも乗れません。絶対に。
となりのトトロ ふかふかネコバス M
となりのトトロ ネコバス

寺田寅彦の「化け物の進化」は幸いにもネット上で全文を読むことができます。
「化け物の進化」(青空文庫)
しびれちゃいます。お時間ある時に是非。

展覧会会場は二つに分かれています。
第二会場の「化け物の進化」では
寺田寅彦はじめ、柳田國男などの化け物研究を窺い知ることができます。
化け物は日本の近代化にふさわしくないとの考えから研究を進めた
井上円了なども混じって紹介されていました。

さて、さてお待ちかね。場所を第一会場へ。。。


お待たせ致しました。化け物、妖怪大集合です!!

人魚のミイラ

人魚のミイラ

河童の手

天狗のミイラ

偶然か故意か分かりませんが科学博物館では現在
特別展『大英博物館 ミイラと古代エジプト展』を開催しています。

「化け物の文化誌展」の方が何百倍も面白いです。
ここは想像力の宝庫です。

想像力に欠けた人たちが「ミイラバーチャルシアター」見て
喜んでいる姿は滑稽で仕方がありません。

「化け物」信じられない人。「化け物」見て楽しめない人。「化け物」真っ向から否定する人。つまり想像力の欠如した人には全く面白くない展覧会でしょう。

江戸の闇・魔界めぐり―怨霊スターと怪異伝説
「江戸の闇・魔界めぐり―怨霊スターと怪異伝説」 岡崎 柾男


最後にもう一度、寺田寅彦の文章をご紹介して終りにします。

 ほんとうにすぐれた理論物理学者の論文の中には、真に東洋画特に南画中の神品を連想させるものがある。一見いかに粗略でしかも天然を勝手にゆがめて描いてあるようでも、そこにつかまれてあり表現されてあるものは生きた天然の奥底に隠れた生きた魂である。こういう理論はいわゆるfecundな理論でありそれに花が咲き実を結んで人間の文化に何物かを寄与する。
 理想芸術でもすぐれた南画まで行けば科学的にも立派であるように理論物理学もいいものになるとやはり芸術的にも美しい。
 純粋な実験物理学者は写実主義の芸術家と似通った点がある。自分の目で自分の前の むき出しの天然を観察しなければならない。それが第一義でありまた最大の難事であるのに、われわれの目は伝統に目かくしされ、オーソリティーの光に眩惑されて、天然のありのままの姿を見失いやすい。現在目の前に非常におもしろい現象が現われていても、それが権威の文献に現われてない事であると、それはたぶんつまらない第二義の事がらのように思われて永久に見のがされてしまう。われわれの目はただ西洋のえらい大家の持ち扱い古した、かびのはえた月並みの現象にのみ目を奪われる。そして征服者の大軍の通り去った野に落ちちらばった弾殻を拾うような仕事に甘んじると同じような事になりがちである。
 写実画派の後裔の多数はただ祖先の目を通して以外に天然を見ない。元祖の選んだ題材以外の天然を写すものは異端者であり反逆者である。
 向日葵の花を見ようとするとわれわれの目にはすぐヴァン・ゴーホの投げた強い伝統の光の目つぶしが飛んでくる。この光を青白くさせるだけの強い光を自分自身の内部から発射して、そうして自分自身の向日葵を創造する事の困難を思うてみる。それはまさにおそらくあらゆる科学の探究に従事するものの感ずる困難と同種類のものでなければならない。
 『向日葵』

おまけ

少し前にハマった京極夏彦氏のネタ元は小松氏のこの本です。

憑霊信仰論―妖怪研究への試み
「憑霊信仰論―妖怪研究への試み」 小松 和彦


その正体は?上野で日本の「化け物」展
 東京・上野の国立科学博物館で、日本各地に伝わる「化け物」を一挙に集めた展示会が開かれています。
 古くから伝わる人魚のミイラ。果たして本物なのでしょうか。天狗のミイラ。山伏信仰などと結びついて語り継がれる天狗伝説。江戸末期に八戸藩南部家が所蔵していたと言います。このミイラに動物学者や植物学者などが初めて科学のメスを入れました。その正体はいかに? なんと動物の骨などによる模造品であることが判明しました。
 「猫の下あごに、頭の部分は造形して、胴体はヤマシギという鳥ですね、よくフランス料理に使う・・・」(国立科学博物館・鈴木一義主任研究員)
 2つの顔を持った不気味な人魚のミイラ。農芸博物館創設者が個人所有していたものです。これは本物なのでしょうか?
 「完全に作りもので、明るく発色しているのは針金ですね。この人魚は、後ろの部分は完全に魚を使っているんじゃないでしょうか。前の部分はおそらく木製・・・」(国立科学博物館・鈴木一義主任研究員)
 各地に伝わる河童伝説。今回、はじめて寺を出て公開された河童の手。自然との共存の中で生まれた伝説の生き物達。本物である可能性は十分あると鈴木さんは話します。
展覧会 | permalink | comments(16) | trackbacks(7)

この記事に対するコメント

こんにちは
行きたくて仕方ない展覧会ですが、日時がなくて諦めてます。基本的にオバケ大好き少女・継続中なので、こういう展覧会を落とすのはつらいです(泣)
何年前か大丸でオバケの展覧会があり、メッチャ喜んだものです。
人魚のミイラも河童の皿も見ました。
子供の頃には宝塚ファミリーランドで毎夏『水木しげるのオバケの世界』を楽しんだことがノスタルジィ・・・
関西では割とオバケ系の展覧会が多いのでそのたびに出かけますが、科学博物館で開催する、というところがミソですね。
見世物小屋とオバケ屋敷がかかれば飛んでゆく遊行でした。

遊行七恵 | 2006/10/26 3:03 PM
@遊行七恵さん
こんばんは。

私が子供のころはまだ化け物小屋が
行楽地などにあってドキドキしながら
見た記憶があります。
今の子にはそういうものに対して
どんなリアクション示すのでしょうか。
「くだらない」とか一蹴されてしまいそうです。

科学博物館、今「南方熊楠」の展示も行っています。
こちらもめちゃくちゃ関心があります。
何とか時間つくって見て来たいと思います。
記念館も行ってみたいです。
Tak管理人 | 2006/10/26 8:49 PM
こんばんは
神戸の先の舞子公園にある孫文記念館の移情閣で『孫文と南方熊楠』展があるので、11月にそちらに参ります。
かなり楽しみです。

お風邪を引かれたようですね、お大事になさってください。
遊行七恵 | 2006/10/26 11:56 PM
私は今科博の中で働いているので、お化け展も
準備段階からちょくちょく見に行ってました。
はっきり言って私もミイラよりこちらの方が
面白しろいと思います。
毎日、遠足で訪れる小学生が わ〜  きゃ〜
言いながら楽しそうに見ています。
みちよ | 2006/10/27 2:53 PM
Takさん
私のほうはとても短いコメントですが↓
http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/JA062.htm#061020b
とら | 2006/10/27 8:59 PM
@遊行七恵さん
こんばんは。

『孫文と南方熊楠』展も面白そうですね〜
組みあわせがなんともいえません。
レポ楽しみにしています。

風邪ひいたので今日はまっすぐ帰宅しました。。。
寂しい金曜日です。

@みちよさん
こんばんは。

そうだったのですか〜
先日アンケート答えてきましたよ!!
博物館の方がとても親切にして下さいました。
ご一緒したとらさんも大変満足されていました。

コワイコワイお化けの話は子供たち大好きですよね。
今も昔も。

@とらさん
こんばんは。

やはり寺田寅彦が一番光ってましたね。
含蓄ある言葉、「科学者」たちに聞かせてやりたいです。
Tak管理人 | 2006/10/28 12:02 AM
こんにちは^^。棟方展へのTBありがとうございました。

「大エルミタージュ」より
こっちのほうが私向きかも(笑)。
想像力でないものを作り出すって素敵ですよね。
shamon | 2006/10/28 12:39 PM
@shamonさん
こんばんは。

TBが中々上手くいかずいつも
ご迷惑おかけしています。

とらさんも「大エルミタージュ」より
こちらの方が面白かったと仰っていました。
是非!!
Tak管理人 | 2006/10/30 12:11 AM
「化け物の文化史」と「南方熊楠」見てきました。
しかも、今日は文化の日なので科博の常設展は「無料」
タダでこんなに充実した展示を見てしまうと、
なんだか申し訳なくなってしまいます。
どちらも実に深く、広い内容でした。ブラボー、科博。
菊花 | 2006/11/03 10:05 PM
@菊花さん
こんばんは。

おーーーダブルでご覧になってきましたか!
私は南方は後日へまわしました。
疲れてしまうので。。インパクトありすぎて。
私も文化の日でタダで横浜美術館の展覧会
観て来てしまいました。
お礼に?一気に帰ってから記事アップしました。
疲れた〜
Tak管理人 | 2006/11/03 11:37 PM
こんばんは。
やっと見てきました、「化け物の文化誌」展。面白かった〜。TBさせていただきました。
南方熊楠展も激しく気になりましたが、時間の都合上後日ということで。こちらも楽しみです。
| 2006/11/05 9:06 PM
@鴨さん
こんばんは。
TBありがとうございます。

私も南方熊楠は後回しにしました。
これはこれで大変興味があるので
ゆっくりじっくり見てきたいと思っています。

またこういった企画展示やって欲しいですね。
アンケートにも書いてきました。
Tak管理人 | 2006/11/05 10:34 PM
はじめまして!
TB&コメントをありがとうございました。
(ちょびさんのところで記事を拝見し、
TBさせていただきました)

妖怪の存在は、日本人の精神世界を語る時に
かかせないと思います。展示されていた
『百鬼夜行図』を見ても、ユーモラスな反面、
当時の世相や文化の成熟度がわかります。

人文コーナーではやはり寺田さんがの言葉が、
光っていましたが、色黒だったので黒神童と
呼ばれていたっていうところに、ちょっと(笑)。

熊楠も是非お出かけください。
ご子息のエピソードに、心が痛くなりました。
また、粘菌ワールドで瞠目しました!
D坂 | 2006/11/11 12:00 PM
@D坂さん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

寺田寅彦、天才です!!
凄いです。惚れ直しました。

妖怪もまた良いです。
京極夏彦さんの新刊
買ったはいいですが
あまりの厚さにたじろいでいます。

熊楠も行きます。
反芻できてしまう稀な天才です。

今後ともどうぞよろしくお願い致します。
Tak管理人 | 2006/11/13 12:43 AM
Takさん、こんばんは
遅ればせながらTBさせていただきました。
私が科博に行った時には、皆楽しそうに展示を見てましたよ〜
きっとこういう人たちは化け物との共存ができるのではないかと思いまた。
そういえば、展示のなかで平賀源内が持ち込まれた化け物の作りものをてきとーに「本物」認定してしまうところがおかしかったです。
アイレ | 2006/11/13 9:20 PM
@アイレさん
こんばんは。
TBありがとうございます。

何処を見てもおかしくて
興味のあるものばかりでした。
こういう企画展どんどんやって欲しいですね。
スポンサーとはつけずに。

昔、怖くて入れなかった「化け物小屋」
今でも時折思い出します。
合理化されているような社会でも
非合理的なものいくらでもありますね。
Tak管理人 | 2006/11/13 11:14 PM
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