弐代目・青い日記帳 

  
TB&リンク大歓迎です!
「茶碗の中の宇宙」
東京国立近代美術館で開催中の
「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」展に行って来ました。


http://raku2016-17.jp/

安土桃山時代に樂家初代長次郎によってはじめられた樂焼(楽焼)。今から400年以上も昔のことです。その初代長次郎から一子相伝で現代の十五代樂吉左衞門まで脈々と続いている樂焼。
一子相伝とは、技芸や学問などの秘伝や奥義を、自分の子の一人だけに伝えて、他には秘密にして漏らさないことであり、一子は、文字通り実子でなくても代を継ぐ一人の子であり、相伝とは代々伝えることです。
樂吉左衞門をして「私が生きている間に二度とこれほどの規模の展覧会は開催できない」と言わしめるほど大規模かつ網羅的な樂茶碗の展覧会が国立近代美術館で開催されています。


十五代 樂吉左衞門

通常の展覧会ですと幾つかのセクション(章)に分け、作品を紹介しますが、「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」展ではその必要はありません。

なぜなら初代長次郎から十五代吉左衞門まで15名が作り出した茶碗を、文字通り脈々と見せているからです。このシンプルな展示こそまさに樂家一子相伝の芸術を観るのに最も優れていると思われます。


初代 長次郎「黒樂茶碗 銘 大黒」(重要文化財)16世紀
千利休所持伝来

余計なものは極力そぎ落とし、シンプルに見せる。

そう、まさに展覧会会場自体も樂茶碗の世界に倣っているのです。一見物足りなく感じるかもしれませんが、それこそが狙いだと思います。


三代 道入「黒樂茶碗 銘 青山」(重要文化財)17世紀
樂美術館

「茶碗の中の宇宙」展は茶碗好きにとっては夢のような展覧会であり、それこそもう二度とこれだけの数は揃うことありませんので何が何でも観たいはずです。

では、逆に茶碗に興味の無い方にとってはどうでしょう。淡々とならぶ黒や赤の茶碗を眺めても何がどう良いのかさっぱり分からないはずです。自分もどちらかと言えば後者にあたります。

なので、実際に観に行くまでは果たしてどうなのかな〜と心なしか不安でした。しかし、実際に会場で拝見すると茶碗の展覧会であると共に、樂家という非常に特殊な家の400年以上に渡る物語に触れる稀有な展覧会だということに気付かされました。


八代 得入「亀之絵黒樂茶碗 銘 萬代の友」18世紀
樂美術館

八代 得入は18歳で家督を継いだものの病弱であったため26歳で九代 了入に家督を譲ってしまったそうです。そして30歳の若さで亡くなってしまいます。僅か9年しか代を継いだ期間がないため、作品も非常に少ないそうです。

20歳前後で作った作品は、まだまだオリジナリティーを発揮するに至っていません。もし得入が仮に50歳まで樂茶碗を作り続けていたら一体どんな茶碗が出来たことでしょう。そんなことを想いながら拝見してきました。


本阿弥光悦「黒樂茶碗 銘 雨雲」(重要文化財)17世紀
三井記念美術館


五代 宗入「黒樂茶碗 銘 亀毛」17-18世紀 
尾形乾山「銹絵染付松図茶碗」17-18世紀
本阿弥光悦書、俵屋宗達下絵「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」17世紀

五代 宗入は樂家初の婿養子。実父の兄があの尾形光琳・乾山の父にあたります。つまり三人は従兄弟同士だったことになります。

さらに、三人の曾祖母は本阿弥光悦の姉にあたるそうで、樂家、尾形家、本阿弥家は血縁関係で結ばれていたのです。

琳派好きの方に樂茶碗を好まれる方が多いのはこうした樂家と琳派の親密な関係があったことに起因するのかもしれません。そもそも乾山が焼き物の道へ進んだのも樂家の影響が大きかったはずです。


十五代 樂吉左衞門の作品

元々は唐三彩から出発した樂家の歴史。初代が極めたモノトーンの世界を現代まで受け継いで来たひとつの家の壮大な歴史と向き合える展覧会です。

4月11日からトーハクでは特別展「茶の湯」もスタートします。何十年分かけて出会う名碗が今年は一気に観られる大チャンスです。

鑑定団で話題の国宝「曜変天目」も観られる!特別展「茶の湯」がすごい

まずは竹橋の「茶碗の中の宇宙展」から。桜が見ごろとなり混雑する前に是非。5月21日までです。図録はAmazonでも購入可能です。
愛蔵版 茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術
千利休のわび茶を表現する「樂焼」の450年を俯瞰する展覧会「樂ー茶碗の中の宇宙」の図録。樂の世界が一冊で分かる決定版。


「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」

会期:2017年3月14日(火)〜5月21日(日)
開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
*入館は閉館30分前まで
休館日:月曜(3/20、3/27、4/3、5/1は開館)、3/21(火)
会場:東京国立近代美術館
http://www.momat.go.jp/
主催:東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション、日本経済新聞社
協賛:日本写真印刷
特別協力:樂美術館、国際交流基金
協力:あいおいニッセイ同和損保
公式サイト:http://raku2016-17.jp/

無料シャトルバス運行!
4/11(火)〜5/21(日)の開館中、東京国立近代美術館と特別展「茶の湯」が開催される東京国立博物館の間を無料シャトルバスが運行します。
*乗車には展覧会チケットの提示が必要


MOMATコレクション「美術館の春まつり」もお見逃しなく。


茶碗と茶室―茶の湯に未来はあるか (とんぼの本)

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「草間彌生 わが永遠の魂」
国立新美術館で開催中の
「草間彌生 わが永遠の魂」展に行って来ました。


http://kusama2017.jp/

2004年に森美術館で開催した草間彌生の大回顧展「クサマトリックス」から9年。再び六本木の地で草間彌生展が開催されています。

この間、他の美術館でも「草間彌生展」は数多く開催され、また十和田市現代美術館をはじめとするパブリックアートとして草間作品に触れる機会が格段に増えました。

と、同時に草間彌生に対する人々の捉え方、印象もかなり変化したように思えます。



それまでは、ともすれば「変人」扱いを受けていた草間に対し、今ではその真逆。尊敬するとか、可愛いとかこれまでの草間評とはまるで違う言葉がネット上で数多く見られます。

にわかに信じられないかもしれませんが、Instagramで「草間彌生」と検索するだけで一目瞭然です。若い女性からおじさんまで実に幅広い層の人から驚くべき支持を得ています。

2月22日から始まったばかりの「草間彌生 わが永遠の魂」展もすでに大人気となっており、チケットを求める人の列やグッズを購入するために1時間近く並ぶ人も。

この草間彌生ブームを一番驚いているのはご本人かもしれません。


草間彌生 連作「わが永遠の魂」

連作「わが永遠の魂」が130枚以上展示室の壁にびっしりと並ぶ様は壮観です。と同時にここは草間彌生の頭の中に入り込んでしまったかのような錯覚に陥ります。

一枚一枚にきちんと作品タイトルがついているので、それと合わせて観るとより一層楽しめ、草間が日々何を考えているのかが分かります。

幾つかタイトル書いておきますね。

恋のはじまり
いまわしい戦争のあとでは幸福で心が一杯になるばかり
天国に咲く花
私の愛する星の精
わたしの大好きな眼たち
星は語っている
みんなは平和を求めている
海底の物語
私の愛する人々
静寂の中で生きる
しのびがたい愛の行方
行こう、空の彼方へ



草間彌生 連作「わが永遠の魂」

草間の頭の中と前述しましたが、しばらく作品群の中に身を置いていると、まるで草間彌生の胎内の中にいるような気分にさせれます。

包み込まれるような不思議な温かさを草間作品から感じたのは今回が初めての経験でした。現在の草間人気の秘密の一端を垣間見た気がします。

さて、この展示空間は展覧会のいわば「つかみ」であると同時に「主菜」でもあります。皆に愛される草間がどのように誕生したかを展示室をぐるりと回る形で見せていく上手い構成となっています。

展覧会の構成は以下の通りです。

1:21世紀の草間彌生(1)
2:初期作品
3:ニューヨーク時代 1957-73
4:21世紀の草間彌生(2)
5:帰国後の作品 1970-2000
展示室外の展示



「2:初期作品」展示風景


「3:ニューヨーク時代 1957-73」展示風景


草間彌生《生命の輝きに満ちて》2011年

今回の「草間彌生展」で初めて草間の過去作品に触れる方も多いはずです。可愛らしい南瓜を創り出した草間とはかけ離れた印象を受けるかもしれません。

しかし、幻聴幻覚に悩んだ少女時代や、強迫観念に苛まれたNY時代のダークな草間作品があってこそ、今の草間があるのです。

今や、2016年『タイム』誌「世界で最も影響力のある100人」に選出され、文化勲章を受章するに至った草間。「クサマトリックス」の頃とは隔世の感があります。

88歳となった草間作品は観る者に尋常ではないエネルギーを与えてくれます。

今年(2017年)必見の展覧会であること間違いありません。「草間彌生 わが永遠の魂」展は5月22日までです。是非!


国立新美術館開館10周年
「草間彌生 わが永遠の魂」


会期:2017年2月22日(水)〜5月22日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
開館時間:午前10時〜午後6時(金曜日は午後8時)
4月29日(土・祝)〜5月7日(日)は、毎日午後8時まで開館、
入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日 ※但し、5月2日(火)は開館
主催:国立新美術館、朝日新聞社、テレビ朝日
協賛:鹿島建設、岡村印刷工業
協力:草間彌生スタジオ、パナソニック、TOKYO FM
展覧会公式サイト:http://kusama2017.jp/


一部撮影可能エリアが設けられています。


無限の網―草間彌生自伝 (新潮文庫)

草間彌生は本もたくさん出していますが、中でもこれは読んでおくべき一冊です。

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| 展覧会 | 23:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
「君の名は。」展
松屋銀座(MATSUYA GINZA)で開催中の
新海誠監督作品「君の名は。」展に行って来ました。


http://www.matsuya.com/m_ginza/

昨年、爆発的なヒットとなった映画「君の名は。」。現在でも映画館で上映されているとて息の長い作品であるとともに、一度ならず二度、三度と観返すたびに新たな発見や繋がりか見えてくる完成度の高い作品です。

一時のブームは去りましたが、「君の名は。」の制作過程の一端を紹介する展覧会が松屋銀座で開催されています。

アニメ映画の展覧会の中ではかなり硬派な作りでした。派手な印象は全く受けません。期待に胸をふくらませて行くともしかすると肩透かしを食らうかもしれません。


監督・新海誠による本作の絵コンテ
©2016「君の名は。」製作委員会


新海誠監督の細かな指示が書き込まれた絵コンテ。

ある程度予想はしていましたが、ここまで細かな指示が書き込まれているとは驚きました。監督自身の強いこだわりが大ヒットを生み出しと言っても過言ではありません。


監督・新海誠による初期イメージボード
©2016「君の名は。」製作委員会

また、当初は「夢と知りせばー男女とりかえばや物語」といったタイトルであったことなどを示す、初期設定資料も展示されています。

これは面白くてついつい読み込んでしまいました。古典を題材としたタイトル「夢と知りせば」これはこれで良い雰囲気を持っています。

それにしてもタイトルが違うだけで、内容までがらりと変わってしまいそうですね。やはり「君の名は。」は「君の名は。」でなくては。


劇中重要な役割を果たす「組紐(くみ紐)」は当初から企画書に登場していました。

展覧会会場構成は以下の通りです。

物語
・新海監督による「君の名は。」の企画書
・新海監督による絵コンテ
人物
・作画監督:安藤雅司によるキャラクター設定
・安藤雅司による本編のレイアウト作監修正
・田中将賀によるOPのレイアウト作監修正
・色彩設定:三木陽子らによる色指定表
・プロップ設定:岩崎たいすけらによる小物設定資料
舞台
風景
音楽


新海誠監督だけでなく、この映画を創り上げたスタッフに注目している点がとても新鮮でした。役割分担がばっちりと決まっていることがはっきりと見て取れます。



瞳の表現ひとつとってもこれだけ詳細な設定に基づいて描かれているのです。スクリーン全体から美しさを感じた映画でしたが、こうした細かな点にも手を抜くどころか、逆に心血注いでいるからこそ完成度の高い作品となったのでしょう。

「君の名は。」のこれまで語られて来なかった人気の秘密を知ることの出来る展覧会です。

新海誠監督作品「君の名は。」展は、3月20日までです。狭い会場に資料がびっしりと展示されています。


新海誠監督作品「君の名は。」展

期間:2017年3月 8日(水)−3月20日(月)
※最終日は17:00閉場、入場は閉場の30分前まで。
場所:松屋銀座8階イベントスクエア
http://www.matsuya.com/m_ginza/
主催:朝日新聞社
協力:コミックス・ウェーブ・フィルム、東宝

会場と同じ階にある「イタリア料理&カフェ イ プリミ ギンザ」ではバラエティー豊かな「君の名は。」をイメージしたメニューが用意されています。


憧れパンケーキ(瀧になった三葉が憧れのカフェで食べていたパンケーキ・イプリミ風)
星降る夜のデザートプレート(瀧と三葉をイメージした2種のケーキ夜空の月アイスと彗星ソース添え)
彗星ソーダ瀧(ブルー)/三葉(レッド)
http://iprimi.jp/ginza/


新海 誠Walker ウォーカームック

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| 展覧会 | 21:50 | comments(0) | trackbacks(0) |
「三井家のおひなさま」展
三井記念美術館で開催中の
「三井家のおひなさま」展(特集展示 三井家の別荘・城山荘の想い出)に行って来ました。


http://www.mitsui-museum.jp/

毎年恒例の三井記念美術館のおひなさまの展覧会。一年が経つのは早いな〜と去年会場でため息ついたと思ったのがついこの前のことのよう。更に一年が経過し「三井家のおひなさま」展に。

毎年毎年存在確認のようにこの展覧会に足を運んでいますが、いつ来ても新たな発見や初めて目にするものがありちょっと得した気分にさせてくれます。流石三井家懐が深いです。

今年の目玉はなんといっても「特集展示 三井家の別荘・城山荘の想い出」です。


城山荘本館

三井総領家の別邸「城山荘(じょうざんそう)」が神奈川県中郡大磯町にありました。広大なその敷地には日本庭園、茶室、そして洋館などが建ち、富士山や箱根、伊豆、相模湾を一望できたそうです。

現在では、神奈川県立大磯城山公園として多くの人々の憩いの場となっています。
http://www.kanagawa-park.or.jp/ooisojoyama/

神奈川県立 大磯城山公園 三井家の軌跡に馳せる想い

大きな展示室7でこの城山荘に関する歴史的資料や貴重な当時の写真が展示されているのです。愛らしいお雛様を観に行ったら最後の展示室にお宝建築資料があってびっくりしました。

こうした嬉しい誤算があるから展覧会巡りはやめられません。
昭和初期には、城山荘の敷地は38000坪といわれるほどの規模となり、昭和8年に城山荘新館の造営に着手し、山の地形を利用した回遊式の庭園と、古社寺の古材を利用した高棟好みの様々な建築が建てられました。ここでは、写真パネルと記録映像「城山荘の想い出〜東伏見宮妃殿下御訪問〜」で在りし日の城山荘を紹介し、城山荘内に永楽即全氏を招いて築かれた窯で焼かれた城山焼の作品を展示します。
観覧順序が逆になりましたが、展示室1・2・3では三井記念美術館所蔵の茶道具が展示されています。

昨年(2016年)に重要文化財に新指定されたばかりの「粉引茶碗 三好粉引」も特別公開されています。こちらも必見んです。

展覧会の構成は以下の通りです。

・館蔵品の茶道具
・三井家のおひなさま
・館蔵品の絵画
・特集展示 三井家の別荘・城山荘の想い出



内裏雛」五世大木平藏製 昭和9年(1934)

お雛様をメインに茶道具や歴史的建造物の記録まで幅広い展示ですが、不思議とまとまりのある空間となっていました。三井記念美術館独特の居心地の良さが体感できるのも「三井家のおひなさま」展の魅力です。

子供さんが大きくなり、嫁いだりしご自宅にひな人形を飾らなくなったお宅も多いのではないでしょうか。弥生にお雛様を観ないとどこか寂しい気になります。

桃の節句は終わりましたが、三井記念美術館でたっぷりじっくり様々なお雛様を愛でて下さい。そうそうお内裏様とお雛様の後ろに立つ屏風に描かれた絵もそれぞれ違い興味深いものがありました。

「三井家のおひなさま」展は4月2日まで開催しています。


「三井家のおひなさま」展
特集展示 三井家の別荘・城山荘の想い出


開催期間:2017年2月18日(土)〜4月2日(日)
開館時間:10:00〜17:00
※入館は16:30まで
休館日:月曜日、2月26日、3月21日
※3月20日は開館
会場:三井記念美術館
http://www.mitsui-museum.jp/
主催:三井記念美術館


上梓したばかりの本『カフェのある美術館 素敵な時間をたのしむ』にて、三井記念美術館のミュージアムカフェも紹介しています。

重要文化財の中でお茶やスイーツをいただけるとても贅沢なカフェです。


カフェのある美術館 素敵な時間をたのしむ

『カフェのある美術館』は美術館・博物館(または文学館)に併設されたカフェを紹介する初めての本です。それぞれカフェだけでなく、美術館の建物から所蔵作品、見どころまでオールカラーで紹介しています。



在庫を切らしている書店さんが多いようです。最も確実なのはAmazonかな。『カフェのある美術館

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| 展覧会 | 22:35 | comments(0) | trackbacks(0) |
「ミュシャ展」
国立新美術館で開催中の
国立新美術館開館10周年 チェコ文化年事業「ミュシャ展」に行って来ました。


http://www.mucha2017.jp/

願い続けていれば夢は必ず叶う。そんなお伽話のようなことが現実のものとなりました。アルフォンス・ミュシャの傑作中の傑作「スラヴ叙事詩」全20作品がチェコ、プラハより初来日を果たしています。

ミュシャの傑作中の傑作「スラヴ叙事詩」全20点、初来日決定!

昨年の夏、このコラムを書いているときはまだ本当にやって来るのか半信半疑で、祈るような思いを込め綴りました。それが晴れて現実のものとなったのです。


アルフォンス・ミュシャ《スラヴ叙事詩「東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン」》 1926年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery

全20枚から成る《スラヴ叙事詩》は壁画ではなくテンペラ技法でカンヴァスに描かれています。20枚それぞれのサイズがまちまちなのは、第一次世界大戦の影響が大きかったと言われています。

これまで「ミュシャ展」は数多く開催され、展覧会のたびに大きな話題となり、大勢の人にミュシャ芸術の素晴らしさ、美しさを伝えてきました。

ところが、ミュシャの傑作中の傑作である《スラブ叙事詩》はこれまで一度も日本にやって来たことがありません。理由は明確です。作品が大き過ぎるのです。


アルフォンス・ミュシャ《スラヴ叙事詩「原故郷のスラヴ民族」》1912年 プラハ市立美術館

こちらの作品、縦610cm、横810cmもあります。

《スラブ叙事詩》はそれぞれサイズはまちまちですが、小さな作品であっても軽く2メートルは超えます。そして最も大きな作品となると縦6メートル、横8メートルという近代絵画では考えられないほどの巨大なサイズ。鑑賞者が小人のように見えます。

また、サイズが大きいだでなく以下のような問題がからみ、2012年まで現地プラハでもきちんと観ることが出来なかった作品なのです。

“《スラヴ叙事詩》は1928年にプラハ市に引き渡される時、これを常時展示する専用のスペースを作ることが条件とされたが、その条件は果たされず、特に社会主義時代にはこの作品は冷遇され、展示されることもほとんどなかった。ようやく戦後の1960年代に入り、モラヴィアのクルムロフ城に全20点が展示さていた。しかし、アクセスの悪い所で、ミュシャとパトロンのクレーンが望んだようにプラハ市に安住の地を得ることが久しく望まれていたが、最近、作品はすべてプラハ市に集められ、現在ようやくその第一歩を踏み出したところである。”
ミュシャ作品集―パリから祖国モラヴィアへ』より引用。


「ミュシャ展」展示会場風景

ミュシャといえば、ポスターや装飾的な美を追求した側面だけがクローズアップされがちですが、実は祖国(チェコ)に対する思い入れが非常に強い人で、パリで大成功をおさめたにも関わらず、チェコへ戻り祖国のために後半生を捧げました。

ナショナル・アイデンティティの塊のような作品がこの「スラブ叙事詩」です。

スラブ民族の歴史を知らずとも、ミュシャの祖国を愛する思いはいやというほど画面から伝わってきます。作品の前に立つと「今の自分で良いのですか?」と詰問されているような感じさえします。


《スラヴ叙事詩》を制作するアルフォンス・ミュシャ、ズビロフ城アトリエにて、1923年

“ミュシャは自由と独立を求める闘いを続ける中で、チェコおよびスラヴ民族の歴史から主題を得た壮大な絵画の連作を創作することを決意します。1910年に50歳でチェコに戻ったミュシャは、翌年、プラハ近郊のズビロフ城にアトリエを構え、《スラヴ叙事詩》の制作に取り掛かり、1928年、チェコスロヴァキア独立10周年を祝して、完成した連作全作品をプラハの見本市宮殿で公開しました。”
ミュシャ作品集―パリから祖国モラヴィアへ』より引用。


アルフォンス・ミュシャ《スラヴ叙事詩「聖アトス山」》1926年 (部分)

「スラブ叙事詩」の見どころは描かれている人々の「目力」です!

伊藤若冲が「動植綵絵」を仏のために全身全霊を込めて描いたのと同様に、「スラブ叙事詩」がミュシャがある意味、命を賭して描き上げた大パノラマです。

我々はどうしても目先の利益やお金に左右され行動しがちですが、若冲にせよミュシャの「スラブ叙事詩」にせよそうした段階から幾つも上のステージで無心に描かれた作品だからこそ、心を強く打つものがあるのです。

国立新美術館の2階展示室の天井は、普段ですと無駄に高いなと思ってしまいますが、「スラブ叙事詩」のためにあの高さにしてくれたのではないかしらと勘ぐってしまうほど、見事はまっています。


スラヴ叙事詩展示風景タイムラプス動画

これは、観に行かれる前に必見です。ぐるぐる巻きにして空輸してきたのですね〜そしてこのようにして展示するとは!! 

「ミュシャ展」展覧会の構成は以下の通りです。

スラブ叙事詩
1:ミュシャとアール・ヌーヴォー
2:世紀末の祝祭
3:独立のための闘い
4:習作と出版物


まず、出し惜しみせずに初っ端から「スラブ叙事詩」20点が迫ってきます。心の準備もまだまだ出来ていなのに…

展覧会で酔ったのこの「ミュシャ展」が最初で最後となるでしょう。


「ミュシャ展」展示会場風景

「スラブ叙事詩」20点全て見終えるのに1時間は必ず必要です。それと出来れば双眼鏡。とにかく大きいので常に上を見上げての鑑賞となります。

後半の1章〜4章までもとても見応えがあります。「スラブ叙事詩」の余韻に浸りつつ、ミュシャの作家としての生涯を振り返る内容です。


アルフォンス・ミュシャ「『四つの花』カーネーション、ユリ、バラ、アイリス」1897年


アルフォンス・ミュシャ「ラ・ナチュール」1899-1900年

ロダンと親交のあったミュシャはこうしたブロンズ像も制作しています。2次元はもちろん、3次元でもミュシャ作品の魅力は衰えませんね。

そうそう、海外から作品を借用し開催される日本の展覧会では、当然ですが写真撮影は許されませんでした。しかし今回、特別に「スラブ叙事詩」4作品は、撮影可能となっています。



「スラブ叙事詩」がチェコ以外、ましてや日本で観られるだけでも大事件なのに、写真撮影もOKとは時代が変わったな〜と強く感じます。

とにかくうれしいことに変わりありません。カメラ、iPhoneお忘れなく!(撮影可能エリアは他とは区切られています。)


アルフォンス・ミュシャ「クオ・ヴァディス」1904年

「スラヴ叙事詩」全20作品がまとめて日本で観られるのです!パネル展示や写真展示ではありませんよ。本物がチェコからやってきました。これははっきり言って事件です。

展覧会を長く見続けて来ましたが、まさか「スラヴ叙事詩」を日本の美術館で観られる日が来ようとは夢にも思いませんでした。

願い続けていれば夢は必ず叶う。まさにお伽話しのような展覧会です。「ミュシャ展」は6月5日までです。混雑してもこの大きさなら大丈夫かな〜でもなるべくお早めに!


国立新美術館開館10周年 チェコ文化年事業
「ミュシャ展」


会期:2017年3月8日(水)〜6月5日(月)
休館日:毎週火曜日
開館時間:午前10時〜午後6時(毎週金曜日は午後8時まで)
※入場は閉館の30分前まで
会場:国立新美術館企画展示室2E(〒106-8558東京都港区六本木7-22-2)
(会場HP:http://www.nact.jp/)
主催:国立新美術館、プラ八市、プラ八市立美術館、NHK,NHKプロモーション、朝日新聞社
後援:外務省、チェコ共和国大使館、チェコセンター
協賛:日本写真印刷
特別協力:伊藤忠商事株式会社、堺市
協力:ルフトハンザ カーゴ AG
監修:ヴラスタ・チハーコヴァー(美術評論家)、本橋弥生(国立新美術館主任研究員)

公式サイト:http://www.mucha2017.jp/

展覧会のカタログ(図録)は一般書籍として書店やAmazonでも購入可能です。この内容にこのボリュームでこの値段は安過ぎます。


ミュシャ展
国立新美術館 (編集), NHK (編集), NHKプロモーション (編集), 求龍堂 (編集)

アール・ヌーヴォーを代表する芸術家ミュシャ(ムハ)。パリで活躍したミュシャが、故郷チェコに帰り傑作《スラヴ叙事詩》を描くに至るまでの足跡を時代ごとに作品で紹介。チェコ国交回復記念60周年を記念し国外不出の《スラヴ叙事詩》全20点を展示する国立新美術館『ミュシャ展』公式図録兼書籍。


チェコの子供たちは、誰もがクルテクを通り過ぎて成長していくそうです。チェコの道徳となっている「もぐらのクルテク」とミュシャ展のコラボグッズ。

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編集・執筆を務めた『カフェのある美術館 素敵な時間を楽しむ』(世界文化社)が2月18日に発売になります。


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「国宝 一遍聖絵」が全巻全段展示されます!
美術館でコスプレ!
Ingress(イングレス)でミュージアム巡り。
2015年、都内で観られる西洋絵画の展覧会
プロが選ぶ「2014年 ベスト展覧会」
かみさんが選ぶ「2014年 ベスト展覧会」
2014年 展覧会ベスト10


パリ行って来ました
オランダ行って来ました
 

BLUE HEAVEN(本館)

『文藝春秋』に寄稿しました。

『AERA』に載りました。

「マウリッツハイス美術館展公式ガイドブック」編集・一部執筆しました

「ザ・シネマ」に寄稿しました。

トークショーに出演しました

日経に掲載されました

朝日新聞に掲載されました

再び日経に掲載されました

「美連協ニュース」寄稿

『アートコレクター』で紹介されました

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moon phases
 
   
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