青い日記帳 

  
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学生無料!「ジュリア・マーガレット・キャメロン展」 記念講演会
三菱一号館美術館で2016年7月2日よりスタートする「From Life―写真に生命を吹き込んだ女性 ジュリア・マーガレット・キャメロン展」


http://mimt.jp/cameron/

キャメロンの生誕200年を記念し、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が企画した世界6カ国を回る国際巡回展であり、日本初の回顧展です。


ジュリア・マーガレット・キャメロン《五月祭》1866年頃
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵
©Victoria and Albert Museum, London

1863年末に初めてカメラを手にしたジュリア・マガレット・キャメロン(1815-79)は、記録媒体にすぎなかった写真を、芸術の次元にまで引き上げようと試みた、写真史上重要な人物です。

インドのカルカッタに生まれ、英国の上層中流階級で社交生活を謳歌していた彼女は、48歳にして独学で写真術を身につけ、精力的に制作活動を展開します。

そして、生気あふれる人物表現や巨匠画家に倣った構図を追求するなかで辿りついたのは、意図的に焦点をぼかし、ネガに傷をつけ、手作業の痕跡をあえて残す、といった革新的な手法でした。



ジュリア・マーガレット・キャメロン《ハーバート・ダックワース夫人》1872年
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵
©Victoria and Albert Museum, London

「キャメロン展」開催に際し、記念講演会が予定されています。マルタ・ワイス氏(ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館学芸員)や、河村錠一郎氏(「キャメロン展」図録監修者、一橋大学名誉教授)など豪華な顔ぶれの講演会が、以下のように予定されています。

「From Life―写真に生命を吹き込んだ女性 ジュリア・マーガレット・キャメロン展」記念講演会

1.キャメロン展 記念講演会第1弾 マルタ・ワイス氏講演会

「キャメロン展」の企画者であり、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館学芸員のマルタ・ワイス氏が、キャメロン作品の魅力、見どころなどについて語ります。本展は世界巡回の展覧会で、本展出品作品の所蔵館であるヴィクトリア・アンド・アルバート博物館での開催の様子をはじめ、他国での本展開催の様子も交えてお話しいただきます。

日時:2016年7月2日(土)14:00〜15:30(受付開始13:30)
会場:コンファレンススクエアエムプラス 「サクセス」(※フリードリンクサービス有)
(千代田区丸の内2-5-2三菱ビル1階)
(地図)http://www.marunouchi-hc.jp/emplus/access.html
講師:マルタ・ワイス氏(本展企画者、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館写真部門学芸員)
定員:120名(MSSサポーター優先枠20名、一般枠100名/事前申込制・先着順)
参加費:1,000円(税込、MSSサポーター・一般共通)・学生無料(要学生証持参)
主催:三菱一号館美術館
言語:英語(日本語逐次通訳付)


マルタ・ワイス学芸員
マルタ・ワイス氏より、展覧会開催に向けて

2.キャメロン展 記念講演会第2弾 河村錠一郎氏講演会

「写真をアートにした最初の女性−キャメロンとヴィクトリア朝のミューズたち」
「キャメロン展」図録監修者の河村錠一郎氏が、ジュリア・マーガレット・キャメロンと、キャメロンが生きた時代であり大英帝国が最も栄えた時代であるヴィクトリア朝を切り口に、キャメロン展を語ります。

日時:2016年7月23日(土)14:00〜15:30(受付開始13:30)
会場:コンファレンススクエアエムプラス 「サクセス」(※フリードリンクサービス有)
(千代田区丸の内2-5-2三菱ビル1階)
(地図)http://www.marunouchi-hc.jp/emplus/access.html
講師:河村 錠一郎氏(本展図録監修者、一橋大学名誉教授)
定員:120名(MSSサポーター優先枠20名、一般枠100名/事前申込制・先着順)
参加費:1,000円(税込、・MSSサポーター・一般共通)・学生無料(要学生証持参)
主催:三菱一号館美術館


ジュリア・マーガレット・キャメロン《ポールとヴィルジニー》1864年
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵
©Victoria and Albert Museum, London

上記1.2.共通申込み方法
<MSSサポーターの方>
MSSサポーターカードの裏面に記載されたMSS連絡窓口へお電話にてお申込みください。
受付時間:平日9:30〜17:00(但し、12:00〜13:00を除く)
・サポーター優先枠はサポーターご本人様分のみのお申込みとなります。
・サポーター優先枠が満席の場合は下記の方法で一般枠をお申込みください。
<一般の方>
1)電話予約:03-5777-8600(ハローダイヤル) 受付時間:8:00〜22:00
2)オンライン予約:三菱一号館美術館ウェブサイトイベントページ(http://mimt.jp/event/)に掲載のURLよりお申込みください。
<学生の方>
電話予約:03-5777-8600(ハローダイヤル) 受付時間:8:00〜22:00
※予約の際、学生でいらっしゃる旨をお伝えください。当日は学生証または通学定期券をご持参ください。

学生の諸君!今回の特別講演会はなんと聴講無料ですぞ!!

これは是非ともどちらも聴いておかねばならなでしょう〜EU離脱の是非を問う国民投票の結果も出たこんな日こそ、ロンドンに目を向けましょう。

勿論、学生以外の「大人」の方もね。


ジュリア・マーガレット・キャメロン《アニー》1864年
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵
©Victoria and Albert Museum, London

そうそうもうひとつ、三菱一号館美術館担当学芸員さんによるレクチャーも行われます。

3.担当学芸員によるレクチャー

展覧会を語る「From Life―写真に生命を吹き込んだ女性 ジュリア・マーガレット・キャメロン展」
担当学芸員が、ジュリア・マーガレット・キャメロン展の見どころ、魅力などについて語ります。

日時:2016年8月4日(木)14:00〜15:30(受付開始13:30)
会場:コンファレンススクエアエムプラス「サクセス」(※フリードリンクサービス有)
(千代田区丸の内2-5-2三菱ビル1階)
(地図)http://www.marunouchi-hc.jp/emplus/access.html
講師:加藤 明子(三菱一号館美術館 本展担当学芸員)
定員:120名(MSSサポーター優先枠20名、一般枠100名/事前申込制・先着順)
参加費:無料
申込受付開始:2016年6月13日(金)
申込方法:
<MSSの方>
MSSサポーターカードの裏面に記載されたMSS連絡窓口へお電話にてお申込みください。
受付時間:平日9:30〜17:00(但し、12:00〜13:00を除く)
・サポーター優先枠はサポーターご本人様分のみのお申込みとなります。
・サポーター優先枠が満席の場合は下記の方法で一般枠をお申込みください。
<一般の方>
電話予約 03-5777-8600(ハローダイヤル)受付時間:8:00〜22:00

※上記講演会の情報はいずれも三菱一号館美術館ウェブサイトイベントページに掲載されています。


ジュリア・マーガレット・キャメロン《ミューズの囁き》1865年
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館蔵
©Victoria and Albert Museum, London

「From Life―写真に生命を吹き込んだ女性 ジュリア・マーガレット・キャメロン展」

会期:2016年7月2日(土)〜9月19日(月・祝)
会場:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2) 
http://mimt.jp/
主催:三菱一号館美術館、テレビ朝日、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
公式サイト:http://mimt.jp/cameron/

キャメロン絶頂期の極めて貴重な限定オリジナルプリント(ヴィンテジプリント)をはじめ、約150点の写真作品や書簡などの関連資料を通じて、キャメロンの制作意図を鮮やかに際立たせつつ、彼女が切り拓いた新たな芸術表現の地平を展覧します。

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| 講演会 | 21:58 | comments(0) | trackbacks(0) |
小学館『日本美術全集』完結記念 山下裕二先生インタビュー
20年ぶりに刊行された小学館の『日本美術全集』も2012年の第1回配本「法隆寺と奈良の寺院」から足掛け5年の歳月をかけ、この春に最終巻「日本美術の現在・未来」まで全20巻が出そろいました。


日本美術全集20 日本美術の現在・未来

『日本美術全集』20巻の完結を記念して、編集委員を務め実質陣頭指揮をとられた山下裕二先生(明治学院大学教授)にお話を伺って来ました。

インタビュー嫌いの山下先生ですが、普段通り構えることなくあんな話、こんな話と聞かせて下さいました。脱線し過ぎて載せられないお話もありますが…

じっくりと読んで下さいませ。

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山下裕二先生インタビュー(前編)
http://nichibi.webshogakukan.com/bluediary/2016/04/post-12.html

インタビュー前半の中で最も注目して欲しい点は、『日本美術全集』20巻最後のページに記されたこの言葉についてのお話です。


「To be continued…」

紙媒体で最後の日本美術全集と囁かれていますが、日本美術自体がここで終わりを迎えるわけではありません。これから先も何十年、何百年と続いていくはずです。

そうした日本美術への想いを込め、また最終巻が出たあとも、『日本美術全集』は別の形で継続していくことを示しているのです。


辻惟雄先生×山下裕二先生
『日本美術全集』完結記念文化講演会にて。

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山下裕二先生インタビュー(前編)
http://nichibi.webshogakukan.com/bluediary/2016/04/post-12.html

1時間くらいの予定があれよあれよと時間が経過し、長時間にわたるインタビューとなりました。途中休憩をはさんだほどです。後編も近日中にアップします。


日本美術全集20 日本美術の現在・未来

そう言えば、山下先生の講演会情報や近況を紹介するTwitterアカウント「(公式)山下裕二研究室」はもうフォローされましたか?!


https://twitter.com/yuji_kenkyu

日本美術の応援団長として粉骨砕身・東奔西走し活躍されている山下先生のこれだけのインタビュー記事が読めるのは、他にはありません!(とにかくお忙しいですからね〜)

こちらもあわせて是非!

山下裕二先生書斎訪問(1)書斎編
山下裕二先生書斎訪問(2)コレクション編
山下裕二先生書斎訪問(3)『日本美術全集』編

椹木野衣先生インタビュー(1)
椹木野衣先生インタビュー(2)
椹木野衣先生インタビュー(3)


日本美術全集 Eセット 17-20巻(4巻セット) (日本美術全集))


公式Facebookページ『日本美術全集 編集戦記』
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萬美術屋 安村敏信の私的日本美術

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| 講演会 | 22:40 | comments(0) | trackbacks(0) |
名古屋ボストン美術館「ミレー展」館長対談
この4月に開館15周年を迎えた名古屋ボストン美術館(名古屋市中区金山町1-1-1)では、「開館15周年記念 ボストン美術館 ミレー展 バルビゾン村とフォンテーヌブローの森から」を開催中です(8月31日(日)まで)。


webサイト:www.nagoya-boston.or.jp/
Facebook: facebook.com/nagoya.boston.museum

今年、生誕200年を迎えるジャン=フランソワ・ミレー(1814-1875年)。

会場では、充実したミレー・コレクションを誇るボストン美術館所蔵の、ミレーの作品を軸に、バルビゾン村とフォンテーヌブローの森に集い19世紀フランス絵画史に大きな足跡を残したルソー、コロー、クールベ、デュプレら20作家64作品が紹介されています。

同時代から後世に活躍した画家と一緒に鑑賞することで、ミレーとバルビゾン派の功績をより深く知ることができる大変よく組み上げられた展示となっています。

展覧会構成
第犠蓮У霈▲潺譟悉論
第蕎蓮Д侫ンテーヌブローの森
第珪蓮Д丱襯咼哨鸞
第絃蓮Р板蹐両襍
第江蓮Д潺譟爾琉篁



ジャン=フランソワ・ミレー《自画像》1840-41年頃
Museum purchase with funds donated by contribution 93.154
Photograph ©2014 Museum of Fine Arts, Boston.

展覧会の開幕に合わせて来日したボストン美術館のマルコム・ロジャース館長と名古屋ボストン美術館の馬場駿吉館長が、プレス向けに対談を行いました。

対談では、ボストン美術館の充実したミレー・コレクション形成の経緯や作品の解説に加え、15周年を迎えたパートナーシップについて話されました。

この貴重な機会のレポートを今日はお届けしたいと思います。ミレーファンのみならず、西洋美術好きの方、必読です!

【館長対談レポート】


名古屋ボストン美術館、馬場駿吉館長とボストン美術館、マルコム・ロジャース館長

■ボストン美術館のミレー・コレクションについて(マルコム・ロジャース館長)

ボストン美術館はミレーの油彩、パステル、素描、水彩など170点の作品群を所蔵しています。これはミレーの母国フランスのパリのオルセー、ルーブル美術館に次ぐ規模です。この包括的なコレクションは、先見の明を持ったボストンのコレクターにより形成されました。

ボストンのコレクターはバルビゾン派のリーダーであったミレーを、若い頃から贔屓にしていました。ウイリアム・モリス・ハントはボストンの著名なコレクターの一人です。画家でもあったハントはミレーに直接学び、友人関係にありました。ハントは《種をまく人》を1850-51年のパリのサロン(官展)で見出し、たったの60ドルで購入。

ハント他、先見性のあったコレクターたちは、ボストン美術館を去るときにミレーの包括的なコレクションを寄贈しました。本展のミレーの各時代を代表する作品群により、ボストン市民がミレーに対して抱いてきた情熱を感じていただけると嬉しいです。

■ボストン美術館の三大ミレーについて(マルコム・ロジャース館長)

・《種をまく人》


ジャン=フランソワ・ミレー《種をまく人》1850年 
Gift of Quincy Adams Shaw through Quincy Adams Shaw, Jr., and Mrs. Marian Shaw Haughton 17.1485
Photograph ©2014 Museum of Fine Arts, Boston.

《種をまく人》はミレーを最も象徴する作品の一つです。霜が降りる直前の11月頃の寒さが、服装とりわけ防寒用のブーツの藁から伝わってきます。ミレーは1840年代から油彩と版画の両方で何度もこの構図を作り上げています。本作は、ノルマンディのミレーの故郷グリュシーに滞在中のスケッチから構想されたと考えられます。

地平線上には2頭の牛と鋤を引っ張っている人物が、空には鳥が舞っています。種を撒いても鋤で土をかぶせる前に空に舞う鳥たちがすぐについばんでしまいそうです。種をまく農民の姿は堂々としており、革のようにかたく黒い肌は、太陽の下で精を出して働く生活を表しています。

ミレーは人物を抽象化することで、ある特定の人物ではなく、農民そのものを表したかったのではないでしょうか。1850-51年のサロン(官展)の評判は割れました。荘厳に描かれた農民の姿は、衝撃的だったのです。暗めの色調や粗雑な筆さばきも批判されましたが、そのような批評にも関わらずハントはサロン終了後即、《種をまく人》を購入します。同じような構図の作品は山梨県立美術館をはじめ他でも数点みられます。

・《羊飼いの娘》


ジャン=フランソワ・ミレー《羊飼いの娘》1870-73年頃
Gift of Samuel Dennis Warren 77.249
Photograph ©2014 Museum of Fine Arts, Boston.

《羊飼いの娘》はボストンで最も愛されている作品のひとつです。《種をまく人》の約20年後に描かれた1人姿の象徴的な作品で、普仏戦争中に故郷のノルマンディで描きました。物資が不足していた当時、他の作品のカンヴァスを犠牲にし、本作を描きました。その作品は、1848年に描き売れることがなかった《バビロンの捕囚》です。この事実は1983年に当館の修復室で行ったX線調査で明らかになりました。

岩に腰かけた若い羊飼いの少女が羊毛を紡ごうとしています。エプロンの色遣いは、当時勢いを増しつつあった印象派に影響を与えたのではないでしょうか。《種をまく人》同様、伝統を打ち破り、それまで聖職者や神々、女王などにのみ許されていた荘厳さや重々しい雰囲気を“低い”身分の農民に醸し出しています。今回の出品にあたって、古いニスや過去の修復の後を取り除く大規模な修復を行い、画家の筆跡をより明らかに見ることができるようになりました。

・《刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)》


ジャン=フランソワ・ミレー《刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)》1850-53年
Bequest of Mrs. Martin Brimmer 06.2421

この作品はミレーにとって大変重要な作品です。彼は本作のために3年以上を費やし、50以上の習作を描きました。1853年のサロンで認められ二等賞を獲得しました。初めての受賞です。

「ルツとボアズ」という副題からは旧約聖書の「ルツ記」の場面を構想したことを示しています。ルツは夫を亡くした後、義母と落穂ひろいをしながらの生活を余儀なくされました。そんな健気なルツの姿に、地主であったボアズは彼女を見初めます。画面左端のうな垂れたルツを、ボアズは農夫たちの食事の輪に、そして彼の人生いざなっています。

■両館長のお気に入りの作品について

偶然にも両館長のお気に入り作品は、ミレー《蕎麦の収穫、夏》でした!


ジャン=フランソワ・ミレー《ソバの収穫、夏》1868-74年
Gift of Quincy Adams Shaw through Quincy Adams

マルコム・ロジャース館長…
「穂を束ね、脱穀し、藁焼き」と、作物の収穫風景が一度に見ることができる一方、大人が農作業をしている背後で子供たちが犬と遊んでいるところなど、農業とは関係のないシーンが描かれているところが好きです。この油絵は、〈四季〉の4連作を意図されていましたが、《春》と《収穫、秋》だけが完成し、署名が入っています。本作《蕎麦の収穫、夏》と《冬》は署名がされないまま、画家が亡くなるまでアトリエに置かれていました。

馬場駿吉館長…
2001年に当館の開館3周年を記念し開催した「ミレー展」で本作が出品された時に、この作品がきっかけで脱サラして蕎麦屋を始めた人がおり、“人生を変えた作品”としてとても印象に残っています。

マルコム・ロジャース館長
コロー《フォンテーヌブローの森》


ジャン=バティスト・カミーユ・コロー《フォンテーヌブローの森》1846年
Gift of Mrs. Samuel Dennis Warren 90.199
Photograph ©2014 Museum of Fine Arts, Boston.

ミレーの作品とは違った意味で特にこの絵を挙げたいです。仕上がりの良さや細やかな描写で技術力の高さが光っています。1846年のサロンに崇高な主題ではなく極めて平凡な風景を描いた本作が出品されたのは画期的なことでした。数ある作品から2点を挙げたが他にも好きな作品がたくさんあります。この機会に皆さんもお好きな絵を見つけていただきたいです。

馬場駿吉館長
ミレー《洗濯女》


ジャン=フランソワ・ミレー《洗濯女》1855年頃
Gift of Mrs. Martin Brimmer 06.2422
Photograph ©2014 Museum of Fine Arts, Boston.

この作品には、夕暮れ時の労働をする女性が描かれています。背景に見える月がとても印象的です。以前に名古屋市美術館で開催された「池田遙邨展」が思い出されます。彼も自然を愛した画家で、同じような三日月が描かれた作品がありました。



■なぜ日本人はミレーが好き?(馬場駿吉館長)

日本人が持つ自然に対する畏敬の念に通じるものがあるからだと考えます。それは、朝日が昇ると手を合わせ、日が沈むと1日の感謝をする。大地の恵みによる季節の収穫をありがたく思う素朴な感じが日本人の感性と合っているのではないでしょうか。

働く農民たちの生活、身近な人々に対するミレーのまなざしが、我々日本人の根源的なものの思いと合致するのではないかと考えます。日本人が好きなゴッホも、農民の生活に関心を寄せ、市民の感覚で作品を描いています。そして、彼のルーツはミレーにあります。

私たち日本人の環境に対する思いは、ことに東日本大震災以降に大きく変わったといえます。震災直後、崩壊したと思われた美術や文化への関心。しかし、あれから3年余が経った今、人の生甲斐を支えるその力は再認識されています。本展が、自然の平穏を祈り、再生を促す美術・文化の役割について考える良い機会になることを祈っています。



■名古屋ボストン美術館開館15周年について(両館長)

1999年から始まった20年間のパートナーシップである名古屋ボストン美術館は、アメリカ初で唯一のアジアにおける姉妹館です。この15年間、ボストン美術館の百科事典的なコレクションを多くのお客様と分かち合うべく一緒に努力してきました。

これまで、およそ40もの展覧会を開催し、4,000点近くの作品を公開してきました。我々の関係が国際協力の象徴となれば嬉しいです。まだまだお見せしたい作品や学ぶことがあります。将来にわたってよい関係を続けていきたいです。

展覧会はすでに始まっています。誰しもが認めるミレーの代表作「種をまく人」がアメリカ、ボストンからやって来ているだけでなく、館長のお話のように他にも魅力的な作品揃いの展覧会となっています。混雑する前に名古屋ボストン美術館へgo!!


開館15周年記念 ボストン美術館 ミレー展 バルビゾン村とフォンテーヌブローの森から

会期:4月19日(土)〜 8月31日(日)
会場:名古屋ボストン美術館
http://www.nagoya-boston.or.jp
休館日:月曜日(祝休日場合は、翌日平日)、5/7、7/22(5/5、7/21は開館)
開館時間:平日 午前10時〜午後7時
祝休日午前10時〜午後5時
(入館は閉館の30分前まで)
展覧会特設ページ:http://www.nagoya-boston.or.jp/millet

名古屋ボストン美術館ブログも要チェックです!
http://www.nagoya-boston.or.jp/blog/



6月14日(土)には、日本を代表するミレーとバルビゾン派の研究者、井出洋一郎氏(府中市美術館館長)を迎え、ボストン美術館の《種をまく人》と日本にあるもう1枚の《種をまく人》をめぐる物語や、バルビゾン派が活躍した時代をお話しいただく講演会「ふたつの《種をまく人》をめぐって」も予定されています。

ふたつの《種をまく人》をめぐって
日時:6月14日(土)14:00〜15:30
講師:井出洋一郎氏(府中市美術館長、美術評論家)
会場:名古屋都市センター 11階ホール
定員:150名/聴講無料/要当日入館券/事前申込制

詳細および申込はこちらから。井出先生のお話を直接伺える絶好のチャンスです!


『「農民画家」ミレーの真実 』(NHK出版新書 427)
井出洋一郎(著) →レビュー

ミレーは論争の種をまく

19世紀フランスでは「醜い」と非難され、日本やアメリカでは「敬虔で道徳的」と礼賛されたミレー。同時代の画壇を震撼させた革新性、農民画に留まらない画業の多様性を明らかにしながら、毀誉褒貶に満ちた「清貧の農民画家」の真の姿に迫る。ミレー生誕200年目に贈る、美術ファン必読の一冊。


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| 講演会 | 16:24 | comments(0) | trackbacks(0) |
山下裕二&井浦新、日本美術応援団入団記念トークショー
青山スパイラルホールで開催された、「日本美術全集」刊行記念企画スペシャル対談 日本美術全集VS日曜美術館  山下裕二&井浦新、日本美術応援団入団記念トークショーに行って来ました。



小学館『日本美術全集』公式サイト
NHK「日曜美術館」公式サイト

山下先生と井浦新さんのトークショーは今回が3度目。

1度目はBunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「白隠展」関連トークイベント【山下教授の特別課外授業】、2度目は山口県立美術館での井浦新×山下裕二『五百羅漢への旅

「「日本美術応援団」入団式でもあるので、本当は学生服を着てきて欲しかったな〜(笑)ところで、新さんは学生時代詰め襟だった?」(山下)

「ブレザータイプでした。学ラン着てくれば良かったですね、やっぱり…」(井浦)

因みに、「日本美術応援団」は山下裕二先生(日本美術応援団団長)、赤瀬川原平氏(団員1号)、南伸坊氏(団員2号)の3人構成でしたが、今回団員3号として井浦新さんを迎え入れることになりました。

「日曜美術館の司会を務めて一年が経つけど、あれってどういうスケジュールで収録しているの?」(山下)

「スケジュールはホントまちまちなんです。一週間に一回ということもあれば、週に二、三回と収録することも。かと思うと二週間も期間が空いたりもします。何名のものディレクター(チーム)が、それぞれに番組を作っているので、仕上がった順に収録となります。」(井浦)



「そうすると、かなりスケジュールを取られているよね?」(山下)

「うーーん。でも、まぁ、とにかく日曜美術館に出ることを僕自身が求めているので、逆により忙しくなりたいなと思います。」(井浦)

「でも、NHKってさ……やっぱ云うのやめておこう(笑) でも、普通は一年で交代だけど、聞くところによると来年も。。。」(山下)

「はい。続投させて頂くことになりました。」(井浦)

「良かったね〜〜(拍手)4月からもまた日曜美術館の顔として活躍する姿が見られるんだね。」(山下)

ここから先は、『日本美術全集』の掲載されている画像を刊行順にスライドで紹介しながら語り合って行きました。因みにこれが日本美術応援団「入団テスト」も兼ねていたのです。


小学館『日本美術全集』公式サイト

第1回配本 『2巻 法隆寺と奈良の寺院』

・法隆寺

・井浦新さんの大好きな円空も法隆寺を訪れている。
・法隆寺の金堂の写真は今回の全集のために新たに撮影。
・法隆寺は写真撮影に対するガードが堅く滅多なことでは撮影許可が下りない。
・今回は実に30年ぶりに新たに撮影することが出来た。
・学生時代修学旅行でも法隆寺を訪れたが「連れてこられた感」が強くきちんと観た記憶がない(井浦)
・学生時代、中国美術を勉強せずに日本美術を語る資格はないと口を酸っぱくして言われ色々と学んだが、今この歳になると、それでも日本独自のものがあるじゃないかと強く思うようになってきた。(山下)
・大人になってから気付いたことですが、仏像の衣紋の形、デザインを観ていて楽しめるポイントだな〜と思うようになりました。(井浦)
・藝大美術館で開催された「興福寺 仏頭展」のショップで買ってきたループタイを今日はしてきました。(井浦)

第2回配本 『14巻 若冲・応挙、みやこの奇想』

・伊藤若冲


・若冲の絵ってほんとアップに耐えるんですよ。「アジサイ」(『動植綵絵』)の部分をアップしてみると幅一ミリに満たない花々の輪郭線を塗り残しで表現していたり、虫食い穴を描いていたりと様々な発見がある。(山下)
・『動植綵絵』が京都・相国寺に里帰りし30幅が一挙公開された展覧会に井浦さんも観に行き、2,3時間行列に並んで観た。
・若冲ブームの最大のきっかけは2000年に京都国立博物館で開催された「若冲展」。企画した狩野先生自身がこんなにも多くのお客さんが観に来てくれるとは思ってもいなかった。
・ネット上でブームが広がった初めての江戸絵画。
・若冲と草間彌生は通ずるものがある。
・若冲の深層心理が投影されている。狙って描いた線でなく、にじみ出た線「若冲の生理的曲線」が随所に生きている。



・逆に曽我蕭白はこれでもか〜と狙って描いている対照的な絵師。
・「若冲と蕭白どちらが好き?」(山下)「う〜ん、迷うな〜〜愉しみ方が違うんですけど、でも、蕭白の絵を初めて観た時は、車に正面衝突されたかのようなものすごい衝撃を受けました。若冲は観れば観るほど深みにはまって行きます。」(井浦新)
・若冲は40歳から『動植綵絵』を描きはじめ10年かけて完成させた。若冲はこれを描いたら死ぬと思って描いていると思う。命がけで描いた作品。
・新さんも丁度今40歳、この10年で何をするかですよ!映画作ってよ。この時代の絵師たちが登場する映画を。誰の役を演じたい?「蘆雪か蕭白かな〜」若冲じゃないの?「若冲はもっと合う人がいるはずです。」こんな風にキャスト考えるだけでも楽しいね。



・曽我蕭白「群仙図屏風」は、山下先生との出会いとなった一枚。(井浦新)
・会田誠に通ずる世界観。この屏風絵の中にビン・ラディンに似ている人物がいる。そう云えば、会田誠もビン・ラディンに扮した作品作っているね。
・蕭白の活躍した伊勢周辺を旅する番組とか作りたいね。
・日曜美術館のアートの旅というコーナーで紹介するために先日、和歌山県の串本まで行って長沢芦雪の絵を観てきました。(井浦)



・長沢芦雪「白象黒牛図屏風」(プライスコレクション)は屏風を徐々に開いていくことの楽しさも有している。
・そうだ、芦雪の展覧会もやるよ!2017年愛知県美術館で。
・芦雪の師匠であった円山応挙が描いた「藤花図」(根津美術館)はものすごい早い筆で描かれているけどとにかく巧い!これは今年根津美術館で観られるから是非実物を。
・若冲、蕭白、蘆雪が注目をとかく浴びがちだが、その大元には応挙がいることを忘れてはいけない。
・18世紀の京都画壇の扇の要の位置にいるのは間違いなく応挙です。人格も円満で、懐も深い人だった。
・絶対的な円山応挙のような人がいたから、若冲、蕭白、蘆雪のような人が現れて来たんですね。(井浦新)


日本美術全集14 若冲・応挙、みやこの奇想 (日本美術全集(全20巻))

その他、スライドで紹介した作家または作品。

第3回配本 『13巻 宗達・光琳と桂離宮』

・俵屋宗達
・尾形光琳
・桂離宮

第4回配本 『10巻 黄金とわび』

・岩佐又兵衛
・長谷川等伯
・待庵



第5回配本 『3巻 東大寺・正倉院 と興福寺』

・不空羂索観音
・正倉院御物
・阿修羅像
最近、阿修羅像が浅田真央ちゃんがスピンしている姿にしか見えないんだ(笑)

第6回配本 『16巻  激動期の美術』

・狩野一信
・河鍋暁斎
・安本亀八

・石川雲蝶
・並河靖之
・宮川香山


これら超絶技巧作品を紹介する展覧会「超絶技巧!明治工芸の粋」を三井記念美術館で2014年4月19日(土)〜7月13日(日)の日程で開催します。日曜美術館でも取り上げてね。


「超絶技巧展」@三井記念美術館のチラシを楽屋で食い入るように見る井浦新さん。

山下先生と井浦さんが出演する「特別展 超絶技巧!明治工芸の粋 ―村田コレクション一挙公開―」のトークイベントも2014年5月10日(土) 14:30〜16:00に予定されています。


申込みはこちらから。先着順です!

第7回配本 『7巻 運慶・快慶と中世寺院』

・運慶

参照:山本勉先生講演会「運慶のまなざし−全作品47体と眼の表現」

第8回配本 『5巻 王朝絵巻と貴族のいとなみ』

・源氏物語絵巻
・信貴山縁起絵巻
・伴大納言絵巻
・狩野山雪

今月末に初めての本が出ます。『井浦新の美術探検 東京国立博物館の巻』


井浦新の美術探検 東京国立博物館の巻
井浦 新 (著), 東京国立博物館 (監修)

「日本美術史」教科書的な日本美術の通史的な本を出します。『日本美術史 JAPANESE ART HISTORY』(山下裕二)

あっという間に時間が来てしまいましたが、今後も日本美術を二人で応援して行きましょう!今日はどうもありがとうございました。

『日本美術全集』関係者インタビュー 第三回一坪泰博デスク(前編)
『日本美術全集』関係者インタビュー 第三回一坪泰博デスク(後編)

青い日記帳「出前ブログ」是非、ご一読あれ!


日本美術全集16 激動期の美術』 (日本美術全集(全20巻))


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美術出版社
(2014-03-22)
コメント:山下裕二&井浦新、日本美術応援団入団記念トークショー

| 講演会 | 23:23 | comments(0) | trackbacks(0) |
山本勉先生講演会「運慶のまなざし−全作品47体と眼の表現」
『日本美術全集』刊行記念企画 第5弾 文化講演会「運慶のまなざし−全作品47体と眼の表現」に行って来ました。

講師を務められたのは『日本美術全集』「7巻 運慶・快慶と中世寺院」の責任編集者である山本勉先生(清泉女子大学教授)です。


http://www.shogakukan.co.jp/pr/nichibi/

90分の講演会でしたが、まさにあっと言う間に時間が過ぎてしまい、まだまだお話沢山お聞きしたい!と思わせる超充実した内容でした。

受付で配られた山本勉先生がお作りになられたレジメと自分の心細いメモで「運慶のまなざし−全作品47体と眼の表現」を振り返ってみたいと思います。

講演会のポイントは以下の3点。

1)運慶の生涯と運慶作品47体
2)あらたにくわえた運慶作品
3)運慶作品の眼の表現


この順番に沿って時に笑いを交えつつ、豊富なパワポ画像を駆使なされお話が進みました。以下その概略です。

1)運慶の生涯と運慶作品47体

・運慶の生涯
1150年頃 誕生
1173年(承安3) 長男・湛慶生まれる (20代?)
1176年(安元2) 円成寺大日如来像  (20代?)
1180年(治承4) (平家による南都焼き討ち)
1223年(貞応2) 12月11日 没する (70代?)

仏師系図
定朝→覚助→頼助→康助→康朝→
→成朝(この後、直系が途絶える)
→康慶→運慶→湛慶・康運・康弁・康勝・運賀・運助
   →定覚
   →快慶
   →定慶


頼助以降を「奈良仏師」(興福寺にかかわる造仏・修理を担当する仏師の系譜)と呼び、更に康慶以降を「慶派と呼んでいる。

・運慶作品には4段階の認定レベルがある。

A……作品自体に造像当初の銘記あるいは像内納入品があり、そこに運慶あるいは運慶工房の仏師の名が記されている作品。
B……同時代の確実な資料に運慶作品として記述されているものに明らかに該当する作品。
C……後世の資料に運慶の作であると記されていて作風もそれに矛盾しない作品。(伝運慶作)
D……作風・構造技法や伝来状況に関する現代の美術史研究により運慶作と考えられる作品(「運慶作」とは表記しない)

絵画と違い、彫刻では文献や資料等から厳格な違いを求める傾向が強いため、新たな発見があったりと常にホットな話題が運慶に関して出てくる。

こうした中、今回の『日本美術全集』で、新たに2件、16体の仏像を運慶作として取り上げている。これにより運慶の作品と考えられるものは14件、47体となった。(UNK47)



因みに、興福寺北円堂本尊、木造弥勒如来坐像の中には、厨子入弥勒菩薩立像が像内仏として収められている。現在では観ることができないが、過去に撮影された写真が残っている。

キリッとした眼差しのこの像内仏も運慶の手によるものと考えると合計48体となる。(「UNK48」の成立!?)

2)あらたにくわえた運慶作品

今回の『日本美術全集』に以前より運慶作ではないかと言われてきた2件、16体の仏像を議論はまだ続いているものの運慶作として加えた。

◎「興福寺 南円堂 四天王像」(4体)

興福寺内の四天王像は製作された時に納められていた場所(中金堂、東金堂、北円堂、南円堂etc…)と、現在の場所に相違がある。

今回新たに運慶作とした南円堂四天王像は、それが東金堂あるいは北円堂から移されたものとする仮説があり、議論の的になっている。


日本美術全集7 運慶・快慶と中世寺院より。

今回、現在南円堂にある四天王像は、かつて北円堂にあったものと考え、運慶仏とした。その根拠としてこれまで挙げられたものには以下の4点がある。

・用材がカツラである点。弥勒仏、無著・世親とも共通する。興福寺の杣(そま)にはカツラが多かったのだろう。

・「興福寺曼荼羅図」の北円堂四天王との類似。完全に一致はしないものの大方現在の南円堂の四天王像と一致する。

・四天王の身色と貞慶との関係。興福寺内の多聞密教系の採用は解脱房貞慶(鎌倉時代初期の僧、運慶と同期)が主導。貞慶は「興福寺僧綱等北円堂勧進状」の起草者。

・四天王台座の八角框と弥勒三尊台座八角框、北円堂の八角須弥壇との形の符号。四角の隅を切り落とした特徴的な「八角形」。

◎「浄瑠璃寺旧蔵十二神将立像」(12体)

明治時代まで京都・浄瑠璃寺にあった十二神将立像。現在は東京の静嘉堂文庫美術館に7体(子・丑・寅・卯・午・酉・亥)と東京国立博物館に5体(辰・巳・未・申・戌)が分蔵されている。


日本美術全集7 運慶・快慶と中世寺院より。

参考:
・静嘉堂文庫美術館の「木造十二神将立像 亥神
・東京国立博物館の「十二神将立像 戌神

これらの体内に運慶の銘文があったことが、明治35年の『横浜毎日新聞』の記事として残されている。“其腹内に「上坊別當執筆、大佛師運慶の銘さへあるとを發見したり”と記されている。

単に「大佛師運慶」だけでなく「上坊別當執筆」の文字が記されていたと報告する点が信憑性を高めている。

参考:運慶仏の可能性 浄瑠璃寺旧蔵、鎌倉時代の十二神将立像
http://mainichi.jp/feature/news/20130412ddn013040072000c.html

『浄瑠璃寺流記事』に1212年に薬師如来像に御帳を懸けたとする記事があり、この頃の製作と考えられる。

3)運慶作品の眼の表現

運慶が手掛けた仏像のうち、浄楽寺像以降の運慶作品における眼の表現技法の使い分けが従来注目されてきた。

運慶は初期の頃から玉眼技法を熟知し、効果的に用いていた。仏像のランクによって眼の表現技法を使い分けていたとする考え。

・「如来」、「菩薩」…彫眼(木に直接彫った眼)
・「明王」、「天」、「人」(肖像)…玉眼(水晶を用いた眼)

彫眼を使うことで、仏の持つ気高さを表現し、逆に人や天部には生々しさを表現するために玉眼を用いその違いを明確にした。これは他の仏師にはない運慶特有の配慮。

これは確かにあったと思うが、その原則にあてはまらないものも出てきた(たとえば興福寺北円堂[現南円堂]四天王像など)。

群像表現として仏像を作る場合は、その群像全体を見据え、その中の仏像たちの相互の関係を考慮し彫眼、玉眼を使い分けたと考えるべきではないか。

高野山の八大童子の玉眼を比べてみると…


玉眼を用い、一体一体に「眼の表情」を見事に与えることに成功している。

お堂では暗くてよく見えないが、興福寺の木造無著・世親立像(二体の名称には異説もある)にも玉眼が用いられている。群像の中で、この二体だけに玉眼を用いることで、この二体が弥勒のおわす兜率天に参じて弥勒の法を学んだ無著と、その法を伝えた人間たちであることを示している。



『日本美術全集』刊行記念企画 第5弾 文化講演会
タイトル:運慶のまなざし−全作品47体と眼の表現−
講師:山本 勉氏(清泉女子大学教授)
日時:2014年2月2日(日)13時30分開場、14時開演
開場:丸ビルホール(東京都千代田区)
主催:小学館・一ツ橋綜合財団


今回お話して下さったことをはじめ、運慶・快慶仏についての最も新しい論文を日本美術全集7 運慶・快慶と中世寺院で読むことが出来ます。

写真はもちろんのこと、テキストも充実しているのが『日本美術全集』の大きなウリのひとつです!その概要は『日本美術全集』公式サイトのこちらで読めます。

•はじめに 山本 勉(清泉女子大学教授)
•運慶と快慶 山本 勉(清泉女子大学教授)
•中世前期の仏師と仏像 山本 勉(清泉女子大学教授)
•生身信仰と鎌倉彫刻 奧 健夫(文化庁主任文化財調査官)
•中世仏堂の空間と様式―寺院建築の重層性 上野勝久(東京藝術大学大学院教授)
•コラム/仏像の耳と仏師―快慶・行快師弟がつくった耳 寺島典人(大津市歴史博物館学芸員)
•図解/仏像の姿とかたち



日本美術全集7 運慶・快慶と中世寺院

朝日カルチャーセンターでは山本勉先生の講座も開講されます。
運慶と快慶
小学館日本美術全集「運慶・快慶と中世寺院」出版記念



「運慶の単純化した抽象的造形はピカソの彫刻作品と通ずるものがある。」


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