2014.05.31 Saturday
「石の世界と宮沢賢治」
国立科学博物館で開催中の
「石の世界と宮沢賢治」展に行って来ました。 http://www.kahaku.go.jp/ ドーバー海峡の海食崖地形に似ていることから賢治が名付けた「イギリス海岸」(北上川)を持ち出すまでもなく、宮沢賢治(1896〜1933)の作品を読んでいると、名前を聞いたこともないような石や専門的な地質学用語をしばしば目にします。 宮沢賢治は、小学校4年頃(明治39年)から石に興味があり、中学1年には、岩石・鉱物の授業(博物)を受けて本格的に資料採集を行っています。盛岡高等農林学校では地質学を専門として学び、彼の文学作品の多くに鉱物名、岩石名、地層名などの専門用語が使われています。 賢治が採集した標本 岩手大学 農業教育資料館所蔵 賢治の小説を読み進める上で(賢治自身を知る上でも)、そうした石の名前や地学用語を少しでも理解しておくことが如何に大切なのかがよ〜く分かる展覧会です。展示もとてもまとまり(物語性)があり丁寧な解説がなされています。 展覧会の構成はおおまかに以下の通りです。 1.江戸時代・明治時代の石の名前 2.博物館と宮沢賢治 3.「石っこ賢さん」から地質学者へ 4.農学校教諭時代の宮沢賢治 5.文学作品の中の地質学 宮沢賢治作品の中の岩石・鉱物 宮沢賢治の作品の中にでてくるさまざまな岩石や鉱物などが実際の標本で紹介されています。あのお話にこんな石が出てきたかしら?!とすぐにでも本を読み返したくなります。 ぎざぎざの斑蠣岩の岨づたひ 膠質のつめたい波をながす 北上第七支流の岸を せはしく顫へたびたびひどくはねあがり まっしぐらに西の野原に奔けおりる 岩手軽便鉄道の今日の終りの列車である うつうつとしてイリドスミンの鉱床などを考へようが 種山あたり雷の微塵をかがやかし 列車はごうごう走ってゆく 第三紀末の紅い巨礫層の截り割りでも ディアラヂットの崖みちでも 壊れかかった香魚やなも どんどんうしろへ飛ばしてしまって ただ一さんに野原をさしてかけおりる さうだやっぱりイリドスミンや白金鉱区の目論見は 鉱染よりは砂鉱の方でたてるなだった それとももいちど阿原峠や江刺堺を洗ってみるか なほいっしんに野原をさしてかけおりる わが親愛なる布佐機関手が運転する 岩手軽便鉄道の最後の下り列車である 「岩手軽便鉄道」七月(ジャズ)より 「岩手軽便鉄道」は、北上山地の花崗岩や蛇紋岩地帯を走る沿線の情景を詠んだ詩です。斑レイ岩、イリドスミンの鉱床、ディアラヂットなど、地学を学生時代選択しなかった自分には見慣れない用語が並びます。 作品の一部と共に登場する鉱石なども展示されています。「イリドスミン」が果たしてどんなものなのか気になりますよね〜 宮沢賢治が石に惹かれた理由が少しだけ分かる気がしました。「美しさ」、「多様性」、そして「寡黙」な石の魅力が伝わって来ます。 「気のいい火山弾」 この他にも「楢ノ木大学士の野宿」、「十力の金剛石」等の作品を取り上げ、作中に登場する様々な石や地学の専門用語を紹介しています。 因みに、宮沢賢治は東京に来て帝室博物館(東京国立博物館)が所蔵していた岩石・鉱物などの自然史資料(天産資料)の展示を見たそうです。現在は、東京博物館(国立科学博物館)に移管されています。 つまり今回の展示室にある資料を賢治が見ていたことになります! 小学校の頃には「石っこ賢さん」と呼ばれた宮沢賢治と石の世界を存分に楽しめる良質な企画展です。何と常設展示入館料のみで観られます。 賢治が愛した「石ころ」たちを観に行きましょう!6月15日までです。 企画展「石の世界と宮沢賢治」 開催期間:2014年 4月19日(土)〜6月15日(日) 開催場所:国立科学博物館(東京・上野公園) 日本館1階企画展示室 http://www.kahaku.go.jp/ 開館時間:9時〜17時(金曜日は20時まで) 休館日:毎週月曜日 主催: 国立科学博物館 協力:岩手大学農学部附属農業教育資料館、岩手大学図書館、宮沢賢治記念館、石と賢治のミュージアム 資料提供:林風舎 展示室を見ながらお食事の出来るレストラン 「ムーセイオン」や科博自慢の優れものICカードについて「ぶらり、ミュージアム」で書いています。 特別展「医は仁術」が2014年5月29日、来場者10万人を突破したそうです。セレモニーには女優の栗山千明さんが来館! 特別展「医は仁術」も国立科学博物館にて、同じく6月15日(日)まで開催しています。 展覧会公式サイト:http://ihajin.jp/ →展覧会レビュー Twitterやってます。 @taktwi Facebookもチェック! この記事のURL http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3622 JUGEMテーマ:アート・デザイン |