青い日記帳 

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曽野綾子『ブリューゲルの家族』

確か随分前にブリューゲルの諺の世界を元にした一風変った小説を読んだことがあったこと思い出し本棚の隅々まで探しました。

文庫本はひとつの棚に幾重にも重ねて入れてあるので、いざ探すとなると一苦労です。ただし一度買った本は(雑誌を除き)捨てることはないので根気よく探し、やっと見つけ出しました。

曽野綾子『ブリューゲルの家族』(光文社文庫)

1997年10月20日初版発行となっていますので今から10年も前。。。

当時どういういきさつでこの本を買い求めたのか全く覚えていません。
曽野綾子さんの著書もこれ一冊しか持っていませんのでやはり
「ブリューゲル」という画家の名前に惹かれてのことなのでしょう。
ただ10年前私がブリューゲルに興味を持っていたわけでもないので
単なるいつもの勢いで購入し読み散らかした一冊なのでしょう。

しかし、そんな一冊を今でも覚えているのは
この小説がちょっと変ったものだったからです。

この本の裏表紙にはこんな解説が書かれています。
 著者に届いた女性読者からの手紙。そこには、偶然見かけたブリューゲルの絵の中に障害を持つ我が子の姿を見出したことが綴られていた。世間体ばかり気にする無理解な夫、そして、天使のような息子・円との生活。ユーモラスで、ときには残酷な構図と現実を重ね合わせながら、手紙は続いていく……。
 名画に導かれながら真の家族の幸福に出会う一女性の心の旅。


ねっ?少し変った「小説」ですよね。
まるでブリューゲルの絵の世界のように。

読んだ当時は気が付かなかったのですが
この一風変った小説はまさにブリューゲルの作品そのものではないかと思います。

第一章から最終章(二十五章)までのタイトルです。
日々を籠で運び出す
指の上の地球
バベルの塔
十字架を担う
絞首台の上のかささぎ
麦の収穫
死の勝利
謝肉祭と四旬節の戦い
盲人の寓話
ベツレヘムの人口調査
豚の前に薔薇を撤く
足なえた人たち
雪景色の中の猟師たち
人間嫌い
洗礼者ヨハネの説教
東方の三博士の礼拝
キリストと、姦淫を犯した女
イカロスの墜落の描かれている風景
種まく人の警えの描かれている風景
二匹の猿
気狂いメッグ
農夫と烏の巣探し
子供の遊戯
聖母の死
エジプトヘの避難が描かれている風景
例えば、第二章の「指の上の地球」とは
ブリューゲルのこの作品の一部に描かれている人物を指しています。
 
↑の作品の右下部分に↓この「親指の上で地球を廻す」人がいるの分かりますか?      ネーデルランドの諺」 より

得意そうな顔つきの貴族のようなこの人物は「自分の思うままに人や社会を扱える」ことを表しているそうです。
この絵を紹介しながら曽野さんは短い短い小説を作り上げていっています。

また第十八章の「イカロスの墜落の描かれている風景」は現在、国立西洋美術館で開催している「ベルギー王立美術館展」にも展示されている「イカロスの墜落」を扱った章です。さらりと真贋論争に触れているのも愉快です。

この本、既に一般の書店では扱っていませんがamazonにはありました。
勿論新刊では販売されていませんが、古本で1円で買えるそうです。

ブリューゲルの家族―幸せをさがす二十五の手紙
ブリューゲルの家族―幸せをさがす二十五の手紙
曽野 綾子

どうしてこんな昔の本を思い出したのかというと…
今読んでいる本の一冊がこれだからです。

ブリューゲル・さかさまの世界―子どもの遊び;ネーデルランドのことわざ;バベルの塔
ブリューゲル・さかさまの世界―子どもの遊び;ネーデルランドのことわざ;バベルの塔
ヤーノシュ カシュ, 早稲田 みか


勿論、この本にもちゃんと「親指の上で地球を廻す」人について説明されています。



また、以前もちょっと触れましたが
「イカロスの墜落」についての真贋論争にけりをつける
大変優れた文章が先月号の「芸術新潮」に掲載されています。
失われたブリューゲル
ベルギー王立美術館の《イカロスの墜落》は誰が描いたのか 
 森洋子
これは必読です。
芸術新潮 2006年 10月号 [雑誌]
芸術新潮 2006年 10月号 [雑誌]

読書 | permalink | comments(8) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

Takさん、おはようございます。
曽野綾子の「ブリューゲルの家族」。懐かしいですね。本棚にありました。たしか家内が買ってきたものです。
早速、第18章「イカロスの墜落・・・」を読んでみました。
『萎んだレモンみたいな太陽』と書いてあるのを見つけました。実はわたしもはじめこれが太陽?と思ったのです。
とら | 2006/10/26 9:02 AM
Takさん、こんにちは。
いつも興味深く拝見しています。
私は大学生なのですが、実は森洋子先に去年美術史を教わっていました。
今月の芸術新潮、目を通したはずなのですがなぜか気付かず(´д`;)
不肖の教え子です。森先生はブリューゲル研究の第一人者で、六本木ヒルズの森ビルを建てた、森一族のご令嬢であらせられます(笑)
tiro | 2006/10/26 11:30 AM
@とらさん
こんばんは。

とらさんのお宅にもありましたか。
不思議な内容の小説だな〜と
当時読んだとき感想を持ったと記憶しています。

あらためて読み直してみると
面白いとこと沢山ありますね。
今、かみさんが読んでいます。

@tiroさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

>森洋子先に去年美術史を教わっていました。
羨ましいです!
大学時代は美術にはほとんど興味関心がなかったもので。。。
今になって授業を受けたいと思うことしばしばあります。

森ビルの森さんのお嬢様なのですか〜
それは知りませんでした。

今後とも宜しくお願い致します。
Tak管理人 | 2006/10/26 8:45 PM
こんばんは。
曾野綾子さんの本は、かなりの冊数を読んでいる「曽野フリーク」です。この本は、出た後すぐに読んだ記憶があります。曽野さんの作品の根幹のにあり神と人間の関わりを、短い物語で描いた珠玉の短編集ですね。Takさんの記事を拝見して、久しぶりに読みたくなりました。どこのしまい込んでいるのか、探してみなければ。
自由なランナー | 2006/10/26 9:26 PM
すみません。愚かな打ち間違えです。
「作品の根幹のにあり」→「作品の根幹にある」
自由なランナー | 2006/10/26 9:28 PM
なんだかとても面白そうな小説ですね。読んでみたくなりました。
もう絶版なんですね?
いつか、日本で探してみよう。
他にも絵を話のキーポイントにした本ってどのくらいあるんでしょうね?
seedsbook | 2006/10/27 12:44 AM
こんばんは。
早速1円でゲットさせてもらいました。ラッキーです。

ブリューゲルの描く群衆の中に、自分に似た人物を見つけたら、嫌なもの見たなという気分になりそうです。
kyou | 2006/10/27 12:53 AM
@自由なランナーさん
こんばんは。

曽野さんのファンでいらしたのですね。
こちらの本も読まれたことあるとは!
流石です。
私は曽野さんの本はこれしか持っていませんが
これを契機にもう数冊読んでみようと思っています。

@seedsbookさん
こんばんは。

絶版のようです。
すぐに文庫本は消えてしまいます。
イタリアは絶版制度がないと聞きました。
ドイツはどうなのでしょう。
本はどうしても捨てられません。

@kyouさん
こんばんは。

1円に送料ならとってもお得ですよね。
古本屋さん探すのも一苦労しますし。

ちょっと変った内容の本でしたが
是非読まれたら記事にしてみて下さい。
Tak管理人 | 2006/10/27 11:56 PM
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