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「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」

森美術館で開催中の
「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」展に行って来ました。



今年も残すところあとひと月ちょっと。
「今年観た展覧会ベスト10」もそろそろ選び出す時季です。

単刀直入に。この展覧会間違いなく今年のベスト10入りします。
昨年、森美術館で開催された「杉本博司展」に匹敵する程の衝撃受けました。

「杉本博司展」が『写真』という自分のほとんど接しないジャンルだったのと照応するかのように、この「ビル・ヴィオラ展」は『ヴィデオ・アート』というこれまた自分が普段スルーしてしまう分野の展覧会です。

普段、展覧会にヴィデオ・アート作品があっても、腰をすえてじっくり鑑賞しきった記憶のほとんどない私が、この「ビル・ヴィオラ展」は2時間半もかけて観たといだけでも驚きです。スクリーンから離れられなくなる魔法をかけられてしまいます。

「ビル・ヴィオラ展」の紹介文にこんな一節があります。
自分でも意識していなかった心の声を聞く。からだの奥底に眠っていた記憶が呼びさまされる。ここではそんな瞬間があなたに訪れます。

眉唾物のようなこの文ですが、まさに当を得ていること実感させられました。

15作品全てビデオ・アートですのでここで感想を書くことは、いつも絵の感想をつらつら書くのとは違います。実際に出来ればご覧になって頂きたい展覧会です。
(来年1月からは兵庫県立美術館へも巡回します)

ビル・ヴィオラについて
1951年ニュ−ヨ−ク生まれ。カリフォルニア州在住。70年ヴィデオ制作を開始。72年に最初の作品〈野生の馬〉を制作。ナム・ジュン・パイクらのアシスタントも勤める。76年初来日、80年に再来日し18カ月滞在。日本の伝統文化と先進テクノロジーを学ぶ。81年にはソニーでアーティスト・イン・レジデンス、《はつゆめ》を制作。92年より生と死をテーマとした作品を本格的に制作。95年第46回ヴェネツィア・ビエンナーレのアメリカ代表。97年よりニューヨーク・ホイットニー美術館企画の大規模な回顧展が、2003年からは個展「パッションズ/受難」がロサンゼルスのJ.ポール・ゲッティ美術館より、それぞれ世界巡回。2005年にはパリの新オペラ座で「トリスタンとイゾルデ」のための作品を発表、オペラとのコラボレーションを実現する。

クロッシング

高さ4mもある大型のスクリーンに大音響と共に映し出される作品。
画面奥から歩んできた男性が、裏表で片方は火、もう片方は水に包まれます。

これが一番初めの作品。真っ暗な会場に表から入ると眼が慣れずあたふたしているうちにスクリーンの男性が…炎が消え、水も無くなった後、男性の姿も忽然と消えてしまいます。「どこへ行ったの?」と戸惑っていると「ついて来なさい」と誘われ会場のヴィオラ・ワールドへ。

ストッピング・マインド」という作品は中央の少しスポットが差した部分に立って観るのがお勧め。ある意味「安全地帯」


ベール

真っ暗な小部屋に9枚の紗幕(ベール)が平行に並べて吊り下げられています。そこにプロジェクターの映像が映し出されます。実験的な試みなのでしょうか。様々な見方が出来、様々な様相を見せてくれます。

観ているうちに寂しさがこみ上げてきました。理由は今でも判然としません。

杉本博司が古典絵画を題材にした写真作品を撮っていたように、ビル・ヴィオラもまた同じようなことをヴィデオ・アートで表現しています。この辺も類似性が感じられる点でした。

  
左はヴィオラの「グリーティング」という作品の一コマ。
右はマニエリスムの画家ヤコポ・ダ・ポントルモの「聖母エリサベツ訪問


ビル・ヴィオラ「驚く者の五重奏」の一コマ

アンドレア・マンテーニャ「東方三博士の礼拝

ヒエロニムス・ボス「キリストの嘲弄(茨の冠)

これらの古典絵画は展覧会会場には勿論展示されていませんし、パネルなどでも紹介されていません。帰宅し検索してそれぞれの絵画とこうして対比させてみると非常に興味深くそしてまた、今一度観に行かざるお得なくなりました。。。

今度行く時は少なくとも、アンドレア・マンテーニャ「東方三博士の礼拝」とヤコポ・ダ・ポントルモ「聖母エリサベツ訪問」はプリントアウトして持っていくことにします。

「一番気に入った作品は?」と聞かれると答えに窮します。
展覧会後半を占めているこの三作品甲乙付け難く同率一位でしょうか。
1「オブザーヴァンス
2「ラフト
3「ミレニアムの5天使

それぞれ簡単に感じたこと。

1「死と別れ」
2「人と自然」
3「光と永遠」



ビル・ヴィオラはつゆめ
ビル・ヴィオラ
ヴィデオ・アートの第一人者、ビル・ヴィオラのアジア初となる個展「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」の公式カタログ。1970年代の初期作品から、「ラフト/漂流」までの代表的な全28作品を収録。ロングインタヴューも掲載。


映像作品全て見ようとすると大変な時間を要する展覧会です。
大人1500円。同じ敷地内にあるヴァージンTOHOシネマズ 六本木ヒルズで映画を一本観るより安上がりです。感動の幅が違います。人には価値観様々あるでしょう。展望台のついでに足早に会場を通り過ぎる中高年の方が多い中、ご高齢のご婦人がお一人、私よりも真剣かつ食い入るように「ラフト」をご覧になっていたのがとても印象に残りました。

兵庫県立美術館(2007年1月23日〜3月21日)に巡回します。
ヴィデオ・アートの第一人者ビル・ヴィオラ(1951年ニューヨーク生まれ)の作品がいよいよ森美術館の全空間を埋め尽くします。本展はヴィオラの世界的な活躍を知る人たち、また初めてヴィオラ芸術に出会う人びとにとっても、その活動の全貌と真髄を体感できる、アジア初の大規模な個展です。
暗闇の中、高さ4mもの両面スクリーンに炎に包まれる男と水に打たれる男が同時に現われ、ミステリアスに消えていく《クロッシング》(1996年)。巨大な空間に浮かぶ5つの映像が、星のように輝く水泡の中を漂う「天使」たちを神秘的に映し出す《ミレニアムの5天使》(2001年)。爆発的な感情が身体を駆け巡り、自己破壊に耐え再生する男女をスローモーションで描いた《静かな山》(2001年)。幻想的な「ゆめ」の世界は圧倒的な迫力で私たちの目や耳やからだを釘づけにし、ドラマティックな映像体験を与えてくれるでしょう。
荘厳で神秘的、そして時にショッキングな作品を通して、ヴィオラは命、誕生、死、再生、感情といった人間の根源に関わるテーマを常に追い求めます。それは、単なるテクノロジー・アートではなく観る人の数だけ余韻を残し、その捉え方をゆだねるアートなのです。
70年代のヴィデオ・アート創生期からヴィデオ制作を始め、80年代からはプロジェクターや大型スクリーンを駆使、近年ではプラズマや液晶モニターでの「動く絵画」とでも呼ぶべき作品を発表。「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」ではテクノロジーの進歩とともに歩みを続けたヴィオラの過去25年の制作の中から90年代以降を中心に16点を紹介します。
展覧会 | permalink | comments(16) | trackbacks(8)

この記事に対するコメント

こんにちは
>昨年、森美術館で開催された「杉本博司展」に匹敵する程の衝撃受けました。
私もそうでした..。
そう言えば、こちらのサイトを知ったのは杉本博司展のレビューがきっかけでした。
あの超スローモーションは現代の肖像画のあるべき姿じゃないかと思いましたが、作品的には前半が好みでした。
でも「ミレニアム」が一番!
ogawama | 2006/11/25 1:37 PM
Takさんこんばんは。いつも楽しく拝見してます。
Takさんのレビューに魅かれて「ビル・ヴィオラ展」観に行ってきました。よかったです。また行こうと思います。

私は「ベール」に「恋愛の本質」を、「ミレニアムの5天使」に「死と再生」を感じました。「ミレニアム〜」の部屋に一番長くいたような気が。
| 2006/11/26 11:18 PM
@ogawamaさん
こんばんは。

同じ感想の方がいらして嬉しいです。
自分ひとりだけはしゃいでいるのかと
ちょいと不安でしたので。。。
ミレニアムはタイミングが毎回違うので
油断できませんね。楽しめました。
床に座ってのんびり観てきました。

@鴨さん
こんばんは。

こんな記事でもお役に立てて光栄です!
画像を探すのにえらい苦労しました。。。
こうして並べてみると「こうだったのか」と
今更ながら納得納得。

私も最低でもあと一回は絶対に行きます。
できれば土日以外もしくは夜に。
Tak管理人 | 2006/11/27 11:23 PM
こちらの記事にそそのかされて、早速行って来ました。
映像系アートってあまり好きではないというか、どうも楽しみかたのコツが掴めなくて得意ではないのです。
が、いやはや、今回は凄かった。さすがに最初は戸惑ったけれど、じっと見ているとジワジワと感情が揺さぶられる。『アフリカ・リミックス』の時のように、グラグラしました。
『ラフト』では泣きそうになり、『ミレニアムの5天使』では心が真っ白に。
はああ・・・・・。
菊花 | 2006/11/30 11:41 PM
@菊花さん
こんばんは。

「そそのかされ」ましたかーー
いけませんねー
ハマりますよ。
これは中毒気あります。

何て言うのか。。。
「ラフト」も予定調和のような側面もありますが
それでも何度も観てしまう「力」持ってます。
床にお尻つけて、時には胡坐かきながら
堪能してきました。
Tak管理人 | 2006/12/01 1:19 AM
ビル・ヴィオラ展に行かれたのですね〜
私は、早々に講演会には行ったのですが、
展覧会自体を観るのは、もしかしたら
来年になるかもしれません。。
まるみ | 2006/12/01 2:40 PM
@まるみさん
こんばんは。

いいなー講演会、中沢新一さんも
いらしたのですよね、確か。
聴きたかったです。
年明け一発目にこの展覧会は
新年の幕開けとして・・・いいかな。。。
Tak管理人 | 2006/12/01 10:20 PM
Takさんとは感じ方がかなり違うなぁ、と思いました。

ここに登場する人は、Takさんの感想に、なんらかの共感を覚えた人が多いのでしょうが、私はチケットの値段の価値はないと思いました。

はたして、何十分もの作品を最初から最後まで見た人はどれだけいたのでしょう。もちろん途中から見た人は、最初から見直す必要があります。まさか、見もしないで「『感動した』などと言う人はいないでしょうね」と、余計な事を心配してしまいます。

暗い室内で、ほとんど動きのない映像を、「これでもか」と、見せつけるセンスが理解できません。作家の自己満足もここまで来ると、うんざりです。モデルの表情もちょっと???でした。

もっとも、心を掴まれたと思った人もいるようなので、やはり、「田で食う虫も好きずき」なのかなぁ。(もちろん、Takさんらの側から見ると、逆になります)
鼎 | 2006/12/10 12:31 AM
@鼎さん
こんにちは。

あらら、、、ダメでしたか〜
まぁ好き嫌い、良し悪し分かれますよね。

全ての作品を最初から最後まで見ようとすると
6,7時間はかかるでしょうか。
とても一度では観きれませんね。
私もスルーした作品何点もあります。

それでも「絵的」な映像として楽しめたので
まぁ良しとしています。

モデルの表情に関してはヴィオラも
苦言を呈していました。

DVDとかもし出て家でみてもダメだと思いました。
会場に惚れました。マーシャの写真展も始まったし
クリスマスのイルミも綺麗なのでまた行って来ますね。
Tak管理人 | 2006/12/10 11:03 AM
Takさん、こんばんわ。
「ビル・ヴィオラ」展をオススメの意味がわかりました。
でも、立ちくらみがするくらい体にギシギシきました。ぐらぐらです。

Takさんのこのブログ読んでからだったので、心の準備をしていたつもりでしたが、やはり衝撃が大きかったです。
とーくる(K) | 2006/12/20 4:59 PM
@とーくるさん
こんばんは。

行かれましたか!
やられちゃう映像ですよね。
1500円払って映画観るなら
こちらの方がお得感あります。

でも、元気が無いときは要注意ですね。
最近忙しさにかまけてだらしなくなっているので
お灸をすえてもらう為にまた森美術館へ行きます。
Tak管理人 | 2006/12/21 9:46 PM
Takさんの「今年のベスト10に入る」というお言葉が気になり、遅ればせながら行ってきました。
現代のテクノロジーのなしえた成果でありながら、静謐な絵画を鑑賞するような感覚で、一般のメディア・アートでは感じられない感動がありました。
ビル・ヴィオラ作品には神の視線で描いたような凄みがありますね。
テツ | 2006/12/28 3:15 PM
@テツさん
コメント&TBありがとうございます。

テツさんのお書きになられた「神の目」という視点
言い得て妙だと思いました。
まさにその通り!
普段見ていても見えていないものを見せてくれる。
あんなに水しぶきが美しいものだとは!!
Tak管理人 | 2006/12/29 12:28 PM
こんにちわ。
ようやく行ってこれました。もっと、早くに行っておくんでした。特別上映の「はつゆめ」を見ることが出来なかったのが心残りです。
しかし、映像だけであれだけ圧倒される内容の展示というのも珍しいと思います。
スタイルを作り出してしまうひとってやはりかっこいいですね。
あおひー | 2007/01/08 12:49 PM
ビデオアートは、ともすると作家の独りよがりの映像が流されていることも多いのですが、ビル・ヴィオラの作品は見る者に十分な満足を与えてくれる素晴らしい作品ばかりでした。
Takさんが2時間半も会場にいたことも、納得できます。
自由なランナー | 2007/01/08 10:53 PM
@あおひーさん
こんばんは。
TBありがとうございました。

「はつゆめ」は兵庫ではいつでも
観られるようですね。いいなー
でも、寝ちゃいそうですけどね。
中沢新一の講演会もあって行くはずだったのですが
急遽予定が入ってしまって断念。
それでも展覧会には大満足!!

@自由なランナーさん
こんばんは。
TBありがとうございます。

もっと知りたい、もっと観たいという
欲求にかられました。時をあけずして
二回、三回と行きましたが、やはり初めの
印象が一番強く心に残っています。
Tak管理人 | 2007/01/08 11:38 PM
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