青い日記帳 

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「MOTアニュアル2007 等身大の約束展」

東京都現代美術館で開催中の
「MOTアニュアル2007 等身大の約束」展に行って来ました。



毎年恒例の「MOTアニュアル展」今年で第8回目となるそうです。
昨年。
「MOTアニュアル2006 No Borderー「日本画」から/「日本画」へ」展
一昨年。
「MOTアニュアル2005 愛と孤独、そして笑い」展

昨年、一昨年の記事をご覧になってもお分かりの通り、
大変個性の強い作家さんがアニュアル展に参加しています。

さて、今年は一体どんな作家さんが集結したのでしょう。
MOTのサイトにはこのような解説があります。

表現方法はさまざまですが、高度情報化社会の中でのコミュニケーション、知覚や認識の危うさを露にし、地域や社会など身の回り関係を自らの立ち位置から見つめ直す作業をしている作家たちです。詳細はこちら


写真右から、中山ダイスケ、千葉奈穂子、しばたゆり、加藤泉、秋山さやか。
(左端は同時開催の「邱黯雄展」邱黯雄 (チウ・アンション))

「情報化社会」が今回のアニュアル展の大きなキーワードになっているようです。
情報化社会といえば、すぐに西垣通氏が頭に浮かびます。
西垣氏による情報化社会への批評はいつも刺激に満ちています。

例えば我々のもっとも身近にある「情報化社会」のツールとして携帯電話があります。携帯電話については様々な人が百花繚乱の文を書いていますが、私は西垣氏のこの文章に勝るものはないと常々考えています。
 常識にしたがえば、携帯電話は私的な領域を広げるものではない。むしろ、公的な領域を拡大し、世界を覆ってしまうものだというのが普通の見方だろう。(中略)
 「いつでもどこでも仕事の連絡ができる」「いつでもどこでも仲間とおしゃべりできる」「いつでもどこでも恋人の声がきける」――携帯電話が保証するのはそういうことだ。だがそれこそは、自分の知らないところで高速の情報流が渦巻いており、下手をすると自分がのけものにされるという、根深い疎外の恐怖の裏返しではないだろうか。
 情報化社会においては、会社や市町村や家族といった従来の共同体が徐々に明確な輪郭を失っていく。言いようのない孤独感が鋭く人々の胸を刺すことになるだろう。自分の小さな私的領域を何とかして確保し、そこに聞き慣れた会話の声を呼び込むことで、自分のおぼつかない足元を支えたいという切望が生まれるとしても、いっこうに不思議ではない。その切望とともに、人々は携帯電話を護符のように抱え歩くことになる。
今回のアニュアル展で中山ダイスケの作品の中に「picture of the universe」という作品がありました。ぼんやりとした人物の顔に目や鼻の代わりに「4桁の番号」が描かれています。



この作品に描かれた人物は中山氏の友人だそうです。
そして顔の代わりに描かれた番号は…そう「友達の携帯番号」です。

親しい友人をデジタルの数字によって認識している社会。
そして当然ながら相手からは自分もデジタルの数字で…

携帯電話を手放せない不安の原因をこの作品は端的に表現しています。

因みに中山氏の奥様は女優の鶴田真由。
鶴田さんもこの作品の中に…いませんよねまさか。

情報学的転回―IT社会のゆくえ
「情報学的転回―IT社会のゆくえ」 西垣 通
この本の解説としてはこちらのブログの記事が大変秀逸。

生まれ故郷の岩手県で暮らす千葉奈穂子の作品は、西垣氏の言う「情報化社会においては、会社や市町村や家族といった従来の共同体が徐々に明確な輪郭を失っていく。」を必至に食い止めようとするような作品です。


実り・はせ小屋

サイアノタイプと呼ばれる原初的な写真技法を用いて身の周りの日常を撮影した作品。またそれらを組み合わせ立体的にした作品も展示されていました。

日光写真独特の「青み」が一種の郷愁を喚起させます。
千葉の作品は単にノスタルジックなものではなく、そこで先祖代々連綿と受け継がれてきた自分の血を表現しているかのようです。

今回の五人の作家の中で千葉の作品が一番印象に残ったのは、情報化社会で希薄になってしまった自己を取り戻せるひとつの方法を具体的に示してくれていたからかもしれません。そういう意味では千葉の作品の展示場所(五人の中で一番初め)はもったいないように思えました。(逆周りで観るといいかもしれません)

空の名前
「空の名前」 高橋 健司

秋山さやかは自分の足で歩いた足跡を作品にしています。
それとビーズ好きの方!が喜びそうな作品も。。。

あるく私の生活基本形ー深川2006年8月4日〜」は深川資料館通り商店街共同組合事務所に協力してもらいこの展覧会の為に完成させた大作。

加藤泉の作品は宇宙人のような、胎児のような奇妙な人物がずらり。
絵画あり、立体あり。

「どれもこれもみな同じ顔。」
「しかも表情がありません。」

これって勿論意図的ですよね?
中山氏と表現は違えども根幹は一緒だと思いました。



でも、ちょっと慣れるまで時間がかかりそうな作品です。

最後の一人、しばたゆり。
こちらの本に掲載されている作品も今回出展されていました。
ニッポンVS美術―近代日本画と現代美術:大観・栖鳳から村上隆まで
ニッポンVS美術―近代日本画と現代美術:大観・栖鳳から村上隆まで

一見すると可愛らしく優しげな雰囲気の作品を描く作家さんです。
例えばこれとか。


ただ見かけだけけの可愛さには裏があるのが世の常。
しばたゆりの作品もご他聞に漏れず。

例えば↑のクマさんの絵(画像右下)は実際にぬいぐるみのクマ(画像右上)の毛を「絵具」として描かれたものです。その名も「Material Colors]

「Material Colors」シリーズもクマのぬいぐるみや木の葉を用いているだけならまだ良しとしても「Lipstick」には流石に引きました。
「口紅」が一本ぽつんとケースの中に展示されているのですが、このマテリアル、材料はなんと作家本人の血液

いやはや何とも…
実際に血液を採取しているシーンを映像で流してくれてもいます。
実際にこの口紅使ってみたのかな?自分で。

この流れに乗っかって、「今日の一枚

Material Colors 丹波の猪



説明要りませんよね。
そうです、想像通りです。自分の血をも作品にしちゃうわけですから当然。。。

しばたさんに「肖像画」とか描いてもらうとどうなるのでしょうね。


おまけ

記事中に紹介した西垣通氏は小説もお書きになっています。
才能を少し分けて欲しいです。
1492年のマリア
「1492年のマリア」 西垣 通
1492年=コロンブスの新大陸発見。そして、ユダヤ人のスペイン追放。その時全ては始まった! 壮大なる歴史ロマンに秘められた、情報社会の功罪をめぐる「暗合の糸」。最先端の情報学者が挑む書き下ろし歴史小説。

同時開催の
「中村宏 | 図画事件 1953-2007展」はこちら


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=897
多量の情報を距離や時間に関わりなく瞬時に交信できる高度情報化は、バリアフリーや新たなネットワークの形成をもたらしました。
しかし、意識や経験は記号化され、人と人とのつながり、時間や地域の感覚、自己の存在までもが希薄になるなど、私たちの知覚や認識のあり方に大きな変化をもたらしています。
癒しや自然回帰、伝統回帰という近年の風潮は、高度情報化に違和感を覚え、プリミティブな関係を求める人々の意識の現れといえましょう。ところが、この活動そのものが多分に情報に負っており記号化されています。
第8回目となる今回のMOTアニュアルでは、このような近年の風潮を敏感にとらえている5名の作家の作品を紹介します。
秋山さやか、加藤泉、しばたゆり、千葉奈穂子、中山ダイスケは、表現方法はさまざまですが、高度情報化社会の中でのコミュニケーション、知覚や認識の危うさを露にし、地域や社会など身の回り関係を自らの立ち位置から見つめ直す作業をしている作家たちです。
展覧会を通じて、意識しなければ見過ごしてしまう人と人との関係や人やモノの関わり、自分自身の存在について考える機会になれば幸いです。

展覧会 | permalink | comments(2) | trackbacks(1)

この記事に対するコメント

行ってきました。
ビーズな秋山さやかさん、すごく良かったです♪
全体的には結構考えこんでしまう展覧会でしたけど。
ただし肖像画の件は、考えるのやめます。   

MOTの個人会員になりました。
ogawama | 2007/01/24 8:38 PM
@ogawamaさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

秋山さんって絶対女性受けいいですよね。
分かります。分かります。
今の自分たちを色んな姿で見せられているようで
それで疲れてしまうのかもしれません。

肖像画はさちえ殿にでも。。。
Tak管理人 | 2007/01/25 10:51 PM
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東京都現代美術館(江東区三好4-1-1) 「MOTアニュアル2007 等身大の約束」 1/20-4/1 毎年楽しみにしている展覧会ですが、今回はややインパクトに欠ける印象も受けました。「日本の新しい美術の成果を紹介するグループ展」(パンフレットより。)という、「MOTアニ