青い日記帳 

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「松田権六の世界展」

東京国立近代美術館工芸館で開催中の
「漆芸界の巨匠 人間国宝 松田権六の世界」展に行って来ました。



ほとんど興味関心の無いジャンルの展覧会なので普段ならパスするのですが
1月7日に松田権六についてNHK教育テレビ「新日曜美術館」で放送されたのを観て
俄然実物をこの目で観たくなり、工芸館まで出向いてきました。

「人間国宝」なんて言われると天邪鬼な自分はつい眉をひそめてしまいます。
ところが松田権六の漆工芸に対する姿勢は大変謙虚です。
松田の漆芸は古典研究に深く裏付けられ、江戸、桃山、平安、奈良の各時代、さらに中国・朝鮮の文化財にまで研究が及んでいます。古典研究においても常に制作者としての立場を堅持し、作品意匠や様式などの外的な観察にとどまらず、その構造・技法、使われている用材に至るまで鋭い解明を試み、その成果は松田の作品に見事に結実しています。「私の師は、物と自然と人である」と自ら述べているように、その謙虚な心構えと、たゆまない意欲と厳しさがその芸術の基盤となっています。
松田の残した言葉からもそれはうかがい知ること出来ます。
人に学び、物に学び、自然に学ぶ。
これを終生のモットーとし仕事にあたったそうです。

翻って今の自分に照らし合わせてみると大変耳に痛い言葉でもあります。
「反省」(明日から仕事謙虚に謙虚に…)

反省だけならサルでも出来、「謙虚に」と口で言うだけならたやすいことですが
いざそれを成すとなると並大抵の努力では継続することできません。

松田の凄い点は名を成しても尚、制作のために図案日誌やスケッチを
毎日のように記していたということがあげられます。
その「図案日誌」の一部が今回展示してありました。

また、古典作品から多くの技法も学び取りいれたそうです。
既に当時は用いられなくなった昔の技法なども積極的に。

中国の漢の時代の出土品や尾形光琳の硯箱など
松田が学びの対象とした作品も「芸術観の形成」とし展示されています。

これはその一つ江戸時代の作品です。

蒔絵籬に秋草図箱」(重要文化財 古今和歌集清輔本箱)

以下、松田権六の「名作」を何点かご紹介。


蒔絵槙柏文手箱」1955年


赤とんぼ蒔絵箱」1969年

まさに「自然に学ぶ」作品揃いです。
赤とんぼまで意匠として取り入れてしまってます。


蒔絵鷺文飾箱」1961年

この鷺にしてもよく画像では見えませんが柳の上を飛んでいる古典的な図案です。
プライスコレクションで観た鈴木其一の「柳に白鷺図屏風」が
目の前に蒔絵となって現れたかのような錯覚さえ受けます。
  

また、漆の表面に「白」をどのようにして表現したのか
大変興味関心のあるポイントです。HNKで解説していました。
松田の作品の「白」の部分は卵の殻を細かく砕いて貼り付けてあるそうです。
それも鶏卵ではなく、ウズラの卵の殻だそうです。

この有名な「蓬萊之棚」に描かれた鶴の「白」もまた卵の殻です!!

蓬萊之棚」1944年 


そうは言われても俄かに信じ難いものありますが、、、
百聞は一見に如かず。「蓬萊之棚」の鶴の首を一部拡大してみると…


言葉に出来ません。。。 

言葉にできない〜小田和正コレクション
言葉にできない〜小田和正コレクション

ここでもうひとつ松田の残した言葉を。
意匠は形、色調、技術と資材の駆使にあらわれる。
納得です。

そして「小さな作品」たちもまたとてもいい味出しています。
しっかりとした意匠によって。

 
「流水桜文蒔絵神代欅棗」 「鴛鴦蒔絵棗」

  
「蒔絵松桜文棗」 「蒔絵撥鏤双雀文雪吹」

松田の手がけた棗などを観ていると『枕草子』に「うつくしきもの」というもの尽くしの段が自然と頭に浮かんできます。小さきものへの想い。千年経っても変りませんね。
うつくしきもの、瓜にかきたるちごの顔。すずめの子の、ねず鳴きするにをどり来る。(中略)雛の調度。蓮の浮き葉のいと小さきを池よりとりあげたる。葵のいと小さき。なにもなにも、小さきものは、みなうつくし。

松田権六の漆への想いをより深く知りたくなるそんな展覧会です。
東京展は25日まで。その後、MOA美術館で3月10日〜4月9日まで開催。

ご紹介した松田権六の残した言葉などはこの文庫本に収められています。
うるしの話
うるしの話
松田 権六

松岡正剛の千夜千冊『うるしの話』松田権六

それでは「今日の一枚」でなく「今日の一点

蒔絵玉すだれ文盤」1953年



この作品に用いられたいる漆は樹齢100年を超える樹木から採取されたものだそうです。若い木と老木では漆の透明度などが違うそうです。これもまた松田の「好奇心」から得られたものだそうです。

いまひとつ最後まとまりが悪いので(いつものことですが)
谷崎潤一郎の名文をご紹介して終わりにしますね。

『陰翳礼讃』
私は、吸い物椀を前にして、椀が微かに耳の奥へ沁むようにジイと鳴っている、あの遠い虫の音のようなおとを聴きつつこれから食べる物の味わいに思いをひそめる時、いつも自分が三昧境に惹き入れられるのを覚える。茶人が湯のたぎるおとに尾上の松風を連想しながら無我の境に入るというのも、恐らくそれに似た心持なのであろう。日本の料理は食うものでなくて見るものだといわれるが、こういう場合、私は見るものである以上に瞑想するものであるといおう。そうしてそれは、闇にまたたく蝋燭の灯と漆の器とが合奏する無言の音楽の作用なのである。



この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=928

追記:
こちらは現代の若手漆職人?生田真弓さん。
生田さんの「漆ポシェット」は
社団法人 日本クラフトデザイン協会が主催する
昨年度の「第46回日本クラフト展」で大賞を受賞しました!

生田真弓さんの「漆ポケット」
 工芸界の巨匠松田権六は、近代漆芸に偉大な芸術世界を築き上げた作家であり、わが国の伝統工芸の発展にきわめて重要な功績を残しました。
 金沢に生まれた松田は、加賀蒔絵の伝統を踏まえつつ、正木直彦東京美術学校長や大茶人益田孝(鈍翁)との知遇、室町や桃山時代などの古典研究、朝鮮・楽浪漢墓出土の漆器や中尊寺金色堂をはじめとする数々の保存修復をとおして、漆芸の意匠や様式、広範な技法を鋭い洞察と鑑識とで解明し、自らの創作に応用、発展させました。その創作は、まさに近代漆芸の金字塔といっても過言ではないでしょう。
 本展覧会では、1.主要作品約70点、2.その芸術の形成に深く関わった古美術作品や師の作品、3.松田の芸術を現代に継承してきた作家らの代表作、を紹介し、これまでになかった構想で、松田権六芸術の真髄と現代漆芸に示した真価をご覧いただきます。
展覧会 | permalink | comments(8) | trackbacks(7)

この記事に対するコメント

私もまずプライスコレクションの鈴木其一の鷺や鶴を
思い出しました。
私は螺鈿の神秘的なきらめきにぞっこんでした。
一村雨 | 2007/02/22 6:29 AM
年がわかってしまいますが・・もうばればれですが(AOKITさんと同級生)日本伝統工芸展で若手の作品を、一つ一つ作家を呼んで、批評していらっしゃる姿を見たことがあります。
卒業制作のあの箱にいたっては、何故か?間近に見てしまいました。もちろん蓋の裏も!!
私のなかでも、神様です。
gakko | 2007/02/22 10:24 AM
工芸品はかなり好きなので、機嫌よく見てきましたがさすがに凄い人ごみでした。
上から見れば、このお客さんも蒔絵の梨地か砂子のようなものかもしれません。
議事堂などの折上格天井のパネルにも感心しました。
天の川のような散らし方もきれいでしたし、鳥たちもよかったです。鳥はやっぱりTakさん好みではないかしら、と見ながら思っていました。
わたしは雀が可愛いです。
遊行七恵 | 2007/02/22 11:25 AM
漆蒔絵の世界凄いですね。
私も感想を書きましたのでTBします。
ただ、Takさんの記事の『やどかり』または、
『宿り木』状態になってしまいました。
お許しを!!!
わん太夫 | 2007/02/22 1:57 PM
こんばんは。
1月にあまりこんでいない時に出かけたのですが(日曜美術館放映後は混雑したようですね)美しさにため息が出ました。
漆蒔絵は好きなのですがほとんど知識がないままだったので、先日松田権六さんの書いた『うるしの話』を読んだのですが、かなり面白かったです。漆工芸は本当に繊細で難しいことがよくわかりました。
しのぶん | 2007/02/22 9:40 PM
こんばんは。
我が方にコメントTBありがとうございます。
友達と行って、一々唸ってきました。
私は、かぐわしい殿方をゲストにするために、
帆掛け船の棗と、足高のお碗セットを頂くことにしました。
(ひとりごとです。)
権六さんの謙虚な仕事ぶりに、ひたすら頭をたれてきました。誰が鶉の卵の皮をピンセットで剥き、砕いた殻を貼り付けることが出来ましょう〜

東博も、いい漆が出てました。(先月です)
あべまつ | 2007/02/22 11:02 PM
こんばんは
松田権六ってどこかで聞いたなあと思ったら
MOA美術館のHPでした
4月に仕事で伊豆に行くので
帰りにどこか寄れる美術館は無いかなあと思って
見たんですけど工芸品は全くの門外漢なので
迷ってたんですー

でも良さそうですね
ただ近美で見られるのにわざわざ熱海で見るというのも
変かなあ



muha | 2007/02/23 2:40 AM
@一村雨さん
こんばんは。

一村雨さんもやられましたか〜
ダイヤのキラキラとは違った
魅力ありますよね!

@gakkoさん
こんばんは。

神様ですね、確かに。
卒業制作のあの箱
どれくらい金が使われているのでしょう?
それにしても裏側をご覧になったとは
なんて羨ましい!!
流石。

@遊行七恵さん
こんばんは。

鳥さんたち好みでした。
遊行さんがブログに載せていらっしゃる
雀はど真ん中ストライクでした!!
今度、府中に芦雪の雀が来るので
その時にでも紹介しようと思っています。

小さいものへの愛情が伝わってきます。

@わん太夫さん
こんばんは。
TBありがとうございます。

私の記事は「画像」で誤魔化しているので。。。
文はおまけのようなものです。
「宿り木」どうぞどうぞ。
こんな「木」でよろしければ!!

@しのぶんさん
こんばんは。

混んでいないときに行きたかったです。
それでもオルセー展よりかは
全然余裕で観られました。
膝を屈伸しながら観て来ました。
「うるしの話」も読まねば!
アマゾン、クリック、くりっく。

@あべまつさん
こんばんは。

唸りますよね〜
珍しく「予習」していったので
それがどれだけのものか素人目にも
大変よく分りました。
ただただ唖然、呆然です。

東博にも出ていたのですか!
それはそれは。。。
結構こうして見落としているんですよね。。。

@muhaさん
こんばんは。

MOAさんも結構持っているようですね。
今回も出展作品の中にありました。
熱海でご覧になるとまた違って見えるかもしれません。
工芸館ちょっと狭いですからね。

でも入館料は。。。全く違います。
なんでもエスカレーター動かすだけで
電気代相当かかるそうです。
山の上ですからね。
Tak管理人 | 2007/02/24 12:16 AM
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