青い日記帳 

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「石内都:mother's」展

東京都写真美術館で5日まで開催していた
「石内都:mother's」展に行って来ました。



全く予備知識もなく観に行った写真展では、はからずとも二つの感想を結果として持つことになりました。

mother'sとタイトルが示す通り
この写真展は「母親」を撮影した写真展でした。

それも写真家自身の実際の母親の写真から構成されているものでした。
 「mother's」と題された作品は、石内都が波乱の半生を背負った「母」をひとりの「女」としてとらえ、身につけていた衣類や、遺品などから織りなされるシリーズです。使いかけの口紅、髪の毛のついた櫛、入れ歯や鬘、肌の表面のクローズアップ・・・
 

84歳でお亡くなりになった石内氏の実の母親の遺品を中心に撮影された作品は、観るのもに、えも言われぬザラザラした感覚を与えます。

石内氏の母親のものとは頭では分かっていても、どうしても作品と対峙するとそこから自分の母親のイメージが浮かび上がってきてしまいます。

見知らぬ街の風景や鳥や花の写真を観る時には感じられない「葛藤」が生じます。

昨年、ヴェネツィア・ビエンナーレの大きな会場でこれらの作品が展示された際に他の作品に比べ足を止めて見入る鑑賞者が多かったことも肯けます。

国は違えども「母親」に抱く思慕の念は誰でも同じものがあるのでしょう。

さて、さて、↑に紹介したチラシを含めた三枚の作品などを観る分には特に嫌な印象は受けななかったのですが、作品の中には多くシュミーズやガードルなどお母様が身につけていた下着なども作品として展示されていました。



正直、はじめにこれらを観た時は嫌悪感に似た感情を抱いてしまいました。
それは先ほども書いた通り、石内氏の母親の写真でありながら
そこに自分の母親を重ね合わせて観ているからに他なりません。

お亡くなりになる直前に撮られたという裸体など正視に耐えませんでした。
えも言われぬザラザラした感覚が増幅し拒絶反応を起こしそうになりました。

私にはまだ母親がいます。車で数時間ほど離れた実家に父親と暮らしています。
自分の中での母親はいつまでも若くて美しくそして優しい存在です。
ただし還暦を既に過ぎた母親の手は自分のイメージとは程遠く皺でいっぱいです。
勿論、手だけではありません、顔だって。。。

本当は目を背けてはいけない現実の姿そのままなのでしょうが
なるべくなら「見たくない現実」だってあるはずです。
それの最たるものが男から見た年老いた母の姿です。

以上が石内氏のことについて何にも知らない素人が観たこの写真展の感想です。



ところが

ひょんなことから会場で石内氏にお会いしその「第一の感想」が
私の思い違いによるものだということが発覚しました。

会場内に流れていた映像作品のBGMに「G線上のアリア」が使われていました。
狭い会場だったので何処にいてのその音は耳に心地好く届いてきました。

これは誰の選曲なのか係の方に尋ねると、その日会場にいらしていた
石内氏ご自身に学芸員の方がわざわざ聞きに行って下さったのです。

「映像作品のイメージに合わせて作者自身が選曲した。」との回答でした。
それよりも驚いたのは会場内にいらした石内氏ご自身です。

どうしてそんな思い込みをしたのか謎ですが、私が、
男性と思っていた石内氏は実は女性だったのです
ファーストネームが「都」ですから気がつかない方がおかしいのですが…

男性が自分の母親を撮影した」と思っていた作品は、
女性が自分の母親を撮影した」ものだったわけです。

青天の霹靂。こうなると、解釈がまるっきり変ってきてしまいます。

もう一度始めから作品を見直しました。一人の女性が母親へのオマージュとして撮影した作品がそこには展示されていました。

勘違いしながら鑑賞した一回目とは違い
もう今度は決してザラザラした違和感が、
心に生じてくることはありませんでした。

キズアト
「キズアト」 石内 都

映像コーナーの一番後ろの席で作品をご覧になっていらっしゃった石内氏に軽く会釈をし会場を後にしました。

マザーズ2000‐2005未来の刻印
マザーズ2000‐2005未来の刻印
石内 都


たまには実家に帰らなくてはいけません。
母親孝行出来るうちにしておかくちゃ!


美術館を出ると、恵比寿ガーデンプレイスはもう、クリスマスのイルミネーションに彩られていました。






東京都写真美術館では、昨年第51回を迎えたヴェネツィア・ビエンナーレに参加し、日本館で催された展覧会の凱旋を記念して、「石内都:mother's」展を開催いたします。 石内都は「絶唱・横須賀ストーリー」や「APARTMENT」で注目され、79年、第4回木村伊兵衛賞を受賞し、その後、ニューヨーク近代美術館等に作品が収蔵、国内外で展覧会が開催されるなど国際的に活躍する日本を代表する写真家です。本年は「日本写真協会賞作家賞」も受賞いたしました。 「mother's」と題された作品は、石内都が波乱の半生を背負った「母」をひとりの「女」としてとらえ、身につけていた衣類や、遺品などから織りなされるシリーズです。使いかけの口紅、髪の毛のついた櫛、入れ歯や鬘、肌の表面のクローズアップ・・・。母が遺した様々な「もの」を丁寧に見ることによって、彼女は確執が深かったという母との関係を静かに見つめ、「想像以上の悲しみ」を噛み締めるように確認しています。84歳の生を生き抜いた一人の自立した現代女性に捧げたオマージュです。現代美術が現代の社会を反映し、半歩先の未来を予感させるものだとしたら、日本を代表する石内都の作品は、変化の著しい現代日本女性の意識を扱った、優れた作品であるといえるでしょう。未発表作と新作の映像作品も加えた「mother's」完全版を、是非、ご高覧ください。
展覧会 | permalink | comments(9) | trackbacks(1)

この記事に対するコメント

見に行こうと思っていて、見逃してしまった
石内都:mother's しくじりました。
写真集とかでてるんでしょうかね?

男性から見る母像と
女性から見る母像は
やっぱり違ってきますよね、男性から見る母は
聖母のようであり、女性から見る母親は
良き友であり、最初のライバルですもの。
みちよ | 2006/11/08 9:15 AM
こんにちは。私もこの展覧会にいって、感想をブログに書きました。
こういうコンセプトがたてられる写真家さんって、なかなかいないです。
ウインバレー | 2006/11/08 7:58 PM
@みちよさん
こんばんは。

写真集でていますよ。
記事の下のほうにあるやつがそうです。

展覧会自体は作品数それほど多くなかったので
写真集などでじっくり観るのもいいかもしれません。

そうか〜女性からみるとライバルなのですね!
その視点では見られなかったです。
アドバイスありがとうございます。

@ウインバレーさん
こんばんは。

女性と知らずに見てしまいました。
結局二度見ることに。
でもそれが幸いした展覧会でした。
Tak管理人 | 2006/11/08 11:55 PM
うわ、私も石内さんを勝手に男性と思ってました。
何故だろう?
男性が撮った亡くなった母の品、と勝手に思って、
どうも苦手そうだなぁ、と思ってました。
確かに男性が撮ったと女性が撮ったではイメージ
が変わりますよね。
KIN | 2006/11/09 10:01 AM
@KINさん
こんばんは。

なんででしょうね?
変な先入観あるのでしょうか。
写真家=男性とか。

昨日のシンポジウムで
写真家の金村さんが
最近の写真は身近なものを
被写体にしたものが多いと
仰っていました。
Tak管理人 | 2006/11/10 10:48 PM
はじめまして。
mixiからたどり着きました。

私もこのmother's行きました。
G線上のアリアの心地よい旋律が写真からかもしだされる
強すぎるほどの印象を和らげていて良かったと私は思いました。

くいしんぼう | 2006/11/12 2:23 AM
@くいしんぼうさん
こんばんは。
初めまして。コメントありがとうございます。

G線上のアリアもし流れていなかったら。。。
確かに想像すると強烈な印象だけが残りそうですね。
なるほど〜そういう効果もあったのですね!
Tak管理人 | 2006/11/13 12:52 AM
こんばんは。こちらの展覧会はかなり初期に見たのですが、やっとレビューを書き終えました。

というのも結構なインパクトがあったので、色々考えてしまい、書くのに時間がかかってしまったのです。(それ以外にも単純にアートレビュー自体溜めまくってるのですが・・・)
私もなぜか最初Takさんと同じく男性かと思い「でも男性にしてはおかしい」と思って確認して納得しました。

ただ、私がひねくれ気味のせいか、納得はしたのですが、
Takさんのように

>一人の女性が母親へのオマージュとして撮影した作品がそこには展示されていました。

というような純粋な追悼の気持ちだけではない、「ざらざわした」ものは、女性であっても(むしろそれゆえに?)残り、彼女の葛藤⇒昇華の過程を見るような、なかなかヘビーな展示だったと感じました。

G線上のアリアの例の作品は、あれが到達点だと思いたいです。
それでは、失礼します。


しのぶん | 2006/12/13 12:44 AM
@しのぶんさん
こんばんは。

レビュー拝見させていただきました。

なるほどー女性同士そう見ますか。
うんうん。これには深く納得。

>彼女の葛藤⇒昇華の過程
男からはここまで見通すこと中々できません。
記事読ませていただいて
あの空間に今一度戻って
作品と対面したくなりました。

一番奥の映像の部屋で
ゆったり腰掛けてご覧になっていらっしゃった
石内さんご自身の姿も印象的でした。
Tak管理人 | 2006/12/13 11:15 PM
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東京都写真美術館・前編 | ライトオタクなOL奥様の節約入門日記 | 2006/12/13 12:44 AM